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2020年は「最も暑い年」だった:観測結果から見えた深刻な地球温暖化の現実

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 2020年は観測史上で「最も暑い年」だった--。米航空宇宙局(NASA)などが、深刻な地球温暖化の現状を浮き彫りにする観測結果を公表した。平均気温の上昇のみならず、海水温の上昇による海洋生態系への悪影響も懸念されている。

TEXT BY ERIC NIILER

TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

WIRED(US)

気温と海水温の推移を調査した科学者たちは、温暖化は化石燃料を燃やすことで引き起こされていると指摘する。MARIO TAMA/GETTY IMAGES
気温と海水温の推移を調査した科学者たちは、温暖化は化石燃料を燃やすことで引き起こされていると指摘する。MARIO TAMA/GETTY IMAGES

昨年の地球は燃えるように暑かった。米西海岸では山火事が頻発し、シベリアは記録的な熱波に襲われ、大西洋で観測されたハリケーンの数は平年を大きく上回っている。こうしたなか科学者たちが、この世界的な気象の混乱の背景にある数字を割り出した。

米航空宇宙局(NASA)の年次報告書によると、2020年は観測史上で最も平均気温が高かった16年と同じか、それを超えた可能性がある。米海洋大気庁(NOAA)の結論はわずかに異なるが、それでも昨年の気温は史上2位か3位になるという。

NASAとNOAAは、いずれも1月にオンラインで実施された米気象学会の年次会合で昨年の観測結果をまとめたレポートを公表している。ただし、分析や計算の方法などはわずかに異なっている。

いずれにしても最新のデータによると、地球の平均気温は産業革命以前と比べて1.2℃上昇した。また、現状では10年で0.2℃ずつ気温が上昇し続けており、このペースでは15年のパリ協定で決まった「気温上昇を1.5℃未満に抑える」という目標を達成できない。

気候変動を専門とするNASAのゴダード宇宙科学研究所のギャビン・シュミットは、「大規模な火山噴火でも起こらない限り、状況が変わることはないと思います」と言う(噴火で巻き上げられた火山灰や塵は太陽光を遮断し、一時的に大気を冷やす効果がある)。

海水温も記録的な高さに

一方、米国と中国、イタリアの気候科学者たちの研究によると、昨年は海水温も記録的な高さに到達している。学術誌『Advances in Atmospheric Sciences』に発表された論文によると、海洋が吸収したエネルギー量は19年と比べて21ゼタジュール(ゼタジュールは10の21乗ジュール)増えていた。地球の海に含まれる熱量は、1955年の観測開始以来で最高となっている。

研究チームは世界の海で、気象観測ブイや中層フロート、船舶の観測機器からデータを集めた。論文の著者のひとりで、コロラド州ボルダーにある米大気研究センターでディレクターを務めるケビン・トレンバースによると、昨年に海洋に吸収された余剰熱は、電力換算すると世界の総発電量の61倍に相当するという。

海水温が上昇すると、太平洋で発生するスーパー台風や全米の豪雨の原因となる。また、有害な藻類が大量発生したり、親とはぐれたアシカの子どもが浜に打ち上げられるといったことが増えるなど、海洋生態系にも異常が生じる。

大気と海洋の研究に取り組む科学者たちの指摘によると、こうした状況は温室効果ガスの排出によって引き起こされており、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やすことが温暖化を加速させているという。ゴダード宇宙科学研究所のシュミットは、「温暖化の主要な原因は温室効果ガスの増加です」と語る。「そして、いま起きていることのほぼすべては、人類の活動に起因しています」

問題となる長期的な傾向

NASAとNOAAはレポートで、2015年から昨年までの6年間は、いずれも地球史上で最も気温の高かった6年間と一致すると指摘している。また、トップ10に入っている年は、いずれも05年以降だという。

シュミットは「特定の年が過去最高に暑かったかというのは、実はそれほど重要ではありません」と語る。「長期的な傾向が問題なのです。そして人類が気候に及ぼす影響が拡大するにつれ、今後もさまざまな記録が更新されていくことを覚悟しなければなりません」

米国では昨年1年間で22件の嵐が起き、被害総額は10億ドル(約1,050億円)に達した。悪天候の件数は11年と17年の16件を上回り、過去最高になっている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10年、50年までの平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5℃未満に抑えるよう提言した。ところが、15年にはこの目標を変更し、「世界の平均気温が産業革命前から2℃以上は上昇しないようにするとともに、上昇幅を1.5℃未満にする努力を続ける」としている。

ただし、専門家の多くは、いずれの目標も達成は不可能だと考えている。論文では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響で昨年の温室効果ガスの排出量はわずかに落ち込んだが、地球規模で進行する気候変動を遅らせるには十分ではなかったことが指摘されている。

いまこの瞬間に排出量がゼロになっても、現在進行中の温暖化を止めて元通りにするには数十年はかかるのだと、シュミットは説明する。また、温室効果ガスによる余剰熱の9割は海洋が吸収してくれるが、それがずっと可能であるとは限らない。

米大気研究センターのトレンバースは、「海の表面付近では海中より早く水温が上昇しています」と指摘する。「つまり、熱が簡単には吸収されなくなっているのです。海水は嵐や風によってかき混ぜられますが、このプロセスが緩慢になっていくかもしれません」

海面の温かい海水と海面下の冷たい海水とをかき混ぜることは、海全体の水温を下げるだけでなく、大気中の炭素を吸収し深海に閉じ込めておくためにも重要だ。水温が上昇すれば蒸発する海水の量が増え、嵐や豪雨、洪水の多発といったことにつながる。

厳しい見通し

このように、気候変動を巡る見通しは厳しい。だが、学術誌『Nature Climate Change』に掲載された英国の研究者たちによる論文によると、向こう20年間で排出量を大幅に削減することが、21世紀後半の気候の安定化に寄与する可能性があるという。

トレンバースは、海水温の上昇は温暖化が進行していることを示す最も顕著な指標だと説明する。そして実際に、気候変動によってさまざまな現象が起きている。「警戒すべき兆候で、今後に向けさらなる備えが必要になります。世界全体で排出量を削減していく活動を進めていくことが求められるのです」

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