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【ビブリオエッセー】希望への一歩を踏み出す 「星のかけら」重松清(新潮文庫)

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 もともと母が重松さんのファンで、私が高校1年生のとき、「感動するよ」と渡されたのがこの小説だった。お薦め通りジーンときたあのときから3年、読み返して自分の感じ方がどう変わったか、知りたかった。

 いじめにあっている小学6年生のユウキが、どんなにキツいことにも耐えられるというお守り「星のかけら」を探すお話だ。星のかけらは交通事故の現場に散乱しているフロントガラスの破片のこと。学習塾の友達、マサヤから聞いたこの噂に最初は半信半疑だったユウキの前に、不思議な女の子が現れる。

 フミちゃんというその女の子は小学2年生のときに交通事故で亡くなっていた。事故に責任を感じてひきこもってしまったのがマサヤの兄、タカヒロ。そしてもうひとり、フミちゃんの死に心を痛めたのがユウキをいじめていたヤノコウジだ。子供たちは星のかけらを探し当て、命の意味について考え、大人への一歩を踏み出す。

 「『死ぬ』っていうのは、もっと生きていたいのに生きられなくなっちゃうことで、もっといろんなことをやりたかったのに、もうなにもできなくなっちゃうこと」。これはフミちゃんのお母さんの言葉だ。ユウキたちと同じように年を重ねていくはずだったフミちゃんは、もう夢もかなえられない。

 ユウキの幼なじみのエリカは大切な発見のように、「生きてるって、なんか、すごいことだと思う」と語る。昨日より今日、今日より明日と違う自分が待っていて、今を生きる私たちは、日々変われる可能性を秘めているのだ。

 新型コロナや東日本大震災10年という報道を見るたびに思う。当たり前の日常がいかにありがたいか。いつも感謝できるように。そこから希望が生まれると信じている。

 奈良県大和郡山市 大塚倫代 20

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