PR

【新防災-西日本豪雨2年】(下)ボランティア、迫られる変化

PR

 「さらに被害が大きくなるかもしれない」

 これまで数々の被災地でボランティア活動を行ってきた「災害NGO結(ゆい)」の前原土武(とむ)代表(42)は、5日、今後の九州地方での大雨を告げる天気予報に危機感を募らせた。明らかになってきた熊本、鹿児島両県での豪雨被害。前原さんは今、どうやったらボランティア活動ができるかを検討している。

 今回は、コロナ禍中で起こった初の大規模自然災害。恐れていたことが現実となった。「災害とコロナの両方に直面し、行政も住民も不安だと思う」。前原さんは現地の災害支援団体と連絡を取りながら情報収集に努め、現地から要請があれば、被災地入りするつもりだという。

 これまでの活動でも、コロナの影を感じることはあった。昨年10月の台風で千曲(ちくま)川が氾濫し甚大な被害を受けた長野市長沼地区などで、被災直後から民家の土砂撤去などの支援活動を続けてきた。だが、地元ボランティアセンターは感染拡大を懸念し、2月末からボランティアの受け入れを中止。「なぜこんな時期に県外からボランティアに来ているのか」。地元住民の声が、前原さんの耳に届くこともあった。

 これまで同市では、のべ6万人以上が支援活動にあたってきた。緊急事態宣言が全国で解除され、市では6月、約3カ月ぶりにボランティアの受け入れを再開したが、募集対象は市内在住者に限定したままだ。

 災害復興のため、全国から多数が駆け付けるボランティア。コロナ禍中の被災地での活動は、ウイルスを持ち込む、持ち帰る、被災者やボランティア同士の接触により感染を広める-など多くのリスクをはらむ。

 「ボランティアという善意の支援行為がウイルスを運ぶ可能性がある」と前原さん。従来の支援の常識が当てはまらない現状に、ボランティアのあり方の見直しが求められている。

□   □

 災害救援を行う団体で構成するNPO法人「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD、東京)」は6月、感染症対策を盛り込んだ災害対応ガイドラインをまとめた。被災した地域内への外部からの人的支援は原則、遠隔対応を主体とし、現地入りするのは地域内の団体と想定。その際は、不必要な移動を避けたり接触者の記録を取るなどの活動ルールを事前に決めるよう求めた。

 栗田暢之代表理事(55)は「まず被災地に行くという考え方から、今後は必要な物資や資金を送り、復旧作業のノウハウをオンラインで伝えるといった後方支援が中心になるだろう」と話す。

 受け入れ側も対応を急ぐ。全国社会福祉協議会(東京)は6月、災害ボランティアセンターに関する指針を公表。感染症の拡大懸念がある状況下では、センター設置は被災者ニーズに基づき判断し、ボランティアの募集や受け入れは「顔の見える範囲から市区町村域を基本とする」とした。

 これを受け、行動指針の策定を検討する鹿児島県社協の担当者は「地元の学校や支援団体との連携を強化する必要がある。通常の支援は受けづらいため、復興が長丁場にならざるを得ないことは覚悟している」と話す。

□   □

 全社協によると、西日本豪雨の被災地では約70の災害ボランティアセンターが開設され、センターを通じて支援に入ったボランティアは地元や全国からのべ26万人以上にのぼった。

 豪雨で浸水した岡山県倉敷市真備(まび)町岡田地区の被災者アンケートの分析を行った兵庫県立大の阪本真由美教授(防災危機管理学)によると、回答者の約半数がボランティアによる家の片付け作業などの支援を受けていた。阪本教授は「家族や身近な人たちだけの復興作業には限界があり、ボランティアの力は不可欠になっている」と説明する。

 ただ、コロナ禍中での復興は、その支援の確保が最大の課題になる。阪本教授は「被災地はこれまで以上に地域内で支え合う仕組みが求められる。マンパワーを確保するため、支援する側・受ける側がどんな体制が可能かを事前に話し合っておくことが何より大事だ」と指摘している。(入沢亮輔、有年由貴子)

=おわり

この記事を共有する

関連トピックス

おすすめ情報