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【鬼筆のスポ魂】オーナーたち、制限緩和の直接交渉乗り出せ 植村徹也 

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萩生田文科相(右から2人目)に要望書を手渡すプロ野球の斉藤惇コミッショナー。右端はサッカーJリーグの村井満チェアマン、左端は室伏広治スポーツ庁長官=10日、文科省(NPB提供)
萩生田文科相(右から2人目)に要望書を手渡すプロ野球の斉藤惇コミッショナー。右端はサッカーJリーグの村井満チェアマン、左端は室伏広治スポーツ庁長官=10日、文科省(NPB提供)

 3月26日のシーズン開幕を前に球界には無力感や焦燥感が漂い始めている。それは斉藤惇コミッショナーのさまざまな要望に対し、政府からのゼロ回答が続いている状況と無関係ではない。

 プロ野球は22日に12球団代表者会議を開き、有観客開催を予定している3月2~21日のオープン戦期間中は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、緊急事態宣言解除後も応援団の活動を控えてもらうことを確認した。代表者会議に先立ち、Jリーグと連携した新型コロナウイルス対策連絡会議では、公式戦開催時の観客数などを協議。政府に対し、会場の収容率に基づく観客数の設定を引き続き求めていくことも申し合わせた。

 しかし、屋外での大規模イベントに観客5千人以下の制限を設けている政府から快い回答はなく、それ以外のさまざまな要望に対してもゼロ回答が続いている。10日には斉藤コミッショナーがJリーグの村井満チェアマンとともに、萩生田光一文部科学相、室伏広治スポーツ庁長官を訪ね、要望書を提出したが、全ての懸案は凍結されたままだ。

 観客制限の緩和以外にも、在留資格を持たない外国人選手の入国制限の緩和や、入国後に設けられている2週間の隔離期間の短縮などの重要案件は遅々として進んでいない。確かに変異株の感染拡大が心配されるなど、新型コロナウイルスの脅威はあるが、現状のまま3月26日のシーズン開幕を迎えれば、戦力の中核を担う外国人選手がいない状況で開幕後20試合以上戦わなくてはならないチームも出てくる。観客制限が緩和されなければ、球団の入場料収入は大打撃。昨季から続く大減収は球団経営をさらに危うくする。

 それでも開幕日は日々刻々と近づく状況で、複数の球団関係者からは「斉藤コミッショナー一人に政府との交渉を任せきりにしても、いいものか」という声が流れ始めた。

 実は前々から12球団首脳が斉藤コミッショナーに“疑問”を抱く言動が確認されていた。パ・リーグの複数球団首脳によると、昨年7月6日にオンラインで行われた12球団代表者会議で、コミッショナーはこう語りかけた。

 「私の知人である村上世彰氏から12球団のPCR検査の費用をすべて持ってもいいという申し出がありました。もし、お願いしたい球団があるのならば申し出てください」

 その瞬間、オンラインでつながる12球団首脳の空気は凍りついた。村上氏といえば、企業の買収・合併に関わるコンサルティングを行っていた「村上ファンド」の元代表。2005年には阪神電気鉄道の株を買い進め、同年9月には電鉄株26・67%と阪神百貨店株18・19%を保有し、同社の筆頭株主になった。その後の06年6月に証券取引法違反容疑で逮捕され、阪神関連株は阪急ホールディングス(HD)が引き受けた。現在の阪急阪神HDとなった経緯である。

 つまり、球界を震撼(しんかん)させ、阪神にとっては憎き存在である村上氏の名前を12球団代表者会議でわざわざ出した。球界がその名前に強烈なアレルギーがあることを知らなかったのかもしれない。村上氏にPCR検査費用を肩代わりしてもらう球団などあるはずがないことは、球界内の人間なら誰でも分かることなのに…。

 この一件から球界内には「斉藤コミッショナーは本当に大丈夫か」という疑問の声がくすぶっていた。政府との折衝に全く成果の見られない現状は、そうした過去の発言を蒸し返す原因にもなっている。

 それでも3月26日という日は待ってくれない。打開策は実質的に球団を経営しているオーナーたちが政府との直接交渉に乗り出すしかないのではないか。本当に危機感を持つ人々の言葉の方が相手の胸に響くはずだが、どうだろう。(特別記者)

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