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流出先は海南島、1回数百万円で取り引き

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和牛受精卵などの流出元の「松平牧場」で飼育されている牛=10日、徳島県吉野川市鴨島町
和牛受精卵などの流出元の「松平牧場」で飼育されている牛=10日、徳島県吉野川市鴨島町
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 大阪府警に逮捕された松平哲幸容疑者は計5回、いずれも同じ中国・海南島の牧場関係者の中国人らから依頼を受け、受精卵などを流出させたとされる。うち4回は実際に中国側にわたったとみられ、心配されていたわが国の遺伝資源の流出が現実的なものになった。「良い繁殖牛をつくると有名で、種もたくさん持っていた。やっと和牛の価値が高まってきたのに、すべてを台無しにするような不正行為になぜ手を染めてしまったのか」。松平容疑者を知る徳島県内の畜産農家の男性は憤る。

 府警などによると、松平容疑者は数十年前から繁殖牛の飼育を始め、経営する牧場は、法律で定められた受精卵などの取り扱い施設となっていた。別の農家の男性は「(松平容疑者は)畜産農家として和牛の遺伝子を守ることの大切さは分かっているはずなのに、信じられない」と話す。

 松平容疑者が受精卵や精液を不正に販売するようになったのは数年前から。前田裕介容疑者が経営する大阪府八尾市内の焼き肉店まで松平容疑者の知人が運搬し、前田容疑者が知り合いの小倉利紀容疑者に指示、大阪市住之江区の港からフェリーで中国・上海に運んでいたという。受精卵などは1回数百万円で売られたとみられる。

 これまでに中国に運ばれたのは計5回。逮捕容疑となった昨年6月の運搬時には、中国の税関で検疫を受けていないことを指摘されて持ち込めず、不正輸出発覚につながった。だが、それまでの4回はチェックをすり抜け、中国国内に入り込んでしまっていた。

 農林水産省によると、牛肉の輸出量は平成29年の1年間で2700トン(約190億円)。受精卵などが中国に入ってしまえば、現地でも日本と同様の上質な牛肉を作ることが可能となり、畜産業界に大きな打撃を与えるのは必至。畜産業の業界団体関係者は「和牛の遺伝資源が海外に流出すれば自らの首を絞めることにつながるため、畜産農家が不正輸出に加担することはないと考えられてきた」と頭を抱える。

 現状では和牛の遺伝資源の輸出そのものを禁じる法律はなく、府警は今回の事件で、検疫を受ける義務を怠ったとする同容疑を適用した。府警は、何者かが松平容疑者と中国人との間をつないだ可能性があるとみており、松平容疑者の取り調べなどを通じて日中間で行われた技術流出事件の全容解明を進める。

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