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【都市災害から守る】(下)情報難民に陥る外国人 多言語での共有・発信不可欠

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 「日本語が分からないので韓国のインターネットサイトで地震情報を集めた。とても不安だった」

 大阪北部地震が発生した昨年6月18日朝、宿泊先の大阪市内のホテルにいた韓国人の金銀我(キム・ウナ)さん(27)は当時をこう振り返る。テレビやネットで被害や交通機関の運行状況を知ろうとしたが、流れてくるのは日本語ばかり。韓国語や英語での情報をどう探せばいいかわからず、途方に暮れた。

 金さんのように、地震発生時、状況が把握できず戸惑う外国人旅行者(インバウンド)は多く、南海難波駅(大阪市)の観光案内所には、関西国際空港から到着したばかりの外国人ら200人以上が情報を求めて詰めかけた。

 大阪府などは「災害時多言語支援センター」を設置し、多言語に対応した相談窓口を設けたが、3週間で相談件数はわずか12件。府国際課の担当者は「外国人旅行者への周知が十分ではなかった」とする。

 昨年大阪を訪れた外国人旅行者は過去最多の約1200万人に上ったが、巨大地震が起こった際、こうした外国人旅行者らは言葉の壁により「情報難民」に陥る恐れがある。

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 民間の調査機関「サーベイリサーチセンター」が、大阪北部地震時に近畿地方に滞在していた外国人旅行者約150人を対象に調査したところ、地震が起きた際に希望する対応として、多言語での情報発信を求める意見が上位を占めた。

 観光庁では東日本大震災をきっかけに、平成26年から多言語で緊急地震速報や津波警報を通知するアプリ「safety tips」を提供している。アプリの開発会社によると、利用者の3割が日本人、7割がアメリカや中国などの外国人だという。

 観光庁はチラシなどで外国人に利用を促しているが、アプリの存在を知らない旅行者も多い。そこで今年4月、アプリで提供している情報を既存の観光アプリでも利用できるよう改良した。担当者は「より多くの外国人に利用してもらえるよう改良を重ねたい」としている。

 大阪府では大阪観光局を中心に外国人旅行者への情報発信の対策のあり方を議論。情報の収集・発信で各国の領事館との連携を深める必要があると判断した。

 すでに中国や韓国、インドネシアなど6カ国程度の領事館と意見交換を重ねており、災害時に情報を集約し、多言語で提供するサイトなど情報の提供と発信を一元化するプラットホームづくりを目指している。

 ただ、大阪をはじめ、各地で甚大な被害が想定されている南海トラフ巨大地震では、インフラの機能麻痺により電話やネットが接続できない状況も懸念されている。府では、そうした場合でも情報が届きやすいよう、スマートフォンに音や表示で届けるプッシュ型の発信ができるアプリの開発を進めている。

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 人による支援を強化する動きもある。

 26年に土砂災害で大きな被害が出た広島市などは、在日外国人や語学に堪能な日本人を「外国人防災リーダー」として育成。豪雨や地震といった災害に不慣れな在住外国人・外国人旅行者に対し、啓発や避難誘導のサポート役を担うことが期待されている。実際に、昨年7月の西日本豪雨では、岡山県総社市でブラジル人の防災リーダーが避難所で活躍した。

 外国人の防災対策に詳しい近畿大の片岡博美教授(経済地理学)は「自然的・社会文化的背景の違いから、地震がどんな被害や危険をおよぼすか理解できない外国人もいる」と指摘。「日本人と外国人を切り離さずに防災対策を考えることが重要だ。『安全な日本』のPRにもなり、国籍を問わず、その場に居合わせた人が協力することで被害を最小限にとどめることができる」と話している。

 この企画は加納裕子、有川真理、木ノ下めぐみ、江森梓、有年由貴子、井上浩平、小川原咲が担当しました。

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