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【張真晟のインサイド北朝鮮】張氏処刑を主導 党組織指導部 強力な権限

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【張真晟のインサイド北朝鮮】張氏処刑を主導 党組織指導部 強力な権限

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 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制の後見役とみなされていた張成沢(チャン・ソンテク)の突然の粛清は世界に衝撃を与えた。一体、北朝鮮の権力層で何が起きているのか。それを分析するには、朝鮮労働党組織指導部についての理解が欠かせない。党組織指導部こそが張成沢の処刑を主導したのだ。

 北朝鮮の対外資料を根拠に北朝鮮を分析する一部の学者たちは、朝鮮人民軍首脳をナンバー2と見誤る。上位の権力者に無縁である一般の脱北者も党組織指導部の実態については知らない。しかし北朝鮮の閉鎖性は、金正日(ジョンイル)時代につくられた首領の代替権力、党組織指導部にこそある。

 党組織指導部とは果たしてどんな組織なのか?

 その権限は5つある。

 1番目は上位の権力層に対する人事権だ。党組織指導部幹部課は中央機関の局長級以上の幹部人事を担当し、軍総政治局長も党組織指導部の検証と同意なしには事実上任命できない構造になっている。

 幹部課は1、2課(中央)▽3課(地方)▽4課(軍)▽5課(護衛司令部)▽6課(国家安全保衛部)▽7課(人民保安省)▽8課(司法府)▽9課(内閣)▽11課(対南工作部署)などに分かれ、核心的権力の全ての人事を取り仕切っている。

 2番目は行政業務にも深々と関与できる生活指導課の権限だ。北朝鮮では全党員、勤労者が生活総和(自己批判)を毎週行うが、それを統括する生活指導課も党組織指導部の傘下にある。生活指導13課(軍担当)の力は絶大で、軍総参謀長も頭を下げて批判を受けなければならないほどだ。

 3番目は「党第一主義」に基づき、誰であっても解任、粛清できる検閲権を持つ点だ。中央と地方、さらに機関で担当を分け、恐怖政治を細分化している。特に検閲4課は高級幹部だけを専門的に管理・監視する“粛清の刃”である。

 4番目は、北朝鮮のすべての権力機関の政策を承認する権限(批准制度)で、これを党組織指導部通知課が遂行している。提議書を批准するという権力の集中は「金正日唯一指導体制」そのものを意味していた。

 最後は金正日、金日成(イルソン)の警護に関連する権限だ。首領の私生活に必要な物資の補充も全て独占している。

 では党組織指導部が張成沢を除去したのはなぜか?

 2007年、金正日は後継体制を準備・支援するため、党組織指導部の政治監察組織、国家安全保衛部(秘密警察)を除く司法権限を持つ行政部を、組織指導部から切り離して張成沢に与えた。

 このことを通じて、張成沢の行政部と組織指導部の対立が深まっていく。

 そして、金正日が脳卒中で倒れるという権力の空白期間があり、その後、党組織指導部第1副部長の李済剛(リ・ジェガン)が10年、平壌-元山(ウォンサン)高速道路で謎の交通事故死を遂げた。次いで国家安全保衛部副部長の柳敬(リュ・ギョン)が11年1月、スパイ疑惑で処刑された。12年には同部第1副部長の禹東則(ウ・ドンチュク)も自殺に追い込まれた。いずれの事件にも張成沢の関与が疑われた。

 金正恩政権で張成沢が権力を強化していくにつれ、切迫した状況に置かれた党組織指導部は、総参謀長の李英浩(ヨンホ)を失った軍部と“野合”していった。

 権力の均衡が崩れた瞬間、張成沢が宿敵関係にあった党組織指導部幹部たちに粛清されるのは、火を見るより明らかだったのだ。

 今後、北朝鮮政権は一層好戦的にならざるをえない。張成沢の主な罪の一つが改革開放にあったためだ。誰であっても核武装より経済発展に少しでも偏れば、張成沢一味とみなされるほかなくなった。

 現在の党組織指導部の権力序列は総括第1副部長の金慶玉(ギョンオク)、検閲担当の第1副部長、趙延俊(チェ・ヨンジュン)、軍担当の第1副部長、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)の順だ。

 今日の金正恩は、党組織指導部と軍の強硬派に取り囲まれた「首領演技者」でしかない。(敬称略)

【プロフィル】張真晟 チャン・ジンソン 北朝鮮・黄海北道生まれ。金日成総合大学卒。朝鮮労働党統一戦線部(対南工作部門)勤務。心理戦を担当する詩人、作家として活動した。2004年に脱北、韓国情報機関傘下の国家安保戦略研究所研究員を経て11年、北朝鮮情報サイト「NEW FOCUS」設立。編集人兼代表。著書に『金王朝「御用詩人」の告白』がある。

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