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【鬼筆のスポ魂】安打製造機「秋山」が好条件で海を渡った波紋 植村徹也

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 新たな論争の発火点になるかもしれない。米大リーグ、レッズと3年総額2100万ドル(約23億1千万円)という破格の大型契約を結んだ秋山翔吾外野手(31)の海外フリーエージェント権(FA)について、球界内では早くも将来を危惧する声が漏れている。(金額はすべて推定)

 西武から海外FA権を行使してレッズに移籍した秋山は8日に入団会見を行った。メジャー30球団で唯一、日本人が所属したことのなかったレッズとの契約内容は超破格。1年目から600万ドル→700万ドル→800万ドルと年俸は上がり、総額は約23億1千万円。昨季の西武の年俸は2億3490万円だったから、昇給率?はすさまじいパーセンテージだ。

 秋山は神奈川・横浜創学館高から八戸大を経て、2010年のドラフト3位で西武に入団。15年に左打者としては最長の31試合連続安打を放ち、シーズン216安打のプロ野球新記録を樹立すると、17年には首位打者を獲得した。シーズン最多安打は4度。ベストナイン4度にゴールデングラブ賞も6度。素晴らしい選手には違いないのだが、今オフにポスティングシステムでレイズに移籍した筒香嘉智外野手(前DeNA)や、かつてヤンキースに移籍した松井秀喜外野手(元巨人)らと比べるとパワーヒッターではなく、メジャーではここまで好条件の契約は勝ち取れないだろう…とみられていたのだ。

 ところが蓋を開けると、3年で約23億円。ある球界首脳は天を仰いで思わずこうつぶやいた。

 「秋山クラスでこれだけの契約を結べるとなると、日本のレギュラークラスの選手たちは誰もがメジャーに目を向ける。野球選手の寿命は短いから、できるだけ短期間にたくさん稼ぎたい。そうなると選手会がまた騒ぎ出すだろうね」

 騒ぎ出す…。何が争点になるかと言えば、FA権の取得期間だ。日本球界にFA制度が導入されたのは1993年オフ。その後、2003年と08年に改正されたのだが、現状の海外FA権は累計9年(1シーズンの1軍登録145日で換算)を経過しないと取得できない。

 そもそも選手会は累計9年の短縮を経営者側に迫っていた背景がある。大リーグのFA権取得は、メジャー昇格から累計6年(1シーズン172日で換算)で、選手会は大リーグ並みの取得期間を要求していた。それでも日本球界では12年間、保有期間の変更がなかった。それが秋山の巨額契約で取得期間の論争に再び火が付く…と、日本野球機構や12球団経営者サイドは心配している。

 昨季、日本プロ野球界は初めて1試合の平均入場者数が3万人を超えた(3万929人)。前年比3・9%増で、日本ハムを除く11球団で前年を上回った。逆に大リーグは観客動員が4年連続ダウンで、15年シーズンから約500万人減だ。日本球界が好調な理由の一つは各球団のレギュラー選手の保有が安定していて、営業努力に専念できるという事情がある。もし、海外FA権の取得期間が短縮されれば、球団経営の不安定要素が増大。観客動員も下降に向かう心配がある。なので、選手会の今後の動向に目を光らせざるを得ないわけだ。

 秋山が勝ち取った約23億円の札束。もちろんレッズでの大活躍を期待するが、日本の安打製造機が海を渡った“波紋”は日本球界を直撃するだろう。(特別記者)

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