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海底に潜むその奇怪な巨大生物は、2,000万年も前から魚を襲っていた:研究結果

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 海底に潜んで驚異的なスピードで巣穴から飛び出し、トラバサミのような口で獲物に噛みついて食べてしまう奇怪な生物・オニイソメ。その祖先が2,000万年も前から魚を襲っていたらしき証拠を、このほど研究者たちが発見した。

TEXT BY MATT SIMON

WIRED(US)

KANYHUN/IMAZINS/GETTY IMAGES
KANYHUN/IMAZINS/GETTY IMAGES

個人的には奇怪な生物に関してそこそこ詳しいが、それでも躊躇なく断言しよう。オニイソメはダントツに奇怪な生物だ。

全長3mにも成長する巨大な蠕虫(ぜんちゅう)で、海底に巣穴を掘り、水中にトラバサミのような口だけを突き出す。そして魚が近づくと、驚異的なスピードで巣穴から飛び出して獲物に噛みつき、荒っぽく巣穴に引きずり込んで生きたまま食べてしまうのだ。

そんなオニイソメの祖先が2,000万年も前から魚を襲っていたらしき証拠を、このほど研究者たちが発見した。学術誌『Scientific Reports』に1月21日付で掲載された論文によると、台湾で見つかった何百もの蠕虫の巣穴の化石には、格闘の証拠が残されていたという。

ちなみに研究チームは、蠕虫そのものの化石を発見したわけではない。蠕虫のような骨のない生物(脊椎がないことから無脊椎動物と呼ばれている)が化石化することは極めてまれだ。代わりに研究チームは、かつて海底だった砂岩の中に、地層に残された古代動物の活動の痕跡である「生痕化石」を発見したのである。

「蠕虫のような無脊椎動物が脊椎動物を捕食していたことを示す生痕化石が発見されたのは、今回が初めてだと思います」と、論文の共著者で国立台湾大学の堆積学者であるルドビグ・レーベマークは説明する。「堆積層から通常発見できるものは、動物が堆積物の中を移動した証拠なのです」

例えば、無脊椎動物は海底にトンネルを掘り、水を巣穴に送り込み、粒子をろ過する。「今回わたしたちが発見したのは、はるかに能動的な活動の痕跡なのです」と、レーベマークは語る。「蠕虫は堆積物の中に隠れていて、飛び出して獲物を捕まえ、それから獲物を堆積物の中に引きずり込んでいたのです」

オニイソメの巣穴と確信できた理由

化石化した巣穴の長さは約6.5フィート(約2m)。海底にあった開口部から比較的まっすぐ下へと伸び、途中で約45度に傾斜し、全体ではL字型またはブーメラン形をしている。レーベマークの研究チームは、トンネルの上端付近が「ろうと状に崩壊」し、巣穴の内部に堆積層ができていることに気づいた。

研究チームは、これは獲物がもがいた証拠だと主張している。数千万年前に蠕虫が暴れる魚を巣穴に引きずり込んだとき、堆積物が飛散し、やがて隙間を埋めて化石として記録に残されたというわけだ。

巣穴の断面はどことなく羽根に似た形をしている。羽軸をなすのはメインの巣穴で、その両側の堆積層にはろうと状の部分から分岐した痕跡が羽弁のような形で残されている。これはオニイソメの捕食行動に特有の痕跡だと、研究チームは主張する。「オニイソメは獲物を消化すると、再び表面に現れます。ろうと状に崩れた巣穴の中央部に再びトンネルを構築し、これにより管の周囲に羽根のような構造が形成されるのです」と、レーベマークは説明する。

ただし、海底に巣穴を掘る生物はオニイソメとその祖先だけではない。一部のエビや二枚貝(アサリなど殻をもつ軟体動物)も同じことをする。研究チームは、なぜ発掘された化石がオニイソメ類の巣穴だと確信できたのだろうか?

