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可視化されない女性引きこもり 手を差しのべる女子会

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スープル代表の坂原美津子さん(左)と引きこもり女子会に参加した女性たち=2月、滋賀県日野町蓮花寺
スープル代表の坂原美津子さん(左)と引きこもり女子会に参加した女性たち=2月、滋賀県日野町蓮花寺
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 さまざまな理由から生きづらさを抱える女性たちが集まって悩みを分かち合ったり、相談したりする「女子会」が全国各地で広がりを見せている。女性の引きこもりの場合は「家事手伝い」などに分類され、可視化されないケースもあるという。滋賀県日野町のNPO法人「スープル」は昨年3月から月に1度、「引きこもり女子会」を開催。代表の坂原美津子さんは「女性だけの場でないと話せない悩みも多いはず。一人ではないと実感できるような場所を提供できれば」と話している。(清水更沙)

悩みを共有

 「なんでこんなに毎日つらいんだろう」

 「世間の目がこわい」

 2月初めに日野町の古民家で行われた「引きこもり女子会」。参加者が次々に悩みを打ち明けていく。

 36歳で鬱病を発症し、現在も引きこもり状態にある女性(42)は「親は『何してるんやろ』と考えていると思います。なんとかしないといけないとは思うけど、うまくいかない」と苦しい胸の内を吐露した。

 社会復帰することが目標で、「まずは作業所で働きたい」と話すが、希望する作業所の案内の順番がなかなか回ってこないという。

 女性が「待つのが苦手でしんどい。みなさんはどうですか」と他の参加者に意見を求めると、「私も作業所を探しているが、何を基準に探していいかわからない」「作業所での仕事もやっていけるか不安」といった共感の声が相次いだ。

 一方、自治体の支援センターから紹介を受けるなどして作業所で働いている女性からは「自治体によっては作業所の紹介がスムーズにいく。場所を変えて探したり、見学可能なところも多いのでまずは訪れてみては」との助言があった。

女性のよりどころとなる場所を

 参加者は毎回、10~50代と幅広い。鬱で働くことができなかったり、発達障害を抱えて人と関わるのが苦手だったり、さまざまな生きづらさを抱える女性たちが居場所を求めて集う。

 こうした女子会は、引きこもりや不登校の当事者でつくる一般社団法人「ひきこもりUX会議」(東京都)が平成28年に始め、全国に広まっていった。

 坂原さんは9年前、社会から孤立した青年らに居場所を提供する活動などを行うスープルを創設した。特定非営利活動法人の「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が29年に行った調査によると、引きこもり状態にある人の数は男性が8割を占め、実際に坂原さんの元へ相談に訪れるのも男性が多数だという。

 そんな中、引きこもり女子会を開くようになったのは、ひきこもりUX会議が大阪府内で開いた女子会に参加した女性から、「都会以外にも同じ悩みを持つ者同士で集まる場所があれば」と言われたのがきっかけだった。

 「男性がいるところでは話しにくい、女性ならではの悩みを共感し合える場所が必要なのでは」との思いから、昨年3月から月に1度、第1土曜日に女子会を開催。参加者は口コミのほか、女子会のツイッターやホームページ、図書館や福祉施設に置いてあるチラシなどを見てやってくるという。

注目されにくく

 厚生労働省は「学校や職場に行かず、家族以外の人とほとんど交流しない」状態が半年以上続いている人を引きこもりと定義している。内閣府が28年、全国の15~39歳を対象に本人にアンケートなどを行った調査によると、引きこもりの人は全国で54万1千人(推定値)だった。このうち女性は36・7%だが、「家にこもっている女性は家事手伝いや専業主婦と言い換えられることもあり、女性の引きこもりは注目されにくい」と坂原さんは言う。

 女子会には内閣府が定める「引きこもり」の定義には当てはまらないとされる主婦や40歳以上の女性も参加する。ある40代の主婦は家では家事をこなすが、買い物などの外出はほとんど行けず、家族以外と関わりを持たない引きこもり状態が何年も続いていた。「世間が求める理想の主婦像と自分はかけ離れている」。そう思い、毎日生きづらさを感じていたという。

 また、鬱を抱えながら親の介護を続けている50代の女性は「(いつか親は亡くなるので)このままではいけないという焦燥感ばかりが募る」と悩みを打ち明けたという。

 坂原さんは「可視化されていないだけで、家族以外とほとんど接することがなく、社会から孤立している女性は世の中にたくさんいると思う」と指摘する。

世代や立場は関係ない

 「引きこもっている女性が家族から『家事手伝い』とされ、親の介護を引き受けざるを得ない状況に置かれ、親子ともに社会から孤立してしまうケースも目立ってきている」。そう話すのは「ひきこもりUX会議」代表の林恭子さん(52)だ。「引きこもりに世代や立場は関係ない。主婦や家にいる女性でも生きづらさを感じて悩んでいる人はたくさんいる」という。

 林さんによると、少なくとも全国10カ所で同様の女子会が開催されるようになったといい、「こういう場が待たれていたと痛感する。女性たちにとって安心して話せる場所がどんどん増えてほしい」と評価する。

気軽に参加して 

 坂原さんの女子会は少人数でゲームをしたり、車座になってお茶を飲んだりと和気藹々(わきあいあい)とした雰囲気で進行する。初めは緊張した表情の参加者も会が終わるころには笑みがこぼれるように。

 「一人で悩みを抱えていないで気軽に参加してもらえれば。話を聞いてもらうだけでもいいし、途中で帰ってもいい。生きづらさを抱えている人のよりどころとなってほしい」と坂原さん。仕事をやめては引きこもりを繰り返してきたというアルバイトの女性(30)は「人が怖く、生きづらさを抱えて生きてきたが、同じ悩みを持つ人の話を聞くのは参考になった。また参加したい」と話していた。

     

 内閣府「若者の生活に関する調査報告書」(28年)よると、引きこもり実態把握調査は、本人調査と家族調査の2つの方法があり、実態の数字は本人調査の結果をもとにしている。

 引きこもり状態にある本人が調査者と面会し、アンケートを記入する本人調査では、対象の15~39歳の3445万人の中から偏りがないようにランダムに5千人を抽出。その結果から全体を推定する方法で調査する。

 実際に内閣府の調査に回答したのは3115人で、引きこもりに分類されたのは49人。その割合は1・57%。3445万人に1・57%を掛け算し、約54万人という推定値が割り出された。

 質問内容は、「ふだんどのくらい外出しますか」「あなたは現在働いておられますか」など。「専業主婦・主夫又は家事手伝い」などを選択して答えると「引きこもり」とはされない。引きこもり当事者の家族が対応する家族調査では家族がこれを選択することもあり、女性の引きこもりが可視化されないとの指摘がある。

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