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苦境の旅行会社、コロナ禍で模索する「ニューノーマル」

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インターネットのライブ配信で旅行商品を販売する「ライブコマース」の様子(トリップドットコム提供)
インターネットのライブ配信で旅行商品を販売する「ライブコマース」の様子(トリップドットコム提供)

 新型コロナウイルスの影響で顧客が激減した旅行会社が「ニューノーマル(新常態)」を模索している。ホテルや航空券のキャンセル無料をPRし、先買いを促したり、畑違いのサービスで「脱」旅行会社を図ったり。賞与ゼロを決めた大手や経営破綻した中堅企業もあるなど、業界は今も苦境が続く。今秋の行楽シーズン、各社は生き残りをかけ、発想力で勝負している。(桑村朋)

 《このホテルはなんと82%オフ。購入後もキャンセルが利くので、いま買わない手はありませんよ》

 旅行予約サイト「トリップドットコム」(本社・中国)の日本語サイトは今夏、ユーチューバーとコラボレーションしたライブ配信で、高級ホテル宿泊の格安バウチャー(引換券)を売り出した。特徴は期間内ならキャンセル料が発生しないこと。コロナ禍を強く意識した商品といえる。

 SNS上などで影響力のある「インフルエンサー」らを使い、ネット生中継で商品をPRする「ライブコマース」という手法。中国で2017年頃から始まり、新たな販売ツールとして、同国で広く定着している。

 日本での初めてのライブコマースは7月に実施。1週間で約3600件の予約が入る盛況ぶりだった。すでに7回の配信を終え、今後も積極展開する方針だ。日本法人担当者は「旅行意欲はなくなっていないので応援したい」と話す。

 国内の旅行会社も反転攻勢をねらう。

 エイチ・アイ・エス(HIS)は、企業が海外出張先で行う案件や業務を代行する「レンタルHIS」を開始。海外158都市・259拠点のネットワークを生かし、業務渡航が難しい現状に目を付けた。

 これまでに数十件の依頼があり、現地品の買い付けや視察代行などを実施したという。「始めたきっかけはコロナだが、終息後も需要があると考えている。ニューノーマルのサービスとして今後も提供したい」(担当者)。

 JTBも海外支店を活用し、海外出張ができない企業の現状に着目。海外企業を集めたオンライン商談会を開いたり、世界的IT企業が集積する米シリコンバレーのデジタル視察を実施したりと、新サービスの開発に躍起だ。

 国内外のツアー旅行の回復が見込めない中、自宅から1~2時間程度の近場を旅する「マイクロツーリズム」に着目し、近隣住民限定の割引ツアーを打ち出す企業も少なくない。

 コロナ禍で業界は大きなダメージを受けた。6月には老舗旅行会社のホワイト・ベアーファミリー(大阪)が民事再生法の適用を申請。JTBは社員約1万3千人に冬賞与を支給しない方針を決め、HISも夏賞与の支給を見送った。当面の厳しい状態が見込まれる中、各社の模索は続きそうだ。

 淑徳大学の千葉千枝子教授の話 インバウンド(訪日外国人客)が消えた今、日本人に旅行してもらう努力が必要だ。店頭で旅行の相談をするといった古い形態は、今後減る。従来のビジネスモデルを脱却し、ニューノーマルについていけるかが生き残りの鍵となる。観光立国を目指す政府も業界や自治体任せではなく、具体策を出すべきだ。

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