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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】敵も味方もみな仲間 呉越同舟トレの「?」

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6月のプロ野球交流戦で談笑する巨人・菅野智之(右)とオリックス・西勇輝=京セラドーム大阪(撮影・矢島康弘)
6月のプロ野球交流戦で談笑する巨人・菅野智之(右)とオリックス・西勇輝=京セラドーム大阪(撮影・矢島康弘)

 「呉越同舟トレ」に現代の選手気質が見えてくる。国内フリーエージェント(FA)宣言した西勇輝投手(28)は阪神移籍を発表。そのタイミングで巨人・菅野智之投手(29)と年末年始、ハワイで合同自主トレーニングを行うことも明らかにした。「菅野さんが向こうにいるので、合流してやります」と西は話した。

 菅野とは2015年の侍ジャパンで意気投合し、そのオフから3年連続で合同自主トレを行っている。今まではオリックスの主戦投手と巨人のエースという関係。セとパのリーグの違いもあって注目を集めなかったが、西が阪神に移籍。伝統あるライバル球団のエース同士が一緒に自主トレを行う流れとなり、注目を集めることになった。

 「呉」「越」とは中国の春秋戦国時代に実力伯仲の好敵手だった2つの国。その不倶(ふぐ)戴天(たいてん)の敵同士が1つの舟に乗って、仲良くしているのを諷(ふう)した言葉が呉越同舟だ。仲の悪い者同士でも同じ災難や利害が一致すれば協力したり助け合ったりしたりするたとえだが、菅野と西は所属球団はライバルでも本人同士は仲が良さそうなので、呉越同舟といえるのかどうか微妙だ。

 思わず村山実さんを思い出してしまった。昭和から平成に時代が変わるころ、阪神監督だった村山さんは対巨人戦になると異様な敵愾(てきがい)心を燃やした。現役時代、悲壮感あふれるザトペック投法で長嶋、王と対決してきたミスタータイガースは監督時代も打倒巨人に燃え盛った。

 東京ドームでの巨人戦では顔にファンデーションを塗った。連戦の疲れで目の下にクマができていて、それを選手に見られると「監督が疲れていると思われたら全軍の士気に関わる」。“熱血化粧”まで施してYGマークと戦った。そんな村山さんが西と菅野の合同自主トレを聞いたらどんな顔をするだろうか…。

 今オフ、中日と契約した伊東勤ヘッドコーチはロッテ監督時代、選手気質の移り変わりに戸惑っていた。自軍の選手と他球団の選手の仲が良すぎて困ったのだ。スマートフォンのアプリ「LINE」で複数の選手が常に連絡を取り合っていて、「選手ミーティングが終わった後にLINEで連絡を取っている選手を見つけて、もしかしたらミーティングの内容が相手に漏れているのでは…と疑ってしまったわ」と漏らしていた。西武で常勝軍団を築いた自らの現役時代には考えられない現象だった。

 そういえば、球場でも昔では考えられない光景がよく見受けられる。ビジターの選手が球場入りし、グラウンドに出てくるとホームのコーチや選手とアチコチで仲良く談笑している。これから数時間後に戦う者同士が、スタンドで練習を見つめるファンの前で談笑しているのだ。

 時代は昭和から平成を経て、来年は元号が変わる。時代の移り変わりとともに人々の暮らしや感覚も変わっていく。今回の話も若い選手から言わせれば「オッサン、うざいこと言うな」になるのかもしれない。でも、時代が移っても変わらないでほしいものもある。試合に入れば全てをリセットして戦いに挑む…。今の若者は「割り切り世代」と自分自身を納得させるしかないのだろうか。(特別記者)

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