PR

おいしく生まれ変われ「楠公飯」 映画「この世界の片隅に」にも登場

PR

玄米で作られた節米食の「楠公飯」。今回の取り組みでは、現代風に大幅アレンジされる(藤崎真生撮影)
玄米で作られた節米食の「楠公飯」。今回の取り組みでは、現代風に大幅アレンジされる(藤崎真生撮影)
その他の写真を見る(1/2枚)

 先の大戦で庶民の食卓にのぼった「楠公飯(なんこうめし)」を現代風にアレンジする試みが、大阪で始まっている。もともとは炒った米を一晩水につけ、かさ増しして炊いた節米食。南北朝時代の武将、楠木正成(楠公)が呼び名の由来で、正成ゆかりの観心寺(大阪府河内長野市)と大阪樟蔭女子大(同府東大阪市)などが取り組む。女子大生をとりこにする味を追求し、12月にも精進料理やスイーツとして新しいメニューを作る計画だ。(藤崎真生)

 「あっさりしてる」「意外とおいしいかも」。6月30日、観心寺に隣接する創作精進料理のレストラン「観心寺KU-RI」。同大の2、3年生約10人が玄米で作った楠公飯を試食し、健康栄養学部3年の村上真心(こころ)さん(21)は「おかゆよりもヘルシーな印象。いろいろなタイプの楠公飯を作りたい」と語った。

 楠公飯は、大戦下の広島を舞台にした平成28年公開のアニメ映画「この世界の片隅に」にも登場した。主人公のすずは作中で「まず米をよーく炒る」「水を加え、弱火でじっくり炊きあげるべし」などと解説しながら仕上げていく。水を吸って大きく膨らみ、プルプルと震える米粒が描写された。

 楠公飯のアレンジは、観心寺や民間団体などでつくる「楠公ツーリズム推進協議会」が企画。大阪樟蔭女子大が学生提案型のインターンシップとして協力した。

 学生らは4月から、正成に関する歴史を学びながら楠公飯について研究している。今後は12月を目標に、精進料理の弁当とスイーツの楠公飯メニューを開発。目指すは、女子大生が足を運んででも食べたくなるおいしい味という。

 観心寺の永島全教住職(49)は「将来、楠公飯が河内長野市の『ご当地グルメ』として育ってくれれば」と期待を寄せる。

 ■戦況悪化で暮らしの知恵

 楠公飯の存在は、第二次大戦中の新聞記事で確認できる。戦時下の暮らしに詳しい埼玉大の一ノ瀬俊也教授(日本近現代史)によると、戦況の悪化による食糧難に伴い、生活の知恵として考案されたとみられる。

 昭和18年5月13日付の新聞には、秋田県の女性が提唱したことやレシピが紹介されている。軽く炒った米1升を1升の水に一晩つけ、さらに米1升を加えて炊くとしており、水を吸わせて米2升を3升分にするという理屈だった。

 ただ、味は不評で「水くさくておいしくない」との声もあったという。

 見出しには「楠公千早城籠城の故事に倣う」ともある。楠木正成が千早城(大阪府千早赤阪村)の籠城戦を耐え抜き、反転攻勢から鎌倉幕府崩壊の機運を作ったことを引き合いにした。

 この年の2月、旧日本軍は激戦地となったソロモン諸島ガダルカナル島から撤退。10月には明治神宮外苑競技場で出陣学徒壮行会が行われるなど、戦況は悪化していた。

 一ノ瀬教授は「国民的英雄だった正成を見習い、『お国のために頑張ろう』という精神が唱えられたのだろう」と話している。

この記事を共有する

おすすめ情報