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【一聞百見】赤いパインアメ、ヤマトのりに蜂蜜…コラボ商品ヒットの秘密 ヘソプロダクション代表取締役・稲本ミノルさん

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人気商品「はちみつアラビックリ!?ヤマト」。液状のりの容器に蜂蜜を入れた(ヘソプロダクション提供)
人気商品「はちみつアラビックリ!?ヤマト」。液状のりの容器に蜂蜜を入れた(ヘソプロダクション提供)
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 菓子や文具などの定番商品を雑貨・土産物にアレンジするヘソプロダクション(大阪市福島区)。しゃれっ気たっぷりの商品は、手に取ると笑ってしまい誰かに教えたくなる魅力がある。他企業とのコラボレーションで企画を連発する代表取締役、稲本ミノルさん(44)は「日本の『いいものづくり』をアピールしていきたい」と話す。(聞き手・粂博之編集委員)

定番商品をおもしろくアレンジ

 どうぶつのり(大阪府八尾市の不易糊工業)の容器にパインアメ(大阪市天王寺区のパイン)、「?」マークのマジックインキ(同市旭区の寺西化学工業)のキャップを取ると中からご飯のふりかけ…。「定番商品をいかに面白くみせるか」にこだわったヘソプロダクションの商品。企画することは「お笑い芸の大喜利みたいなもの」と稲本さんは言う。

 平成26年にスタートした同社を一躍有名にしたのは29年6月発売の「忖度(そんたく)まんじゅう」。政府の意思決定で安倍晋三首相に対する忖度が働いていることが明らかになったころ、取引先の「何かでけへんの(できないの)」の一言をきっかけに企画した。他社とのコラボではなくオリジナルだ。大喜利でいえばお題は「忖度」。癒着や公私混同に通じるとの否定的な文脈で語られていたが「本来は悪い意味ではない。『人の心を推し量る』という気遣いで、ビジネスのツールでもある」。そこでビジネスマンの手土産になる、まんじゅうに決めた。最もこだわったのはパッケージデザインで、ユーモア、まじめさのさじ加減が肝だった。

「最後は行動力で決まる」とものづくりについて語る稲本さん=大阪市福島区(薩摩嘉克撮影)
「最後は行動力で決まる」とものづくりについて語る稲本さん=大阪市福島区(薩摩嘉克撮影)
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 「これはイケる」と踏んだのだが、小売店に提案すると「面白いけど、上には通らない」「政治が関係するものは…」と歯切れの悪い反応。忖度という「変な壁」に阻まれた。しかし、あきらめず売り込みを続け、少しずつ棚に並ぶようになった夏、一部の新聞、ネットニュースに取り上げられると火が付き、製造が追いつかないほど注文が殺到した。

 「今年の流行語大賞は俺か、とか冗談を飛ばしていた」ら、11月に本当に新語・流行語大賞の事務局から受賞の知らせが届いた。「ネガティブにみられがちな言葉の本来の意味を、関西人らしくユーモアをもって広めた」と評価された。この年の大賞は「忖度」と「インスタ映え」。東京での授賞式で周囲の反応は「この人誰? なんでこの人が? っていう感じでしたけどね。まんじゅう屋の2代目と勘違いされたり」。

 その後、忖度まんじゅうは首相主催の「桜を見る会」を連想させる「桜」や、「お茶を濁す」にかけた「茶」なども出してシリーズ化、累計50万個以上を売り上げた。ただヒット作は時に呪縛となる。「忖度超え」が課題になった。

メモは取らない

 常に「面白いこと」を考えているという。企画した「忖度まんじゅう」は平成29年の流行語大賞に選ばれるなど大ヒット商品となった。だが、そのイメージだけが定着することは避けたかった。だから年間千件超の商品や店舗の企画、プロデュースを目標に掲げ、実行してきた。ペースは衰えない。今年に入っても「大阪迷菓 注釈まんじゅう」「大阪限定ご当地菜箸 大阪心さいばし」「大阪限定 モンチッチたこ焼き(ぬいぐるみ)」「広島限定 真っ赤なパインアメ」など20アイテム以上を発表。さらに裏方として多くの企業の企画に携わっている。依頼は多いが、待っているばかりでもない。5月に発表した「はちみつアラビックリ!?ヤマト」は、液状のりの定番商品「アラビックヤマト」の容器に蜂蜜を入れたもので、稲本さんから製造販売元のヤマト(東京)に持ちかけた。

のりの容器にアメを入れた「フエキ×パインアメ」(ヘソプロダクション提供)
のりの容器にアメを入れた「フエキ×パインアメ」(ヘソプロダクション提供)
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 アラビックヤマトを手に持ったとき「紙にのりを塗るのも、パンに蜂蜜を塗るのも動きは同じではないか」と思ったのがきっかけだ。企画書を送り、文具の展示会でヤマトの社長と会った際に説明すると「面白い」。話は決まった。「面白い」とひらめいても大体は「ほかに3人くらいが同じことを考えている」ものだと思っている。「じゃあ、誰が形にするのか。最後は行動力で決まる。それがものづくりで大事なこと」

 蜂蜜を液状のりの容器に入れるとなると、衛生管理などで手間とリスクが生じる。商品化に疑問を投げかける声も聞こえてくるが、問題を一つずつクリアしていった。ネットで予約を受け付けると千個が3分で完売。生産に応じて千個単位で予約販売しているが、そのたびに即完売している。発案から商品化まで1年かかったが、当然、この商品にかかりきりだったわけではない。「同時に100個くらいの企画を進行させている」