エビは小さいが、長いトンネルを掘ることはできる。しかし、砂粒同士は普通くっつかないので、巣穴を掘るときには壁が崩壊しないよう泥で補強する必要がある。また、エビのトンネルはたいてい迷路状で、エビが方向転換するための空間、いわば環状交差点がある。二枚貝の場合、ふたつの殻が結合したボディプラン(体制)をもつため、通常は巣穴が楕円形をしている。

一方、発掘された2,000万年前の巣穴の断面は、ほぼ真円だ。したがって現代のオニイソメと同様に、この巣穴の居住者はおそらく環形だったと研究チームは推測した。

また、発見された巣穴は補強されていなかったこともわかった。したがって巣穴の居住者は、崩壊を防ぐために体で構造を支えていたと考えられる。巣穴の長さが2mを超えることを考えると、居住者は何らかの巨大蠕虫だった可能性がある。もっと正確に言うなら、はるか昔の不運な魚を襲った巨大蠕虫だった可能性がある。

「ずっと下までとてもきれいな環状をしているのに、しっかりとした補強はされていません。この事実から、居住動物はほとんどの時間を巣穴の中で待ち伏せし、ときどき飛び出したと考えられます」と、レーベマークは言う。「開口部のろうと状の崩壊と羽根状の堆積は、獲物が海底の堆積物に引き込まれる途中でもがいたことを示しています」

謎に包まれた形態

発見された生痕化石は、古代の上位捕食者と被食者の間の闘争を示す証拠だと、研究チームは主張している。これにより、オニイソメとその祖先がどれだけ長らく魚を捕食してきたかに関して、研究者たちは体化石からだけでは決してわからない手がかりを得た。

たとえオニイソメ類の軟組織がすぐに腐敗せず化石化したとしても、その体化石から得られるのはおそらく形態に関する情報だけで、行動については何もわからないだろう。「太古の被食者と捕食者の間の相互作用に関する知見が得られれば、古生態系への理解が深まります」と、レーベマークは言う。

しかし、形態がわからないことはやはり問題だと指摘するのは、カリフォルニア科学アカデミーで無脊椎動物学のシニアキュレーターを務めるテレンス・ゴスライナーである。ゴスライナーは今回の研究にはかかわっていない。

オニイソメは多毛類として知られる環形動物門多毛綱に属している。このグループには草食のものもいれば、今回の発見で推測されているような大型捕食者もいる。したがって、巣穴にできた羽根状の堆積は、居住者が魚を捕獲していた印ではなく、単に頭を突き出してほかのものを食べていた印かもしれない。

「わたしの意見を言うなら、蠕虫が巣穴に引っ込むたびに、彼らが発見したのと同じような羽根状の堆積層と崩壊構造が残ると思います」と、ゴスライナーは指摘する。「彼らの主張はまったくその通りかもしれませんが、それ以外の説明はいくらでも考えられます」

考察しがいのある発見

実際のところ現代のオニイソメでさえ、いまだに謎だらけの生物だ。

「オニイソメの巣穴がどんなものか、巣穴がL字型であるかどうか実際に調べた人はこれまでひとりもいません」と、ゴスライナーは言う。「ですから、本当に興味深い古生物学的発見だと思います。でもわたしにとっては、この発見は答えと同じくらい多くの疑問を生み出すものなのです」

ただし、レーベマークは、巣穴の開口部から羽根状の構造が下へ向かってかなり長く続いていることから、平和な草食よりは激しい闘争を示唆するものだと指摘する。

さらに、当時の環境も手がかりになる。「ほかの蠕虫が同様の巣穴をつくる可能性はあります。しかし、わたしたちが論文で発表した巣穴が見つかった場所は浅海の古環境で、こうした場所では植物質は小さな断片として流入するので、草食性蠕虫という説は否定されると思います」と、レーベマークは言う。

ともあれ、考察しがいのある発見であるのことは間違いないだろう。

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