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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】“就活”鳥谷は売り手市場、その理由は

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イベントで子供たちと交流する鳥谷敬=東京都三鷹市(撮影・桐原正道)
イベントで子供たちと交流する鳥谷敬=東京都三鷹市(撮影・桐原正道)

 阪神を退団して他球団での現役続行を目指す鳥谷敬内野手(38)のエージェント(代理人)側が新天地に2年契約、シーズン80試合以上の出場機会を求めているという情報があります。鳥谷の今季成績は74試合に出場して打率2割7厘、0本塁打、4打点。プロ16年目の今季は大きく出場機会を減らし、成績も下降しました。それでも移籍を模索する他球団に2つの“条件”を示しているのならば、鳥谷自身の自信の表れですね。注目の新天地はフリーエージェント(FA)&ポスティング市場が落ち着いた後に決まる公算が大きく、DeNA、広島、西武、ロッテなどが獲得調査を進めているとみられています。

思い出いっぱいの秋の安芸…

 10月31日から始まった矢野阪神の高知・安芸秋季キャンプを取材で訪れました。11月19日に打ち上げられる20日間の練習は当然ながら若手主体。メイングラウンドでは大山や高山、梅野、北條、中谷らが新任の井上一樹打撃コーチの下、ロングティーや笛を使って打撃の間を取るティー打撃などに精力的に取り組んでいましたね。

 さらにブルペンでは中日一筋29シーズンで219勝を飾った山本昌氏が臨時コーチを務め、藤浪や青柳、高橋遥らを熱血指導。チェンジアップの効用を説き、特に藤浪とは二人三脚で再生プログラムを進めていましたね。制球難が治らず、フェニックス・リーグでの最終登板となった10月26日の韓国ハンファ戦でも4回で9四球と大乱調だった藤浪が“山本道場”で立ち直るならば、これは大ヒット人事となるでしょう。

 若虎たちが懸命に練習をする安芸のタイガースタウン。そのメイン球場裏手の山肌にはチラチラと紅葉が見られ、眼下に広がる太平洋はキラキラと輝いていました。ここに初めて足を踏み入れたのはもう35年前の1984年(昭和59年)の秋でした。2度目の監督復帰を果たした吉田義男監督が新スタッフを引き連れて安芸市営球場の施設を視察したのです。吉田新監督の同行取材でグラウンドを歩き回り、その後に安芸市内で分厚いステーキをごちそうになったことを今でも忘れません。

 翌年の85年に吉田阪神は21年ぶりのリーグ優勝、球団創設初の日本一に輝きました。バース、掛布、岡田、真弓、佐野、長崎、弘田、平田に木戸…。そのシーズンの春季キャンプでは前年秋の視察時に考案された6カ所ノックが初めて練習に取り入れられましたね。ベテランから若手までノックの嵐でユニホームが泥にまみれました。

 チーム一丸となって挑戦する-。

 吉田イズムが6カ所ノックに込められていたのでしょう。充実した春季キャンプがシーズンでの躍進を下支えしました。

注目の新天地はどこに?

 おっと、あまりにも話が脱線しましたね。本題に戻します。若手が懸命に汗を流すグラウンドには当然ながら、あの男がいません。そう、今季限りで阪神を退団し、現役続行を求めて他球団移籍を決断した鳥谷です。

 阪神一筋16シーズンを過ごしました。球団の大功労者です。通算安打は2085本。生え抜きの選手としては球団最多の安打数です。1軍公式戦1939試合連続出場、13シーズン連続全試合出場はいずれも日本球界歴代2位。2010年と翌11年は選手会長、12~16年はキャプテンを務めました。

 しかし、今季は5年契約の最終年でした。シーズン途中に球団首脳から「今季限りでユニホームを脱いでいただきたい」と“引退勧告”を受けましたが、それを拒否。今季の成績は74試合に出場して打率2割7厘、0本塁打の4打点。球団側は来季の戦力構想外であることを示したのですが、鳥谷は即座に「他球団でプレーします」と返答したのです。なので、当然ながら秋季キャンプでは鳥谷の姿はどこにもありませんね。そして、キャンプ地でも「鳥谷は…」という話題にすらなりません。

 では、注目の新天地はどこになるのか? 果たして鳥谷を受けいれて現役続行をかなえさせてくれる球団はあるのか?

条件提示は自信の表れ

 球界の舞台裏を流れる仰天情報があります。鳥谷のエージェント側が獲得調査を進めている球団側に2つの“条件”を示しているというのです。その条件とは-。

 (1)2年契約

 (2)シーズン80試合以上の出場機会

 今季の成績をもう一度確認すると、74試合出場で打率2割7厘、0本塁打の4打点。昨季までの15シーズンはすべて年間100試合以上に出場していました。ルーキーイヤーの2004年が101試合出場。これが最も少ない試合数です。なので今季の出場試合数は大幅な減少ですね。当然ながら周囲も球界内の評価も「力が衰えた」となるはずです。しかし、鳥谷側が2つの逆提示をしているのならば、これは自身の力に対する自信以外の何ものでもありません。

 80試合以上の出場機会さえ与えられれば成績を残してみせる-という鳥谷の自己分析こそが、ある意味で表現するならば「法外要求?」を行っている背景にあるのではないでしょうか。

 そして、球界の舞台裏を流れる情報では鳥谷に興味を示して、獲得調査を行っている球団は複数あるといいます。まず二塁手が固定できていないDeNA。もし移籍ならば大和との“旧トラコンビ”誕生ですね。

 さらに以前のコラムで書いた通り、FAやポスティング市場の動向によって二遊間のポジションがポッカリと空いてしまう球団も有力候補になります。例えばポスティングシステムでの大リーグ移籍を模索する菊池が抜けるなら広島は二遊間に不安が生まれます。FA移籍が決定的な鈴木の抜けるロッテもそうです。秋山が海外FAで大リーグ移籍を進める西武は外崎の外野コンバートならば二塁が空きます。西武の本拠地・埼玉は鳥谷の故郷でもあります。阪神と同じ関西に本拠地を置くオリックスも遊撃の安達に健康的な不安要素があります。人気面での貢献も期待できる鳥谷取りに動いても不思議ではありません。

 こうやって球界事情を見ると、鳥谷については買い手市場ではなく、売り手市場であることが浮かんでくるのです。売り手市場とは「売り手」に優位な市場であることを意味します。つまり“就活”をしている鳥谷が優位な状況だ…というわけです。ならば2年契約&シーズン80試合以上の出場機会-をエージェント側が提示していても何ら不思議ではなくなるわけですね。

 最終的な移籍先決定はFA&ポスティング市場が落ち着いてからになるのかもしれません。逆に鳥谷側からすれば焦って早めに決めることは条件的に損をするのかもしれません。鳥谷が最も欲するのは今季の阪神でかなわなかった出場機会、すなわちスタメン出場の試合数でしょう。新天地選択の決定打はいかに試合に出られるか、という考察になるはずです。なので菊池や秋山、鈴木らがどこに落ち着くかで決まるのかもしれません。

 若手の躍動する安芸タイガータウン、そして移籍先を模索する鳥谷…。それぞれが迎えた秋の景色は味わい深いものですね。阪神タイガースが新たな歴史のページを開いたことが身に染みる今日この頃です。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや)

 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日午後9時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日の虎コーナー』や土曜日午後7時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳!」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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