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【エンタメよもやま話】中国人が「ホワイトモンキー」と呼ぶ白人モデルたち

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1月下旬、春節の連休を前に、北京駅で帰郷のため荷物を運ぶ男性(AP)。昨年後半から早々と里帰りする出稼ぎ労働者が相次ぎ、失業との関連が指摘されている
1月下旬、春節の連休を前に、北京駅で帰郷のため荷物を運ぶ男性(AP)。昨年後半から早々と里帰りする出稼ぎ労働者が相次ぎ、失業との関連が指摘されている

 今週ご紹介するエンターテインメントは、春節(旧正月)の大型連休(2月4~10日)で多くの観光客が日本にも押し寄せた、あの国のお話でございます。

 みなさん「イエローモンキー」という言葉をご存じだと思います。黄色人種に対する蔑称(べっしょう)、人種差別の言葉。人権意識の高まりを受け、ほとんど耳にすることはなくなりました。

 ところが最近、海外では、「イエロー」ではなく「ホワイトモンキー」という言葉が物議を醸(かも)しているというのです。

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■「筋肉ムキムキの男性に、●●な仕事…」

 海外の主要メディアのサイトを巡回していて、以下の記事を見つけた時には驚きました。

 1月23日付で香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)や英大衆紙サン(いずれも電子版)などが伝えているのですが、最近、中国の地方都市で違法就労する白人で、ムキムキの筋肉を誇示するといった性的なアプローチをしたり、見せ物のような扱われ方をしたり、役者のように別人格を演じたりする男女モデルが現地で「ホワイトモンキー」と揶揄(やゆ)されているというのです。

 SCMPなどによると、上海や広州といった大都市で働く外国人は、就労ビザを持ち、現地の大企業などで働いていますが、地方都市ではこうした違法就労の白人たちが「ホワイトモンキー」と揶揄されているといいます。こうした白人たちは現地で「モンキー・ショー」と呼ばれる企業のプロモーションイベントに登場し、撮影されているのだそうです。SCMPは「彼らは基本的に、企業マーケティングの小道具扱いにされている」と説明しているようです。

 中国にやってきて日が浅く、就労ビザはないものの、手っ取り早く仕事がしたい人には好都合。そして、彼らを“人寄せ”などに使いたい現地企業との仲介役は、英語を話す現地のモデル・エージェントが担当しているようで、2~3割の手数料を手にするという仕組みだそうです。エージェントは中国の中小企業から彼らを守り、住む家の家主や銀行との取引も行うといいます。

 エージェントの一人、アリスさんは、SCMPなどに、自身の中国名については口を閉ざしたものの、ビジネスの概要については明かしています。

 それによると、彼女が扱っている白人のほとんどはロシア人かウクライナ人で「彼らのほとんどが中国語を学ぶための学生ビザでやってきていますが、決して授業に出席しません」「こうした国の人たちは、西ヨーロッパ人や米国人より扱いが簡単で、要求も厳しくなく、タフなんです」などと述べ、こう説明しています。

 「中国人(のクライアント)は、可能な限り外国人に見える外国人を望んでいます。白い肌、ブロンドの髪、青い目、そしてキュートな丸顔で背が高い人(白人)を望んでいます。とりわけ、筋肉ムキムキの男性にはトップレスの仕事がたくさんありますよ」

 アリスさんは同じSCMPなどに「私が知っている別のエージェントは、中国で開かれる国際フォーラムで歌を披露するという名目で、東南アジアの各国から10人の女性を調達したことがあります」とも話しました。

■「白人モデルは●エロ…じろじろと…」

 そんな彼らに支払われるギャラは「1日当たり800元~1000元(約1万3000円~1万6000円)」で「女性がビキニを着た場合や、男性がトップレスの場合、追加で数百元が支払われます」。仕事は「長くても約5時間、ポーズを決めて立ったり、キャットウォークしたりするだけ」とのこと…。

 大抵は大型のショッピングセンターで、衣料品や化粧品メーカーの新商品や、不動産デベロッパーが手がける新築マンションのプロモーション・イベントに登場するようです。そこで男性モデルは筋肉ムキムキのトップレス姿、女性モデルはビキニ姿で、性的なアプローチを感じさせる“お遊び”をしたり、景品が当たる抽選会が催されたりするというのです。今や北京や上海でこんな企業プロモーション・イベントを行うと嘲笑の的になりますが、地方都市だと、すらりとした長身で金髪の白人の男女がこうしたイベントに登場すると、その洗練された雰囲気が人気なのだといいます。

 そして、猛烈なスピードで経済発展を遂げる中国では、こうした「ホワイトモンキー」を使った企業のプロモーション・イベントや、「怪しいたくらみ」が全土に広がっているというのです。

 「ホワイトモンキー」として働き、数年前、ロシアに帰国した男性、ディミトリさんは、自身の経験を前述のSCMPにこう語りました。

 「いろんなイベントを経験しました。スイスの化粧品を宣伝するドイツ人医師や、自身の作品を販売するイタリアの高級バッグのデザイナーも演じました。ギャラは良かったですよ。ショッピングセンターでピエロにふんしたときは、4時間の仕事で2500元(約4万円)でした

 そしてこう付け加えました。「シリアスに考えなければ、楽しい経験でした。普通の外国人が見られない場所にも行けたので。真冬の四川省のホテルの外で、(薄い)スーツ姿で仕事をして凍えそうになったことと、真夏の広東省でウールのスリーピースのスーツ姿で仕事をしたこと以外、ひどい経験はなかったですね」

 ディミトリさんは、2014年4月に起きたウクライナの内戦の影響で、仕事を求める若いウクライナ人が中国にあふれたため「ホワイトモンキー」の仕事をやめ、母国に帰国したといいます。帰国の理由についてSCMPに「私は金髪ですが、(内戦以降、中国にやってきた)彼らは私より背が高く、若かったので、これ以上、良い仕事を手に入れることができませんでした」と述懐しました。

 また、別の元「ホワイトモンキー」の匿名男性は、前述のサンに、こう明かしました。

 「果てしなく広大な中国では、めったに外国人と会いません。そのため、彼らはいまだに特別な地位の象徴の一つと見られています。(われわれ)外国人は、時々、単に地元の人々にじろじろ見られるためだけに、偽の家に座り、ギャラを受け取ります」

 「最も奇妙な仕事のオファーの一つは、ある米国の学生が米大統領の密使を演じ、現地のビジネス複合体を訪問するというものでした。この計画の背後にいる企業は、彼らの新しい開発が、ホワイトハウス(米政府)も注目するほど壮大なものだったというイメージを作り上げたかったのです。彼らはこのたくらみをやってのけるため、米国務省の偽の証明書を偽造することさえ計画していたのです」

 エージェントのひとり、アリスさんはSCMPに、中国全土を旅する外国人なら、月に2万元(約32万6000円)を稼ぐことができると話しているようです。とはいえ、最近は中国当局がこうした違法就労している「ホワイトモンキー」の取り締まりを強化しているともいいます。多くの「ホワイトモンキー」は逮捕され、学生ビザは取り消され、母国に送還されているようで、SCMPは「こうしたモンキービジネスはもうすぐ、中国で過去のものになるだろう」と結んでいます。

 金髪の白人という欧米風のモデルを起用すれば、企業イメージが向上するとあって重用される「ホワイトモンキー」。しかし、差別的で侮辱的な呼び名と仕事の内容に、欧米人はなぜ怒らないのでしょうか。   (岡田敏一)

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 【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。

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