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乳がんの早期発見に、AIが活用される時代がやってきた

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 マンモグラフィー画像を人工知能(AI)で分析することで、乳がんの可能性がある人をスクリーニングする手法を米国の研究チームが発表した。医師とAIの専門家との共同研究の成果であり、乳がんのさらなる早期発見につながる可能性が期待されている。

TEXT BY WILL KNIGHT

WIRED(US)

PHOTOGRAPH BY MIT
PHOTOGRAPH BY MIT

新型コロナウイルスがマサチューセッツ州に到達したころ、コンスタンス・レーマンはマサチューセッツ総合病院の乳がんスクリーニング手法の変更を余儀なくされていた。ウイルスを恐れ、多くの人々が定期検診やスキャンのための来院を控えたからである。そこでレーマンが共同所長を務めるセンターでは、AIのアルゴリズムを活用することで、がんの発症リスクが最も高いのは誰なのか予測し始めた。

感染拡大が始まって以来、約20,000人の女性が定期検診をすっぽかしたのだと、レーマンは言う。通常、がんの兆候が発見される割合は、検診を受けた女性1,000人につき5人だ。「つまり、がんの可能性があるという診断を100人が受けていないことになります」と、彼女は言う。

レーマンによると、AIによる特定を経て説得を受けて定期検診に来た多くの女性から、がんの初期兆候が見つかった。アルゴリズムによってフラグを立てられた女性ががんを発症する確率は、そうでない女性の3倍だった。これに対して従来の統計的手法では、ランダムを上回る予測はできなかったという。

アルゴリズムは過去のマンモグラフィー画像を分析するもので、以前のスキャンでは医師が危険な兆候を見出せなかった場合でも機能するようだ。「AIがこなしているのは、わたしの眼や脳には不可能な情報抽出なのです」と、レーマンは言う。

敵対的学習の手法を応用

研究者たちは以前から、医用画像処理におけるAIを活用した分析の有効性を主張しており、一部のツールはすでに医療現場で利用されている。レーマンはマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちと共同で数年前から、AIをがんのスクリーニングに応用する方法について研究を進めてきた。

だが、リスクを正確に予測する手法としてのAIは、それ以上に有望かもしれない。乳がん検診では、ときにマンモグラフィによって前がん病変を調べるだけでなく、患者の情報を収集し、両方を統計モデルに当てはめることで、フォローアップ検診の必要性を判断することがある。

MITの博士課程大学院生であるアダム・ヤラは、新型コロナウイルス流行以前から、レーマンが使用するアルゴリズム「Mirai(ミライ)」の開発にあたっていた。彼によると、AIを使う目的は早期発見を促進し、偽陽性のストレスとコストを減らすことにある。

Miraiの開発にあたり、ヤラは放射線科にAIを導入するほかのプロジェクトを悩ませてきた問題を克服しなければならなかった。そのために、彼は敵対的学習の手法を用いている。

これは、ひとつのアルゴリズムが別のアルゴリズムを欺くように設計する方法で、放射線機器の違いによって同じ乳がんのリスクを抱える患者に異なるスコアが算出される可能性を補正した。また、数年分のデータを集約するようにモデルをデザインした結果、従来のデータが少ない手法よりも精度が高くなったという。

MITのアルゴリズムは、標準的な4面のマンモグラフィー画像を分析し、そこから手術歴や閉経などのホルモン因子といった、未収集のことが多い患者情報を推定する。これは、医師がまだこうしたデータを収集していない場合に役に立つ。研究の詳細は学術誌『Science Translational Medicine』に2021年1月27日付で掲載された論文で概説されている。

AI専門家と医師との協働の重要性

こうしてMiraiは、女性の乳がんリスクを判断するために通常使用される統計モデルよりも正確であることがわかった。過去の患者データを用いて比較したところ、5年以内にがんを発症した人の42%がアルゴリズムによって高リスクと判定された一方で、既存の最良の統計モデルでは23%だったのである。

アルゴリズムは台湾とスウェーデンの患者のデータでも有効に機能し、幅広い患者に適用可能であることが示された。ヤラは、大規模かつ十分に多様なデータセットを用いた今回の研究で有望な結果が得られたことから、アルゴリズムには汎用性がありそうだが、異なる条件でアルゴリズムの有効性をさらに検証することが重要であると語っている。

今回の研究はAIのエキスパートと医師との協働の重要性を示していると、エモリー大学医学部の放射線科助教のジュディ・ワウィラ・ギチョヤは言う。彼女はMITのアルゴリズムの追加試験を予定しており、実際に現場で使用する前に自身の患者データで慎重に検証する計画を立てている。

ペンシルベニア大学の教授で放射線医学を研究するチャールズ・カーンは、新型コロナウイルスは定期的な医療ケアに多大な影響を与えていると指摘する。彼は学術誌『Radiology』のエディターも務める人物でもある。「パンデミックの間に人々が行かなくなったのは、ヘアサロンだけではありません。それが健康に深刻な影響を与えているのです」

十分に医療を受けられなかった人々のために

カーンによると、マサチューセッツ総合病院で検証されているAIを用いた手法には、個々の患者に発症リスクをより明確に示すといった治療のパーソナライズ、さらにはスクリーニング計画のカスタマイズに役立つ可能性がある。一方で、アルゴリズムの活用が偏った治療につながる可能性もあると、彼は懸念する。「想像もしなかったかたちで影響が及ぶかもしれません」

新型コロナウイルスは、さまざまなかたちで医療のあり方を変えた。例えば遠隔医療の導入が加速したことで、一部のコミュニティはほかよりも多くの恩恵にあずかっている。

レーマンは、自身が検証しているAIによるスクリーニングを、これまで十分に医療を受けられなかった人々に恩恵をもたらすものにしたいと考えている。「まるで生まれてこのかたずっとパンデミックが続いているかのように、ヘルスケアシステムからこぼれ落ちてきた人々が大勢います。こうした人々は質の高い医療を受けられず、スクリーニングもされていないのです」と、彼女は語る。

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