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【エンタメよもやま話】小惑星の地球激突防げ 宇宙開発でも米に挑む中国

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老朽化などのため昨年12月に崩壊した米領プエルトリコにあるアレシボ天文台の巨大電波望遠鏡=2020年12月1日(AP)
老朽化などのため昨年12月に崩壊した米領プエルトリコにあるアレシボ天文台の巨大電波望遠鏡=2020年12月1日(AP)

 さて、今週ご紹介するのは、宇宙での覇権争いでも世界の勝者を目指すあの国に関するお話です。昨年12月、中国の無人探査機「嫦娥(じょうが)5号」が月面着陸に成功。米国が月面に国旗を立ててから約半世紀後、中国が月面に国旗を立てた世界で2番目の国となりました。着陸には同月1日に成功。3日に月面の岩石や土壌を採取し、国旗を立てた後、地球に戻るため月面を離陸しました。(同月6日付米CBSニュース電子版など)

 このように、宇宙開発の分野でも常に米国をライバル視してきた中国で今度は、地球上で最大となるレーダーシステムの構築計画が浮上しているのです。とはいっても、米からのミサイル攻撃などをいち早く察知するといった目的ではありません。今回の本コラムでは、このレーダーシステムをもとにした中国の壮大過ぎる野望についてご説明いたします。

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 2月7日付の香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP、電子版)などによると、中国の科学者や軍事研究者たちが、地球に衝突すれば人類の文明を脅かす可能性のある小惑星を監視するため、こうしたレーダーシステムが必要であると訴えているのです。これをまとめた論文は2月2日、中国科学院と中国国家自然科学基金が共催で発行する科学誌に掲載されました。論文のタイトルは「人類に対して果たすべきわが国の役割」。専門家の研究チームと人民解放軍傘下の研究機関「北京追跡通信技術研究所」が共同でまとめました。

 具体的には、中国北西部の新疆ウイグル自治区の南西、カシュガル地区にある直径35メートルの電波望遠鏡4~5基を利用し、強力なビームを宇宙に送信。返ってきた信号を北京市や天津市、上海市といった大都市にある大型アンテナで受信・分析し、小惑星の動向を把握しようというのです。

 中国には、東アジアで最大級といわれる上海の直径65メートルの電波望遠鏡など、沿岸地域に複数の大型の電波望遠鏡があります。ただし、こうした人口密集地域で、地球上で最大となるレーダーシステムを構築・運営するとなると、地元住民の反発を招きかねません。都市部では旅客機などが多く、レーダーが稼働中のときは、航空システムの通信ネットワークが干渉を受けやすくなります。

 そこで、研究者らが検討したもうひとつの候補は、南西部の貴州省平塘県(へいとうけん)にある直径500メートルという世界最大の球面電波望遠鏡(FAST)でした。しかし、研究チームによると、FASTにこうしたレーダーシステムの機能を新たに加えるには、多くの技術的な課題を克服せねばなりません。そのため、中国国内で最も人口密度が低く、複数の電波望遠鏡のシステムがある新疆ウイグル自治区が最も有望な候補地になったのでした。

 現在、小惑星の存在や動向を把握するためのレーダーシステムを運用している国は、世界で米国だけです。しかし、この論文で研究チーム側は、中国は米の施設と同等、あるいはそれを上回るシステムを構築できると断言。世界的な大惨事を引き起こす可能性のある脅威について、米国人から提供された情報だけに依存し続けることは、国際社会における中国の地位向上に悪影響を与えると指摘しました。

 そして、「偽の警告は大規模な社会的パニックを引き起こすかもしれないが、脅威を見逃すと富と生命の大規模な損失につながる可能性がある。国家の安全と利益を守るため、われわれは、自分たちの運命を自分たちで何とかせねばならない」と訴えました。

 小惑星の衝突と聞くとSF映画のようですが、大惨事につながります。2014年4月のロイター通信によると、直径40メートルの小惑星(アメリカンフットボールの競技場の半分以下の大きさ)が地球に衝突すれば、ひとつの都市が更地になってしまうというのです。

 実際、13年2月、直径17メートルの小惑星がロシアのチェリャビンスク州の上空約30キロの地点で爆発した際は、約1500人が負傷。爆発で放出されたエネルギーは推定で広島原爆の20~30倍にもなりました。

 前述のSCMPによると、天文学者たちが太陽系で識別・確認した小惑星は約40万個。また、昨年6月1日付の中国共産党傘下の英字紙チャイナ・デーリー(電子版)によると、このうち、地球の近くにある小惑星は約1万8千個で、うち約800個は直径1キロ以上といいます。そのため、国連は国際的な小惑星警告ネットワークを確立しており、直径50メートル以上の小惑星が地球に衝突する可能性がある場合、すべての国に警告が発せられます。

 米にはこうしたレーダーシステムが2つありましたが、米領プエルトリコのアレシボ天文台の巨大電波望遠鏡は、老朽化などに加え、修理や保守のための資金不足のせいで昨年12月、崩壊しました。残るひとつはカリフォルニア州のモハベ砂漠にあるゴールドストーン深宇宙通信施設だけです。とはいえ、レーダーシステムの専門家で知られるカリフォルニア大学のジャン-リュック・マーゴット教授は前述のSCMPに、現在の米の状況を憂いながらも「中国が地球の近くにある小惑星を研究するためのレーダーシステムの構築を検討していると聞いて、うれしい」と余裕を見せました。

 しかし、油断はできません。前述のチャイナ・デーリー電子版などによると、米航空宇宙局(NASA)がこうした小惑星を核兵器で破壊する技術を検討していることを受け、中国では、中国科学院傘下の国家宇宙科学センターの専門家が、無人の宇宙船で地球の近くの小惑星から約100トンの岩を採取し、それを危険な小惑星にぶつけ、地球への衝突コースから外す方法を提案。武力に頼ろうとする米国に対し、わが国は“平和的解決”をめざすとアピールしました。さらに、中国が検討するこのレーダーシステムについて、北京の天文学者によると、設計や建設、運用は中国科学院傘下の民間機関の協力を得て、中国軍が主導するといいます。小惑星をめぐる米中の宇宙での覇権争いはさらに過熱しそうです。(岡田敏一)

【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。産経ニュース( https://www.sankei.com/ )で【芸能考察】【エンタメよもやま話】など連載中。京都市在住。

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