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「ヘンゼルとグレーテル」は強盗殺人か、正当防衛か 童話・昔話で司法身近に

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裁判員制度10周年の記念アニメ。オオカミに対する殺人未遂の共謀を問われた赤ずきん(日弁連提供)
裁判員制度10周年の記念アニメ。オオカミに対する殺人未遂の共謀を問われた赤ずきん(日弁連提供)
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 魔女を殺して財宝を手にした行為は強盗殺人か、それとも正当防衛後の窃盗か。裁判員制度が導入11年目を迎え、辞退率の上昇や関心低下が新たな課題となる中、童話や昔話を活用した模擬裁判などが注目を集めている。ターゲットは小中学生をはじめとした「未来の裁判員」。ストーリーや登場人物になじみがあるので、子供でも理解が早い。関係者は「制度の意義や議論して答えを導くプロセスの大切さを知るきっかけになれば」と期待を寄せる。(杉侑里香)

■殺人?正当防衛?

 「本当に魔女はヘンゼルを食べようとしたのかな」「最初からお金を奪う目的で魔女を殺したのかも」

 1月中旬、大阪ボランティア協会が開催した「こども法廷プロジェクト」の一幕。小中学生らが輪になり、真剣な表情で「評議」を行っていた。

 模擬裁判の題材は、童話「ヘンゼルとグレーテル」。森に捨てられた幼い兄妹が魔女に食べられそうになり、知恵を絞って倒す-というあらすじで知られる。兄妹は魔女を殺して財宝を持ち帰ったが、この行為は「強盗殺人」と「正当防衛後の窃盗」のどちらに該当するのか。議論が始まった。

 参加者はまず、事件の経緯や証拠を裁判仕立てで紹介する映像を見て、それぞれが考えた結論を発表。その後、お互いの意見への疑問を話し合った。

 進行を務めた礒野太郎さん(48)は「言い負かすことが目的じゃないよ。納得できるまで話し合って」とアドバイスしていた。

■真剣さに驚き

 礒野さんは裁判員経験者らで結成し、同協会を拠点に活動する市民団体「裁判員ACT 裁判への市民参加を進める会」(大阪市)でチーフを務める。裁判員制度が導入された平成21年以降、傍聴体験などを通じて理解を広げる活動を展開してきたが、こども法廷プロジェクトは初の試み。若年層にも裾野を広げたいと考えたという。

 約1時間の白熱した議論を経て、参加者は多数決で「判決」を導き出した。他の人の意見に納得して考えを変えた人もいれば、最初の結論を貫いた参加者もおり、議論を見守った西村健弁護士は「実際の評議のように客観的な証拠に基づいて結論を導き出そうと取り組んでいた」と目を見張った。小学3年の息子と参加した父親は「ニュースで見聞きする裁判員裁判を、より身近に感じることができた」。

■法廷画アニメで身近に

 昔話や童話をもとにした法教育の取り組みは近年、各地で盛んだ。千葉や山梨などの裁判所では学校の長期休暇に合わせ、浦島太郎や三匹のこぶたなどを題材に実際の法廷を使った裁判体験を実施。授業などで活用されるケースも増えている。

 日本弁護士連合会(日弁連)は昨年12月、裁判員制度開始10周年に合わせ、桃太郎や赤ずきんを題材にした3話立ての記念アニメをユーチューブで公開した。

 桃太郎の事件では、村人への暴行や略奪の罪に問われた赤鬼が被告として登場。桃太郎のおじいさんや家来のイヌが「鬼は乱暴者だ」と訴えたのに対し、鬼の娘は「昔から見た目で差別を受けてきた」と証言。裁判員が「鬼は悪事を働くものだと先入観を持っていなかったか」と自問する場面などを描いた。法廷画家が描いた裁判の様子も臨場感たっぷりだ。

 「子供や若い世代に興味を持ってもらう上で、昔話や童話はいい題材」と解説するのは制作に携わった刑事調査室嘱託の趙(ちょう)誠(せい)峰(ほう)弁護士。「多くの人が裁判への理解と関心を深めるきっかけになれば」と話した。

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