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ワクチンの配送も高精度なセンサーで追跡、フェデックスが目指す次世代の物流

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 米国の物流大手が、より高精度な荷物の追跡サービスの導入に向けて動き出した。フェデックスやUPSが導入を始めた通信モジュールを用いた新しい荷物追跡技術は、新型コロナウイルスのワクチンをはじめとする医療物資の配送を視野にいれたものだ。

TEXT BY AARIAN MARSHALL

WIRED(US)

ROBERT ALEXANDER/GETTY IMAGES
ROBERT ALEXANDER/GETTY IMAGES

宅配便の荷物の配達状況を、オンラインでしつこいくらいに何度も確認する人は少なくないだろう。荷物に添付されているバーコードは一般的に、配送が終わるまで10~20回はスキャンされる。そして宅配事業者は配送に関する詳細な情報を、ときおりウェブサイトにアップロードする。そうした情報を求める人が多いからだ。

さらにデータの公開にコストがかからないことも一因であると、元フェデックス幹部のサティシュ・ジンデルは言う。ジンデルは現在、荷物の配送データを分析するShipMatrixという企業に勤務している。「顧客は自分の荷物について、出荷から配達までの情報を知りたいと考えているのです」と、ジンデルは説明する。

なかでも医療などの一部の業界では、厳密な追跡が重要になってくる。そこでこうしたニーズに対応するため、世界最大の物流企業は新たなサービスを生み出そうとしている。

動き出した物流大手

例えば物流大手のUPSは5月、 医薬品などの機密性の高い荷物が同社のネットワーク内で配送される際に、Bluetoothやデータ通信、Wi-Fiを組み合わせてデータを追跡・収集するサービスの提供を開始している。

さらにフェデックス(FedEx)も9月上旬、独自のサービスを開始した。同社の場合、粒状のラムネ菓子のケースに中身を数粒入れたほどの重さとサイズ感の小さなBluetoothセンサーを使用している。このセンサーは現時点では、機密性の高い荷物を迅速に送りたい顧客が荷物を追跡するために使う。フェデックスは今秋、航空宇宙や小売、医療業界の上位取引先5社向けに数十万個のセンサーを配備するという。

特に医療分野においては、適切な製品を適切な場所に適切な時に届けられるかどうかが生死を分けることもある。病院に届くのが遅れたり、配達中に高温に晒されたりすることで、高価な医薬品が役に立たなくなる恐れがあるからだ。

医薬品や医療機器の定期的な利用が必要な高齢者の人口が増えるにつれ、医療に適した物流への需要は高まっている。ShipMatrixのジンデルは、企業も高額な医薬品や医療機器を配送中に紛失するリスクを減らす目的で、こうした物資を追跡するための投資を増やすはずだと指摘する。

ワクチンの輸送に向けた挑戦

いま、世界的に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大流行しており、できるだけ早いワクチンの完成が求められている。こうした状況も、繊細な扱いが必要な荷物を適切な場所に配達することの重要性を浮き彫りにしている。

実際にドイツの物流大手のドイツポストは今月初め、ワクチンの輸送においてメーカーから医療従事者まで届ける際に深刻な課題を伴う可能性があることを警告している。アフリカや南米、アジアなどでは特に大きな課題になる。さらに問題が複雑になりかねないのは、ワクチンはグローバルな配送が求められるなか、約マイナス80°Cという超低温での保存が必要になるかもしれないということだ。

これは物流を厳格化するいい機会でもある。「特にパンデミック下のように現在のわたしたちが生きている世界では、荷物が適切に取り扱われ、適切な時間に適切な場所に届けられることへのニーズや関心が大きく高まっています」と、フェデックスの最高情報責任者(CIO)のロブ・カーターは言う。

フェデックスが導入したセンサーは、これまでのものを改良して軽量化したものである。従来のセンサーは重さが約1ポンド(約0.45kg)で、DVDのケースを3つか4つ重ねたぐらいの薄さだった。

従来のセンサーはデータ通信を介して位置を追跡していたが、新バージョンではフェデックスの米国内の施設や車両に配備された30万個ほどのデバイスと通信する。パッシヴ方式ではなくアクティブに動作するセンサーなので、誤差1m程度の精度で常に最新の位置情報を送信できる仕組みだ。

さらに、1年はもつというバッテリーを搭載している(旧バージョンは4日に1度充電する必要があった)。フェデックスはデバイスのコストについて明かす予定はないというが、同社の従業員がデバイスを荷物に付けて目的地で回収し忘れても、たいしたことにならない程度だという。

あらゆる荷物に対応する日が訪れる?

現時点では、このセンサーが追跡するのは位置だけである。しかし、湿度や温度、光など、繊細な取り扱いが必要な荷物の配送において重要になってくる要素を追跡するために利用される可能性もある。フェデックスは、このセンサーを用いたきめ細かな情報を、新型コロナウイルスのワクチンの配送に利用できることを期待しているという。

このデバイスは非常に費用対効果が高いことから、これから幅広く利用されるようになる可能性があると、フェデックスのカーターは言う。つまり、ワクチンを配達する人や医療の専門家だけでなく、つい気になって仕方ない普段の荷物の配送状況を確認するために利用できる日が来るかもしれないのだ。

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