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【一聞百見】姫路から世界へ 目指すV1制覇 ヴィクトリーナ姫路監督の竹下佳江さん(41)

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「まだまだ学びつつ選手と一緒に成長している段階です」と話す竹下監督 =兵庫県姫路市(南雲都撮影)
「まだまだ学びつつ選手と一緒に成長している段階です」と話す竹下監督 =兵庫県姫路市(南雲都撮影)
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 今も記憶に新しい“世界最小で最強のセッター”といえばこの人、女子バレーボール日本代表の司令塔として活躍した竹下佳江さん。2012年ロンドン五輪で28年ぶりの銅メダルを獲得して引退、現在は監督として、兵庫県姫路市に拠点を置くプロバレーボールチーム「ヴィクトリーナ姫路」を率いる。今春、創部わずか3年でV1リーグ昇格を果たし、注目される4年目、新シーズン入りを前に意気込みを聞いた。(聞き手 編集委員・山上直子)

■恩師に請われ「逃げられない!」

 「ヴィクトリーナ姫路というチームが立ち上がったときから考えると、本当に選手もさま変わりしました。ここ1、2年で若い世代が増え、その中でベテラン組もがんばっています。両方がうまくかみ合ってチームとして力を発揮してくれれば」。平成28年の春。ロンドン五輪で監督としてチームを銅メダルに導いた真鍋政義さん(現ヴィクトリーナ姫路オーナー)が、故郷の姫路市で“日本初のプロチーム”を立ち上げた。掲げたのは「姫路から世界へ」。そして監督として見込まれたのが竹下さんだった。とはいえ当時、竹下さんは結婚して現役を引退、長男を出産して第二の人生を歩き始めてさほど時間もたっていなかった。よく引き受けましたね?

 「ずーっとずーっと、断っていたんですよ。もう逃げられない!という感じでした」と苦笑。「でも、バレーボールに恩返しをするためにも、こういう(プロの)チームを作らなければいけないと思っていました。世界で戦っていくためにも必要じゃないか、という真鍋さんの思いも分かっていましたし…」

姫路城を背景に会見する竹下佳江監督。右は全日本女子代表の元監督でヴィクトリーナ姫路オーナーの真鍋政義さん =平成29(2017)年4月、兵庫県姫路市
姫路城を背景に会見する竹下佳江監督。右は全日本女子代表の元監督でヴィクトリーナ姫路オーナーの真鍋政義さん =平成29(2017)年4月、兵庫県姫路市
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 発足当時、選手はわずか3人。主力の一人が北京五輪に出場した後、21歳で引退したセッター、河合由貴さん。竹下さんとはJTマーヴェラスで一緒だった。「監督をするとなったとき、まず最初にセッターがいなければ始まらないと思いました。JTで一緒でしたし、彼女が若くで引退したことも知っていて、もったいないなと思っていたんです」と振り返る。

2012ロンドン五輪のバレーボール女子3位決定戦で韓国と対戦。28年ぶりのメダル獲得に貢献した竹下さん(左から2人目)
2012ロンドン五輪のバレーボール女子3位決定戦で韓国と対戦。28年ぶりのメダル獲得に貢献した竹下さん(左から2人目)
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 竹下さんの誘いに河合さんは再びコートに立つ決心をする。キャプテンとしてチームの中心で活躍。V1リーグ昇格に貢献し、昨シーズン限りで引退した。今季、ヴィクトリーナ姫路はV1リーグに初参戦。高橋咲妃惠選手を新キャプテンに新体制が発足し、10月からリーグ戦が始まる。11月、12月には地元でのホームゲームも予定され、活躍が期待されるところだ。「目標はもちろん『V1優勝』。そこを目指さなければV1リーグで戦う意味はないと思っています」

「目標はV1優勝です」と話す竹下佳江監督 =兵庫県姫路市(南雲都撮影)
「目標はV1優勝です」と話す竹下佳江監督 =兵庫県姫路市(南雲都撮影)
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■立場が私を成長させてくれた

 “火の鳥NIPPON”の司令塔-。かつて竹下佳江さんはそう呼ばれた。世界選手権やワールドカップでベストセッター賞を受賞し、オリンピックにも3回出場。「最初は姉の影響でしたけれど、できないことが日に日にできるようになるのがうれしかった。そのうち、一つのボールをみんなでつないで1点を取る喜びを知って。バレーボールには一つのものをチームメートで創り上げる楽しさがあるんです」

