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埼玉と千葉で開校の夜間中学 背後にボランティアの努力

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 戦争や貧困などのために義務教育を受けられなかったり、不登校などで形式的に中学校を卒業したりした幅広い年代の人たちが学ぶ夜間中学が今春、埼玉県川口市と千葉県松戸市に各1校が開校する。国は全都道府県に設置を目指しており、2校の開校で、全国の夜間中学は9都府県の計33校になる。今回2校が開校した背景には、数十年にわたってボランティアらが自主夜間中学を運営し、公立校の設置を求めてきた努力がある。(吉田智香)

海外12カ国の生徒

 「中学を卒業したけれど学び直しを希望している人や、もっと日本のことを学びたいという外国人は多い。公立校ができてひと安心」。こう話すのは「埼玉に夜間中学を作る会」の野川義秋代表(70)。埼玉には夜間中学が1校もなく、待望の開校だ。

 4月に川口市に開校するのは「川口市立芝西(しばにし)中学校陽春(ようしゅん)分校」。当面は統合により廃校となった旧市立高校の施設を校舎として利用し、3年目からは、旧小学校の敷地に建設する新校舎に移る計画だ。

 県内に住む16歳以上で、一定の条件を満たす人なら入学できる。市教育委員会によると、面接を経て入学が決まったのは10~80代の80人(3月1日現在)。日本人は36人で、外国人が過半数を占める。外国人の出身国は、20人の中国を筆頭にベトナム▽韓国▽トルコ▽アフガニスタン▽ブラジル▽ペルー▽ミャンマー-など12カ国と多彩だ。

民間運営30年

 同校が開校にこぎつけたのは、野川代表らが30年以上にわたってボランティアによる自主夜間中学を運営してきたことが大きいという。

 同会は昭和60年に発足し、自主夜間中学を始めた。年齢や国籍に関わらず生徒を受け入れ、週2回、平日夜に授業を行っている。無償で実施しており、指導するのは元教員らのボランティア。国語や数学を教えているほか、外国籍の生徒には日本語を基礎から教えることもある。発足時の生徒は日本人ばかり6人だったが、現在は外国人を含む約70人にまで増えた。

 同会は自主夜間中学を運営しながら、行政に公立校の設立を求める要望を重ね、署名活動をするなどしてきた。野川代表は「全国で夜間中学のニーズはあるはずで、分校はその先駆けになってほしい」と願う。

受け皿多様に

 夜間中学は月曜から金曜までの週5日、夜に授業が行われ、学習指導要領に基づき9科目を学ぶ。民間のボランティアによる自主夜間中学が週に数回や月数回の開催にとどまり、科目も限られるケースが多いのに対して、授業時間がより多く確保される。

 指導するのは教員免許を持つ教員で、卒業時には中学校の卒業資格が得られるため、努力次第では高校や専門学校への進学も可能。公立校ができるメリットは大きい。

 平成28年には教育機会確保法が成立、不登校などで中学校に通わないまま卒業した人にも門戸が開かれた。文部科学省は各都道府県に少なくとも1校設置するよう促している。

 「夜間中学が、学びたい人の気持ちを受け止める場所になってほしい」。今春、県内で2校目となる「市立第一中学校みらい分校」が開校する千葉県松戸市で、昭和58年から自主夜間中学を運営している「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会」の榎本博次代表(69)は話す。

 榎本代表によると、同会の自主夜間中学に通う約60人からみらい分校に入学するのは2人にとどまった。「毎日通うのは難しい」「アットホームな環境で勉強したい」などの理由で、自主夜間中学に残る生徒が多かったという。

 一方、市教委によると、みらい分校の新入生は外国籍も含む25人。夜間中学は、自主夜間中学に在籍していない人にもニーズがあるほか、さまざまな事情を抱えた生徒には多様な受け皿が必要であることが浮かび上がった。

 榎本代表は「公立校ができても、学びたい人がいる限り活動を続けていきたい」としている。

 夜間中学 公立の夜間中学は、戦争や貧困などで中学校に通えなかった人に義務教育の機会を確保しようと設置された。文部科学省によると、現在は全国8都府県に31校あり、生徒数は計1687人(平成29年7月現在)。近年は、日本で働く親とともに来日した10~20代の若者が入学するケースも増え、外国籍の生徒が約8割を占める。

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