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【取材の現場から2018】西日本豪雨(1)町が水没 戻らぬ明かり

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西日本降雨で被災した住宅。まだ灯はともらない=岡山県倉敷市真備町
西日本降雨で被災した住宅。まだ灯はともらない=岡山県倉敷市真備町

 岡山県倉敷市真備町(まびちょう)の記者の実家は7日7日朝、2階の屋根を残して水没した。岡山県に大雨特別警報が出た翌日だった。まさかの連絡に慄然とした。地球温暖化に伴う気温上昇がこのまま進めば、洪水などの自然災害が多発するとされる。豪雨災害は、ひとごとではない時代に突入している。

 真備町地区を流れる小田川。勤務先の和歌山県から急遽(きゅうきょ)帰郷し、決壊した堤防近くから見渡した町は、濁った湖にしか見えなかった。翌8日になっても実家を含め家屋の多くが水没したままだった。小学校の体育館などに設けられた避難所には高齢者世帯も多かったが、水が引いてからは早朝から家の片付けに出かけていた。

 「たぶん、家は壊すしかないと思うけど、(片付けに)行かないと落ち着かない」。泥水に浸かったものの、長年住み慣れた家への愛着は強い。どの被災者も酷暑の中、汗だくになりながら作業し、避難所に戻ると疲れ果てて眠り込んだ。母と妹と3人で暮らす避難所から実家の片付けに通ったが、親世代の疲れ切った姿を見ると切なくなった。

 岡山県に異動した9月には、全半壊家屋の解体・撤去を公費で行う公費解体の申請が始まり、復旧事業は次のステップに移った。倉敷市によると、公費解体の申請は今月6日時点で970件。解体工事は11月から順次始まり、来年3月末の締め切りまでに申請は増えるとみられる。

 市は来年9月末までに解体工事を完了させる計画を立てる一方で、多くの被災者は今も空きアパートなどに入居する「みなし仮設住宅」や仮設住宅などに身を寄せている。同町箭田(やた)の「真備総仮設団地」に住む高齢夫婦は自宅を解体中だが、再建のめどは立っていない。

 同団地に一人で暮らす70代男性は「水害適用の火災保険に入っていたから自宅を改築する方針だが、保険に入っていない人も多いと聞く。手放しで喜べない」と複雑な心境を漏らした。年齢や資産、保険の加入の有無。それぞれに事情は違う。前向きに歩める人、あきらめざるを得ない人。現実は容赦ない。

 被害から5カ月以上経過したが、真備町はボランティアの手がまだ必要だ。11月の休日、被災家屋の壁はがしなどに参加したが、持ったことがないバールを使った作業には四苦八苦した。情けなさと同時に、懸命に作業するボランティアに対し被災者の一人として改めて感謝の気持ちがわき上がった。

 スーパーや飲食店などの商業施設、事業所などは徐々にではあるが、再スタートを切っている。だが、住民の多くはまだ戻れていない。実家は鉄骨造りだったことが幸いして、改築が可能だった。来春にはもう一度住めるようになるが、師走の夜に消えたままの家々の明かりが今後、どこまで戻るか。復興への道のりはこれからだ。(中村宏二)

 西日本豪雨 6月29日に発生した台風7号や前線の影響で、西日本を中心に記録的な大雨となり、各地に大きな被害をもたらした。10月9日現在の内閣府のまとめでは豪雨による死者は224人、行方不明者は8人、負傷者は427人に上った。床上浸水以上の被害を受けた住宅は広島、岡山、愛媛3県を中心に全国で計約3万棟。うち6695棟が全壊、1万719棟が半壊した。岡山県では今月11日現在、みなし仮設住宅への申込件数が3298件に上っている。このほか建設型仮設住宅には倉敷市で計252世帯610人、総社市では計45世帯96人が入居している。

 平成30(2018)年も残りわずか。喜怒哀楽が渦巻いたニュースの「現場」を取材した記者が当時の思いとともに振り返る。

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