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消防飛行艇、常時運用には最低2機 消防庁試算、初期費用380億円

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 南海トラフ巨大地震などの大規模災害を想定し、国で導入の検討が進む消防飛行艇について、全国の災害現場で機体を常時運用するには、最低でも2機の導入が必要とした調査結果を総務省消防庁がまとめたことが31日、分かった。機種は海上自衛隊の救難飛行艇「US2」の改造機が有力だが、初期費用だけでも約380億円を要すると試算しており、財政面でのハードルはなお高い。

 同庁では昨年11月までの間、広範囲に大量の散水が可能な消防飛行艇の活用に関する検討を実施。導入実績がある米、仏など4カ国の事例を参考に運用方法を検討し、導入効果や財政面などの課題を調査した。

 同庁の調査検討結果によると、1機を常に全国展開できる体制を整えるには、機体の検査期間などを考慮した上で少なくとも2機必要と指摘。US2の改造機を想定した導入の初期費用は約380億円、維持管理費は年間約20億円に上り、人件費を除く同庁の年間予算規模(約100億円)を大きく上回るという。

 諸外国では地上の安全などに配慮し、消火時の機体の飛行高度を約15~150メートルに設定。消防飛行艇1機でヘリ約4機分の散水が可能で、高度150メートルから平面地帯への消火効果を検証したところ、延焼の抑制に必要な散水密度とされる1平方メートル当たり2・0リットルを上回る同2・4リットルを散水できることが分かった。

 ただ、US2は海上自衛隊が導入しているが、車検に相当する国土交通省の耐空証明を受けておらず、消防隊員や民間パイロットが操縦することはできない。このため、自衛隊側に運航を委託するには、新たな制度的な措置が必要という。

 同庁は「飛行艇に一定の消火能力があることは認められた。調査は今後も続ける」としている。

 US2を開発した新明和工業では、平成7年の阪神大震災で製造拠点だった甲南工場(神戸市東灘区)が被災。こうした経験を踏まえ20年以降、大規模火災に対応できる消防飛行艇の開発に着手し、消防用水を格納したタンクの放水実験などを独自に進めている。

■US2 陸上だけでなく海面でも離着水できる救難飛行艇で、輸送用機器メーカーの新明和工業(兵庫県宝塚市)が製造。海上自衛隊が5機保有し、岩国航空基地(山口県岩国市)で集中運用している。世界で唯一、波高3メートルの荒波でも離着水できる上、最高速度は時速約580キロ、航続距離は約4700キロと世界最高水準の性能を有する。全長33・3メートル、幅33・2メートルで乗員11人。

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