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夢と消えたUberの自律走行車と、技術を引き継ぐオーロラの野望

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 Uberが自動運転技術部門の売却を発表した。売却先は自動運転技術の開発を手がけるオーロラ・イノベイションで、自律走行車のソフトウェア開発を強化する狙いがある。目指すは「Aurora Driver」で動く自律走行車がUberのネットワークで走るという未来だ。

TEXT BY AARIAN MARSHALL

WIRED(US)

ERIC BARADAT/AFP/AFLO
ERIC BARADAT/AFP/AFLO

Uberの最高経営責任者(CEO)だったトラビス・カラニックは2015年、ある人材を大胆にも引き抜いた。カーネギーメロン大学のナショナル・ロボティクス・エンジニアリング・センターから、40人のロボット工学研究者を連れてきたのだ。

この引き抜きは、世界トップクラスの工学研究で知られるカーネギーメロン大学に強いショックを与えたとされている。このとき世界で最も“熱い”スタートアップにとって、自律走行車の実現は目前であるかのように見えた。

だが、その自動運転部門は、もはや存在しない。“ロボットタクシー”が支配する未来が到来するには、少なくとも2020年代後半まで待たなければならないと予測されている。Uberは12月7日(米国時間)、かつての引き抜きによって生まれたピッツバーグ拠点で自動運転技術部門である「Advanced Technologies Group(ATG)」を売却すると発表したのだ。

この1,200人からなる部門は、自動運転技術の開発を手がけるオーロラ・イノベイションが買収する。Uberはこの取引の一環としてオーロラに4億ドルを出資し、これによってオーロラの評価額は100億ドルに、従業員は3倍に増加する。Uberの現CEOであるダラ・コスロシャヒは、オーロラの取締役にも就任する予定だ。

統合に向かう自動運転技術

安全で確かな自律走行車をつくり上げるプロセスが、当初考えられていたより多くのコストと時間がかかることが判明するなか、自動運転技術の業界は統合に向かっている。今回の動きもそうした流れの一部だ。財務報告書によると、UberのATGは今年1月から9月にかけて3億300万ドル(約315億5,000万円)の損失を出しており、この5年間で10億ドル(約1,041億円)以上を費やしてきた。

オーロラは自社で自律走行車やトラックを生産しようとしているわけではなく、自律走行車を走らせるための複雑なソフトウェアを開発している。ヒュンダイ(現代自動車)や中国の電気自動車(EV)ブランドである「バイトン(BYTON)」、フィアット・クライスラー・オートモービルズといった自動車メーカーが主な提携先だ。

さらにオーロラはUberとの取り引きを通して、もうひとつの大きなパートナーであるトヨタ自動車を獲得する可能性が高い。トヨタは昨年、Uberの自動運転部門に5億ドル(約520億円)を投資している。

ちなみにオーロラは、サンフランシスコのベイエリアやピッツバーグ、ダラスで自社の技術をテストしている。同社はまた、2019年にLiDAR開発企業であるブラックモア(Blackmore)を買収しており、同社が拠点としていたモンタナ州ボーズマンにもオフィスを構えている。

ついえた「輸送のアマゾン」の夢

近年のUberの戦略にはもうひとつの流れがあり、今回のATGの売却はその一環となっている。それは活動の範囲を狭めて事業の一部を売却することで、利潤を追求するというものだ。

かつて「輸送のアマゾン」になることを目指していた配車サービス大手のUberは、今夏にマイクロモビリティ部門であるジャンプ(Jump)をライム(Lime)に売却し、秋には貨物輸送事業であるUber Freightの一部を手放している。Uberはまた、自律走行の空飛ぶタクシー事業であるElevateの売却交渉に入ったとも伝えられている。Uberは「業界内のパートナーシップを通して、Uberネットワークにおける自動運転輸送の商業化に引き続き取り組んでいきます」と、同社の広報担当者は言う。

Uberによる自動運転の実現に向けた取り組みは、これまでトラブルに見舞われてきた。自動運転技術の開発を手がける競合企業のOttoを買収後に、グーグルの親会社であるアルファベット傘下のウェイモ(Waymo)から企業秘密を盗んだとして訴えられた。

注目された公判はサンフランシスコで数日間にわたって開かれ、Uberはウェイモの技術を一切使用しないことで和解している。これはUberのハードウェア開発にとっては深刻な後退だった。この企業秘密を巡る裁判の中心人物で、Uberの自動運転部門を率いたアンソニー・レバンドウスキーはその後、この事件の共謀者として連邦検事によって訴追され、罪を認めて現在18カ月の刑期を務めている。

さらに2018年には、Uberの自律走行車がアリゾナ州テンピで女性をはねて死亡させた(運転席に乗っていたセーフティドライバーはその後、過失で起訴された)。自動運転業界で初めて起きたこの死亡事故によって、Uberはテスト走行を何カ月も停止し、安全システムとプログラムを再検討することになった(同社には当時、運用可能な安全部門がなかった)。

国家運輸安全委員会の調査により、女性の死の責任の少なくとも一端はUberの組織的欠陥にあるとされている。Uberは現在、以前より制限されたかたちでピッツバーグとワシントンD.C.でテスト走行を実施している。

買収の狙いは「安全システム」

こうした事情を考えれば、買収の決め手となったのはUberの安全システムであるとオーロラが説明した点は興味深い。オーロラのクリス・アームソンCEOもブログのなかで、ソフトウェアテストにおけるUberの進展や、同社の配車サービス向けソフトウェアの構築の経験を称賛している。

オーロラは、最初に商業化の実現を目指すのは配車サービスではなく、トラック輸送の分野となる見込みだと今年の夏に説明している。12月7日には、「Aurora Driver」によって駆動する自律走行車がいずれUberのネットワークで走ることになるだろうとしている。

2017年に創業したオーロラは、すでに従来よりUberのロボット工学チームと深いかかわりがある。最高技術責任者(CTO)のドリュー・バグネルはATGの創設メンバーであり、15年にUberに引き抜かれたカーネギーメロン大学の教授のひとりだ。

CEOのアームソンは、ウェイモがグーグルの一部門だった時期にその部門を率いた業界のベテランである。またオーロラのもうひとりの共同創業者であるスターリング・アンダーソンは、テスラのオートパイロットの立ち上げに関わっている。

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