PR

災害時もスマホつながる 大阪大学が開発したハイテク装置

PR

「たすかんねん」実証実験のイメージ
「たすかんねん」実証実験のイメージ
その他の写真を見る(1/3枚)

 どうやって家族と連絡を取ればいいのか-。災害時に被災者が最も不安に思うことの一つが、携帯電話がつながらなくなることだが、大阪大学などは電気や通信網が遮断された場合も他の地域と連絡が取れる装置を開発、実用化を進めている。その名も「たすかんねん」。被災者の心理的負担を減らし、被災地の迅速な情報共有も可能にするという。同大は今後さまざまな自治体に導入を呼びかけ、大阪発の減災システムとして広げたい考えだ。 (江森梓)

 《台風で停電し、電話はつながりません。インターネットもつながりません。年配の人も多数いて、大変な状況です》

 11月初旬、大阪大学吹田キャンパス(大阪府吹田市)で行われた通信装置「たすかんねん」の実証実験。学生は、たすかんねんの試験機(高さ約6メートル、幅約1・5メートル)の近くで、端末に文章を打ち込んだ。

 台風でキャンパス内が停電したと見立て、約2・5キロ離れた想定対策本部となっている同市立津雲台小学校に送信。しばらくすると、同小にいた大学教員から学生のもとに「確認しました」と返信がきた。実験は成功だ。この間、大手通信会社の回線は一切使われなかった。

 メッセージは、たすかんねんに搭載された、独立した通信規格の「Wi-SUN FAN」や無線LAN(Wi-Fi)によって発信され、キャンパス内の2カ所の校舎の屋上に設置されたアンテナでまた別の無線通信を経由し、津雲台小に設置された端末に届くという仕組み。災害時、大手通信会社の回線パンクや基地局障害によって通信障害が起きたときにも別経路を使うのでデータ通信が可能になるという。

 その後、この装置を使って音声や動画も送信したが、いずれも成功した。

■見守り役にも

 中心となって開発したのは、同大人間科学研究科の稲場圭信(けいしん)教授ら。平成29年から通信会社など複数の企業と連携して同キャンパスに試作機を設置し研究を進めてきた。

大阪大の吹田キャンパスに設置された「たすかんねん」と稲場圭信教授(右)=大阪府吹田市
大阪大の吹田キャンパスに設置された「たすかんねん」と稲場圭信教授(右)=大阪府吹田市
その他の写真を見る(2/3枚)

 たすかんねんはWi-Fiのほか、太陽光パネルや蓄電池、発光ダイオード(LED)照明、カメラなどが搭載され、震度7の地震や風速60メートルの台風にも耐えられる設計。半径約50メートルの範囲であれば、被災時に停電していても、クリーンエネルギーとWi-Fiを使い、無料通信アプリ「LINE」などで離れた地域にいる家族や知人と連絡を取ることができる。平常時には夜間照明や防犯カメラとして機能しているほか、コードを接続すれば携帯電話を充電することも可能だ。

 設置費用は1台あたり約200万円。災害時に効果的に機能させるには、面積約36平方キロメートルの吹田市の規模の町では50台程度が必要となるが、稲場教授は「住民の安心安全が守れることを考えれば決して高価ではない」と説明する。同キャンパスにはすでに3基設置されており、さらに来年吹田市内で1台の設置が決まっているほか、さまざまな自治体に設置を呼びかける。

■心理的負担を軽減

 「災害時に大切な家族や友人がどうしているのか一切分からないのは、被災者にとって大きな心理的負担になる」。稲場教授はこう訴える。

 念頭にあるのは、9月に千葉県に甚大な被害をもたらした台風15号だ。大規模な停電で、被災地ではインターネットの光回線や携帯電話などの通信障害が続いた。

 被災直後に同県鋸南町(きょなんまち)の避難所を訪れた際、停電による暗闇の中、インターネットがつながらず新しい情報を手に入れられない上に、家族とも連絡が取れず、不安の声がもれるのを目の当たりにした。

 さらに通信障害によって行政側の被災地の情報収集が困難となり、適切な救助ができない場面もみられたという。稲場教授は「たすかんねんが各地に設置されれば、こうした事態は解消され、災害時の安心につながる」と強調。新しい減災システムの普及に努める考えだ。

■避難するとき持って出るのは…

 インターネット接続事業者「BIGLOBE」が平成30年に「災害に関する意識調査」を実施したところ、災害時の不安として「家族や知人との連絡が取れなくなること」をあげる人が最も多いことが分かった。

災害が起きた場合に不安に思うこと
災害が起きた場合に不安に思うこと
その他の写真を見る(3/3枚)

 調査はスマートフォンを持つ全国の20~60代の男女千人を対象にインターネット上で実施。「災害が起きた場合に不安に思うこと」(複数回答可)をたずねると、「家族や知人との連絡」と「災害による自分の身の安全」が68・9%で同率1位となった。次いで、「飲料水・食料」(63・2%)などが続いた。

 また、「災害発生後に避難する際に持っていくもの」(複数回答可)では、「携帯電話」が86・9%と最も多く、「お金(財布)」(85・8%)や「水」(62・0%)などを上回った。こうした調査結果から、人々がいかに被災時の通信に重点を置いているかが分かる。

この記事を共有する

関連トピックス

おすすめ情報