 頭の中はどうなっているのかというと「電源を常に入れている感じ」。そして独特の方法論を持っている。「メモは取らない。メモがなければ思い出せないようなことは大したことはないから」「考えに行き詰まったら、アイデアを真上に投げる。するといつか頭の上に落ちてきて、パッと解決する」など。いずれも仕事を進めながら身につけてきたものだ。ただ、ある取引先の企業のトップと偶然にも同じ手法が一つあったという。「答えを出したいことを寝る前に考える。眠っている間も脳は考えているらしく、目覚めたあとに解決策が浮かんでくる」。同じように考える人はやはりいたのだ。

稲本さんが手がけた膨大な商品の数々(薩摩嘉克撮影)
稲本さんが手がけた膨大な商品の数々(薩摩嘉克撮影)
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 ヘソプロダクションは稲本さんを含め社員は10人いるが、いまのところ商品企画は稲本さん一人が担当している。スピードを重視してのことだ。そしてあらゆる所にアイデアを求める。「異業種とのつながりが新しいものを生む。だから人との面会を断ることはありません」。どさくさにまぎれて別件の相談を持ちかけられることもあるが「それも訓練。何かのヒントになります」と笑う。

「どう役立つか」が軸になる

 28歳のとき「人生が動き始めた」という。それまでは、テレビ番組の制作会社で働いたり、詩集を出版したり。「自分は何かで絶対に成功できると思っていた。たくさん夢があった」。しかし、ふと気が付いた。「いまだに夢を持ち続けているというのは、カッコ悪いことだ。結局何もできていない」。いくつもの夢を絞って選んだのは、好きなおもちゃだった。「この分野で成功しよう」と決め、大阪の玩具問屋に就職。社員数人の小さな会社だったが「ここで名を上げればヘッドハンティングされて、とか考えましたね」。

 どんどん企画書を出し、「こんなもの、どこで売れるねん」と突っ込まれると、販売先を探して注文を取った。小売店を回るうちに「いい売り場を作るのが先だ」と思うようになり「売り場を作るための商品を考えた」。卸売りだけでなく、商品企画から営業、店舗プロデュースと手を広げ、土産物店、ミュージアムショップ、駅ナカ店などから相談を受けるようになった。しかし、最終判断は社長に従うことになる。「自分の色が十分に出せない」と退職した。

妖怪をデザインした「アマビエ疫病退散プロジェクト」のグッズ(ヘソプロダクション提供)
妖怪をデザインした「アマビエ疫病退散プロジェクト」のグッズ(ヘソプロダクション提供)
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 就職から10年。38歳だった。培ってきた人脈もあって10社ほどから誘いを受けたが、「また辞めたくなったら迷惑をかけてしまう」とすべて断り、独立してコンサルティング業に。「いろんな経営者と仕事ができて、いい経験になった」ものの、案を出しても最終判断するのは当然、依頼主だ。「自分のハコ(会社)でリスクをとって勝負できれば」との思いは募った。そんなある日、吉本興業の関連会社が大阪・新世界に開店する土産物店の一部スペースを任されることになった。これは必然的な「流れ」だと受け止め、平成26年11月、ヘソプロダクションを立ち上げた。

 京都鉄道博物館(京都市下京区)のミュージアムショップのプロデュースなどの依頼を受けながら事業の足場を固めた。1年目に約1億8千万円だった売上高は、現在約12億円(令和元年10月期)。土産物、企業とのコラボレーション商品も大きく伸びた。

「自分たちがヘソ(中心)であろう」がコンセプトという稲本さん=大阪市福島区のヘソプロダクション本社(薩摩嘉克撮影)
「自分たちがヘソ(中心)であろう」がコンセプトという稲本さん=大阪市福島区のヘソプロダクション本社(薩摩嘉克撮影)
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 新型コロナウイルスの感染拡大で先を見通しにくくなった今年は、転機になるかもしれない。これからのビジネスは「何を売るかではなく、世の中にどう役に立つか、が軸になる」とみている。今取り組んでいる事業の一つが「アマビエ疫病退散プロジェクト」。絵を見ると流行病から逃れられると伝わる妖怪「アマビエ」をデザインしたTシャツやマグカップなどグッズを販売し、売り上げの20%を日本赤十字社に寄付する。商品を売ることで、国内メーカーの仕事も生み出していく。

 どこで事業をしようと自分たちがヘソ(中心)であろう、というのがヘソプロダクションのコンセプト。経営の神様と呼ばれた松下幸之助創業の地とは知らず、大阪市福島区大開に本社を置いた。来社する取引先が記念碑に立ち寄ることも多いという。ちょっとした縁を感じながら「自分が成功して、ここをベンチャーが集まる街にし、若い人たちを応援したい」と思っている。

【プロフィル】いなもと・みのる 近畿大文芸学部卒。テレビ番組制作会社、玩具卸売会社などを経て平成26年11月、玩具、文具、雑貨、土産物などを企画・プロデュースするヘソプロダクション(大阪市福島区)を設立した。同社は、サッカー「セレッソ大阪」オフィシャルスポンサー、バスケットボール「大阪エヴェッサ」オフィシャルパートナーにも就いている。

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