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【地方変動】第1部・溶ける自治体(3)自己完結型の行政 コロナで限界露呈

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 新型コロナウイルス禍は単一自治体であらゆる課題に対処する「フルセット主義」の限界を浮き彫りにした。広域災害では行政の枠組みを超えた連携が進む。コロナ禍は地方行政の「かたち」の転換を迫っている。

 昨年12月1日。大阪府の吉村洋文知事は一本の電話をかけた。相手は、当時関西広域連合の連合長だった兵庫県の井戸敏三知事。第1波の渦中にあった昨春、吉村氏が両府県境の往来自粛を突如打ち出したことに井戸氏が露骨に不快感を示し、2人は一時ぎくしゃくした。

 それでもなお、コンタクトしたのは、感染拡大で切迫していた重症者向け臨時施設「大阪コロナ重症センター」に看護師を派遣してもらうためだ。“因縁”の相手に協力を求めたことが、単独自治体の限界を強く印象づけた。

 吉村氏の要請先は、全国知事会、防衛省・自衛隊にも及んだ。13府県が看護師計27人の派遣に応じたが、全国知事会が準用したのは、自然災害を想定した広域応援協定。自衛隊への府の要請は災害派遣要請だった。「未曽有の災害」と例えられるコロナ禍で求められたのは、災害をベースとした対応だった。

医療資源の偏在

 言うまでもなく、災害支援では自治体の枠組みを超えた取り組みが欠かせない。被災した市町村と支援する都道府県・政令指定都市をペアにして組み合わせる「対口(たいこう)支援(カウンターパート支援)」は、関西広域連合が東日本大震災で実施し、国も平成30年に制度化。超広域災害ともいわれた同年の西日本豪雨では岡山、広島、愛媛の3県に29自治体から延べ1万5千人の応援職員が派遣され、令和2年7月の熊本豪雨でも適用されて定着した。

 100年に1度の厄災とされるコロナ禍だが、国は以前から、少子高齢化の進展を見据えて病院の再編・統合を促す「地域医療構想」を進めていた。感染拡大で議論は宙に浮いたものの、突き詰めれば、社会を徐々に弱体化させる少子高齢化、一度に甚大な被害をもたらす自然災害、波状的に感染者が増える厄災は、限られた医療資源でどう人々の命を守るのかを迫る点で、同一線上にある。

 厚生労働省によると、平成30年末の人口10万人あたりの看護師数は最多の高知県で1511人、最少の埼玉県で694人とばらつきがあり、大都市なら看護師が豊富というわけではない。コロナ禍では偏在する看護人材を融通するため、災害規定という「借り物」に頼らざるを得なかった。

 神戸大の砂原庸介教授(行政学)は「医療資源の不足に備える枠組みがないのは問題。大都市圏で医療機能の最適化を進めるべきだ。都道府県や市町村という領域にとらわれる必然性はない」と指摘する。

自治体再編の種

 自治体の領域にかかわる本質的な議論は、都市制度改革という別の視点からも進んでいる。「大阪都構想」は昨年11月の住民投票で否決されたが、政令指定都市でつくる指定都市市長会は政令市を道府県から独立させる「特別自治市」制度創設の検討を国に要望するなど、全国に「自治体再編」の種をまいた。

 関西経済連合会も同月、コロナ対策をめぐり、「都道府県を越える広域行政の枠組みの不在」が浮き彫りになったとして、道州制の導入を議論するよう国に提言している。

 地方自治に詳しい法政大の武藤博己教授は「コロナ禍が明らかにしたのは、都道府県の枠組みを超えた協力体制を、感染拡大前に構築しておく必要があることだ」と強調する。

 ワクチン接種が始まっても続くコロナ危機の克服に向け、自治体の「かたち」が問われる。自然災害や少子高齢化を乗り越えるためにも地方は新たな枠組みが求められている。

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