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【ビブリオエッセー】こみあげる笑い、電車内厳禁 「ナンシー関の記憶スケッチアカデミー」ナンシー関 編・著(角川文庫)

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 何も聞かずに紙と鉛筆を用意してください。そして何も見ずに「スフィンクス」を描いてみてください。描けましたか?では「ペコちゃん」「ウルトラマン」は?「パンダ」や「牛」なら描けそうでしょうか。

 本書はもともと雑誌連載で、毎回、提示されたお題に読者が記憶だけを頼りに描いたスケッチを、記憶スケッチアカデミーのナンシー関理事長が講評するという企画でした。「人間と記憶とは、絵心とは」という深遠な研究の成果発表なのです、一応は。

 ナンシーさんは世界初の消しゴム版画家でした。テレビ批評やコラムで活躍され、芸能人の似顔絵に添えられた一文の的を射た毒舌は笑いなしには読めない名人芸です。2002年に39歳の若さで急逝されました。久しぶりに読み始めたらこみあげる笑いをこらえきれず、鼻息も荒くなって、このコロナ禍、電車内では絶対読むべきではないと肝に銘じた次第です。

 さてこのアカデミーは老若男女、素人の絵を批評するのでさすがに毒舌は控えつつも、愛あるイジリのコメントが絵の破壊的面白さを増幅しています。たとえば『自由の女神』というお題に投稿された絵には「ネグリジェ姿のお母さん」や「赤坂のはずれのクラブにいそうな厚化粧のママ」というコメントが添えられ、お題『鉄腕アトム』のとんでもない絵には「アトムじゃないにもほどがあります」「『とほほ』を感じます」と一撃で射抜く講評のひとこと。

 残念ながら数々の「症例」(送付された絵のこと)を見ずには面白さも8割減。ぜひとも手に取ってパラリとめくっていただきたい。紙と鉛筆を用意したくなりますよ、きっと。

兵庫県宝塚市 今津雅代 49

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