 生まれながらのセッターというイメージだが…。「小学校からセッターはやっていましたが、実は最初はあまりおもしろいと思ったことがありませんでした」と苦笑。中学生になると身長が止まり「セッターでやっていくしかない」と思うようになった。「それならとことんやる。やっぱり勝ちたいので」

 ロンドン五輪では、日本代表の真鍋政義監督(当時、現ヴィクトリーナ姫路オーナー)がタブレットを持ち、データを駆使して指示する姿が注目を集めた。身長で劣る日本女子チームが、世界と戦うための「IDバレー」だ。それをコート上で実行する中心にいたのが竹下さん。司令塔といわれるだけにセッターというポジションは、監督業ともつながるのだろうか。

 「うーん、全体を把握しなければいけないという点では似ているところはあるかもしれません」。と、少し考えてこう付け足した。「でも、セッターではないポジションでも全体を把握できるすばらしい人がいます。立場が人を作るということがありますが、私の場合は(セッターという)ポジションが自分という人間を成長させてくれたのかなあと思います」

ヴィクトリーナ姫路の地元・兵庫県での主な試合日程
ヴィクトリーナ姫路の地元・兵庫県での主な試合日程
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■子育て両立 スポーツ界は変わる

 間もなく新シーズンを迎えるが、一方で、4歳と1歳の男の子を育てる母親だ。子育てしながらの監督業は-。「たいへんです。たいへんですけれど、子育てってそういうもの。当たり前だとも思うので、しっかり向き合わないといけないなと思っています」

 まずはチームやコーチの理解に感謝。週末に練習がある場合も「チャイルドマインダーの資格を持つスタッフに見ていてもらうこともあります。監督が子供を連れて練習にくるなんてこと、あまりなかったことですよね」。竹下さんのやっていることは、バレー界にとっても新しいチャレンジかもしれない。「私は選手が結婚して子供を産んで、また復帰してここでバレーをするのもいいと思っています。バレーに限らずスポーツ界もこれからはそうなっていくんじゃないかな」

「森永乳業杯 ツアーオブバレーボール」のバレーボール教室で指導する竹下佳江・ヴィクトリーナ姫路監督
「森永乳業杯 ツアーオブバレーボール」のバレーボール教室で指導する竹下佳江・ヴィクトリーナ姫路監督
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 地元の自治体やスポンサー企業の応援も熱い。「まず真鍋(政義)オーナーが熱いので」と笑顔。「去年初めて姫路でホームゲームをしたときに、たった3人から始めたチームがこれだけたくさんの方に応援してもらえるようになったんだと、なんともいえない気持ちになりました。だからこそ、私たちが勝つことが恩返し。頑張っている姿を見てもらうことが大切なんだと思います。あと、選手が中学校の部活指導に行くことも。交流はどんどん進めていきたいですね」

 来年に迫った東京五輪についても聞いてみた。「中田久美監督になって世界一を取るということを目標にずっと変わらずやってきています。目標に向かってその過程をどう積み上げていくかが結果につながる。頑張ってほしい」

 では、ヴィクトリーナ姫路はどうか。「代表は世界と戦っていますが、私たちも『姫路から世界へ』という思いでやっています。いま、優秀な若い選手たちがたくさんいるんです。そういう選手たちが代表に入って活躍してほしいと思っています」。母親で監督といういわば二足のわらじをはく竹下さん。たいへんだが、世界を経験した五輪メダリストのセッターが監督を務めるということにも意味があるはずだ。「そうですね。私が経験してきたことは選手に伝えたい。それは私の役割だと思うから」

 午後の練習の前のインタビュー、練習のあとは? 「保育園にお迎えです」とにっこり。監督の顔から一瞬、母親の顔へ。やさしい笑みが浮かんだ。

 ヴィクトリーナ姫路の初戦は10月12日、秋田県から。ホームゲームは11月から始まる。

     ◇

【プロフィル】竹下佳江(たけした・よしえ) 昭和53年生まれ、福岡県出身。高校卒業後に「NECレッドロケッツ」に入団、翌年に全日本デビュー。平成16年、女子選手で初めてプロ宣言。2004(平成16)年アテネ五輪で5位。日本代表キャプテンも務め、08年北京五輪5位、12年ロンドン五輪で銅メダル。翌平成25年に現役を引退。平成28年に兵庫県姫路市のプロクラブチーム、ヴィクトリーナ姫路の監督に就任。2児の母。

「経験を伝えるのが私の役割だと思います」という竹下佳江さん =兵庫県姫路市(南雲都撮影)
「経験を伝えるのが私の役割だと思います」という竹下佳江さん =兵庫県姫路市(南雲都撮影)
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