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英国海軍が訓練にVRを導入したら、まるでSFのような世界が出現した

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 生死にかかわる状況での訓練を仮想現実(VR)で実施する取り組みが、英国海軍で進められている。まるでSFを思わせる動くドームを教官がコントロールするVRの世界は、いかなるものなのか--。その現場へと潜入した。

TEXT BY ALEX CHRISTIAN

TRANSLATION BY KAREN YOSHIHARA/TRANNET

WIRED(UK)

午前2時、凍えるほど冷え込んだ北海の上空で、英国海軍の対潜哨戒ヘリコプター「マーリンMk2」の乗組員は絶望的な窮地に立たされていた。荒れる海の上で機体の燃料は次第に減りつつある。

選択肢はふたつあった。荒れ狂う海で激しく揺れる船の甲板にヘリコプターを着艦させるか。あるいは、身を切るような冷たさの海深くに突っ込むかである。視界は極めて悪く、時間は刻々と過ぎていく。乗組員はパイロットに命を託し、無事に帰還できることを祈るほかなかった--。

幸いなことに、これはシミュレーションである。英国海軍のカルドローズ航空基地とヨーヴィルトン航空基地では、こうしたシナリオを繰り返し用いて乗組員を訓練している。しかも、訓練の場は船の甲板や海上ではない。まるでSFを思わせる動くドーム内に入り、教官がコントロールする仮想現実(VR)の世界でその技能を磨いているのだ。

そこではエンジンの故障から悪天候まで、さまざまな生死にかかわる状況がリアルに再現される。「わたしたちは限界ぎりぎりの状況でも操作できるようにしておかなければなりません」と、海軍少佐クリストファー・ルークは説明する。「視界がまったくきかない真夜中に、荒れた海で機体を操縦できるよう訓練を受けているのです」

VRを海軍の訓練に活用

対潜哨戒ヘリ「マーリンMk2」と攻撃ヘリ「ワイルドキャット」は、あらゆる海上作戦の耳目としての役割を担う。フリゲート艦から飛び立って高速で飛行し、海洋にいる敵を偵察して艦に報告するのだ。

両機には赤外線カメラとソノブイが搭載されている。ソノブイとは海中に投下して使うソナー装置で、水中レーダーとしての機能を果たす。また、ワイルドキャットはレーザー誘導式ミサイル「マートレット」を、マーリンは対潜魚雷「スティングレイ」をそれぞれ搭載しており、必要とあらば作戦の牙としての役割も果たせるようになっている。

カルドローズ基地ではVRを活用することで、巻上げ機の操作を担当するホイストマンを訓練している。しかも、ほかの方法では実現しえないシナリオによってだ。そのVRコンテンツを開発しているポール・マクブライドは、これはまだ始まりにすぎないと考えているという。

「ゆくゆくは空母全体を再現し、ゲームエンジンで甲板全体をモデリングできるようになるでしょうね。訓練生たちはVRヘッドセットを装着して格納庫内を歩き回り、CGの教官から指導を受けられるようになるかもしれません」

PHOTOGRAPH BY BENEDICT REDGROVE
PHOTOGRAPH BY BENEDICT REDGROVE

上の写真は、カルドローズ基地にあるマーリンMk2のシミュレーターで、航空母艦「クイーン・エリザベス」に着艦する様子だ。実際の任務は、カリブ海での麻薬対策作戦からシエラレオネ共和国におけるエボラ危機発生時の人道支援まで、多岐にわたる。しかし、最も需要が高いのは北大西洋だ。

「ロシアの潜水艦の活動を探っています」と、海軍少佐クリストファー・ルークは説明する。「現在、活動は冷戦時代並みに活発になっているのです」

ヨーヴィルトン基地にあるワイルドキャットのシミュレーター。ドーム部分は全方向に動くので、まるで現実であるかのような効果をパイロットの訓練生たちにもたらす。

VR開発者のマクブライドは、現在のVRなら「ブラックデッキ」と呼ばれるシナリオも再現できると考えている。これはヘリコプターが着艦できず、ホバリングしながら空中給油せざるをえない状況だ。マクブライドはまた、実際の訓練用に軍事環境を再現するために、ゲームの3Dモデラーが活用できると見込んでいる。

カルドローズ基地の乗組員指導教官用の制御卓。マーリンの訓練生のために、昼夜を問わずあらゆる条件や機能を設定することができる。将来的な海軍の訓練では60人の訓練生がVRヘッドセットを装着し、空母と同規模の格納庫でアバターとして登場する教官にリアルタイムで教わるようになるだろうと、マクブライドは考えている。

マーリンMk2の乗組員が、海上を高速で移動するボートの上空でホイスト操作の練習をしている様子。ホイスト操作は捜索救助任務や医療搬送、潜水艦への乗艦の際に用いられる。

また、機体の前面下部に見えるレーダーシステムは、推定でおよそ100海里内に移動しているあらゆる船舶を検知可能だ。また、マーリンは海中に吊り下げて使用できる中周波のアクティブ・ディッピング・ソナー(ADS)を用いることで、対潜水艦戦プラットフォームの先端的な役割も果たす。

ワイルドキャットとマーリンは、いずれも電子光学赤外線カメラ「ウェスカム MX-15」を搭載している。ワイルドキャットの主要タレットに内蔵されたこのカメラには、射程距離測定用と照準用のふたつのレーザーが内蔵されている。

このデバイスは、真夜中に海で行方不明者を探すための捜索救助任務にも使用可能だ。乗組員はひとつの画面上で、赤外線画像と光学カメラの映像を切り替えることができる。

ワイルドキャットの機体尾部。エンジンの排気は上部に排出されることで、回転翼によって分散されるように設計されている。これは熱の上昇を抑える際に役立ち、結果として他国の軍隊のレーダー兵器システムに検知されにくくする。ワイルドキャットにはパッシヴレーダーシステムが搭載されていることから、乗組員はほかの機体からの周波数や通信を識別することもできる。

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