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【ビジネス解読】中国の資本流出が止まらない…1年間で1兆ドル! ソロス発言で元売りドル買いがさらに加速か?

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中国の資本流出が止まらない…1年間で1兆ドル! ソロス発言で元売りドル買いがさらに加速か?

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 中国から前代未聞のペースで資本が流出している。ブルームバーグの集計によると、2015年の流出額は「過去最悪」の1兆ドル(約121兆円)と14年の7倍余りに達した。人民元に対する弱気心理の広がりから、中国国民の間で人民元売りドル買いの動きが強まっていることが大きい。さらに外資企業が中国投資を控える動きが出ていることも影響しているようだ。中国当局は流出に歯止めをかけようと指導を強化しているが、目立った成果も見えておらず、今年の流出額はさらに増えるとの観測も広がっている。

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 ブルームバーグによると、14年の流出額は1343億ドルだったが、15年は1兆ドルに達し、06年からのデータ推計以降、過去最悪になったという。

 中国人民銀行(中央銀行)は15年8月に突然、人民元の切り下げに踏み切り、同国に対する不信感が強まった。このため、市民が人民元を売ってドルに替えたり、輸出企業がドルを人民元に替えずに保有を続けるといった動きが加速している。

 先月開かれた世界経済フォーラム年次総会では(ダボス会議)では、富豪で世界的投資家のジョージ・ソロス氏が「中国経済のハードランディングは不可避で、世界的なデフレに陥る危険性がある」と述べ、中国などアジア通貨売りを宣言した。

 このソロス氏の発言に猛然と食ってかかったのは、中国共産党機関紙の人民日報や、国営新華社通信だ。「中国経済は絶対にハードランディングしない。人民元売りは失敗する」と反論した。

 人民日報などが強行に反論するのは、ソロス氏が過去に市場を大きく動かした“実績”があるからだ。1992年に英国の通貨ポンドを大量に売り浴びせて巨額の利益を上げ、「イングランド銀行(中央銀行)を打ち負かした男」と呼ばれた。1997年にタイのバーツなど東南アジアの通貨を売って、アジア通貨危機の引き金を引いたことでも知られる。

 今回懸念されるのは、巨大になった中国経済と、その対外債務の大きさから、人民元売りによって簡単に世界金融恐慌が巻き起こる危険があることだ。それを心得ているであろう中国側が反論してくるのは至極当然ともいえる。ただ、中国当局が、資本流出と表裏一体である人民元不安を止めることは容易ではない。

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 外資が中国投資から手を引く動きも鮮明になりつつある。中国商務省の統計によると、15年通年の世界全体から中国への直接投資の実行額は、前年比5.6%増の1262億7000万ドルとプラスを維持したが、日本からの対中投資額は25.2%減の32億1000万ドルと3年連続で減少した。

 ただ、12月の世界全体からの直接投資は8.2%減122億3000万ドル(約1兆4000億円)とマイナスとなり、このうち日本からは34.5%減の1億6000万ドルと激減し、中国を見限る海外企業が相次いでいる格好だ。

 かつては「世界の工場」と呼ばれ、多くの外資企業が生産拠点を中国に移したが、人件費の高騰や景気失速を受け、投資の失速をよんでいる。

 昨年末の投資減について、中国商務省の沈丹陽報道官は1月20日の記者会見で「人民元市場の変動の影響もあった」と述べた。人民元の先安観が強いことが、海外企業の中国投資を抑制する要因になっているのだ。

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 ブルームバーグによると、中国当局は昨年から資金流出に歯止めをかけようと、行政・窓口指導の強化に取り組んでいる。その一環として、海外での銀行口座からの引出額に上限を設定。さらに、親類や友人の割り当て分を利用した複数取引で資金の海外移転を警戒するよう、金融機関に呼びかけている。

 ただ、政府のこうした努力も市民の自国経済に対する悲観的な見方を変えるに至っていないようだ。

 公的な規制では、中国国民1人の現金持ち出しは年5万ドルまでだが、地下銀行など、上限規制をすり抜ける手口はいくつもあり、事実上“ザル”になっているという。

 ブルームバーグによると、JPモルガン・チェースのアナリストらはリポートで、中国の対外直接投資拡大や中国株・債権投資から撤退する外国人投資家などがいることを例に挙げ、「中国からの資金流出は実質的に無限」との見方を示している。