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震災から20年超、神戸の「顔」の再開発、動き出すのか

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 神戸の顔となる三宮・元町エリアの再整備計画が、なかなか進まない。阪神大震災から20年以上が経過した神戸だが、若者を中心に人口流出が続き、訪日外国人観光客(インバウンド)の取り込みも大阪や京都など他都市と差が開くばかり。この現状を打開すべく神戸市や兵庫県が事業を進める。だが、神戸市が三宮再整備構想を明らかにしてからすでに3年以上が経過。県が年内にまとめるとしていた元町の基本構想策定も越年が決定した。地元経済界からは「とにかくスピードアップしてほしい」と危機感を訴える声が上がっている。(岡本祐大)

神戸市が進める三宮再開発の中心となる三宮交差点=同市中央区
神戸市が進める三宮再開発の中心となる三宮交差点=同市中央区

取り残された三宮

 「大阪・梅田の再開発はかなり大規模に行われ、兵庫県でも姫路市の駅前はずいぶんと変わった。しかし、三宮は取り残されている」

 神戸商工会議所の家次恒会頭(シスメックス会長兼社長)は11月5日の定例会見で、神戸市が進める三宮再整備計画の遅れをこう指摘した。念頭には、市が三宮周辺再整備の基本構想を平成27(2015)年9月に発表してからすでに3年が経過していることがある。

 基本構想を具体化させるため、市が設置した有識者委員会の初会合が開かれたのは発表から約2年後の29年7月。一部施設の事業計画や想定予算などは公表されているものの、スケジュールや総事業費の全体像はいまだ明らかになっていない。

 有識者委のメンバーを務める神戸商議所の植村武雄副会頭(小泉製麻会長)は「中身も大事だが、一日でも早くやることはもっと大事だ」と強調し、「時間ばかりかかっているのは経済人にとっては一番無駄なこと」と不満をあらわにした。

民間主導は活発

 神戸市の基本構想では、JRや阪急、阪神、市営地下鉄など三宮にある6つの駅間の動線を結び、バスターミナルを集約。南北の幹線道路が通る三宮交差点周辺を「三宮クロススクエア」と名付け、歩行者と公共交通優先の空間づくりを掲げている。

 市が主導する再整備に合わせて民間の動きは活発だ。阪急電鉄は神戸三宮駅直結の「神戸阪急ビル東館」を地上29階地下3階建ての複合高層ビルに建て替える。2021(平成33)年の完成を目指しており、商業施設やオフィスのほか、上層階にはホテルが入る予定だ。また、JR西も三ノ宮駅の新駅ビルの検討を進めており、今年発表した中期経営計画では大阪、広島に並ぶ「3大プロジェクト」に位置づけた。

完成後の神戸阪急ビル東館のイメージ(神戸市提供)
完成後の神戸阪急ビル東館のイメージ(神戸市提供)

 ほかにも駅前の象徴だった百貨店のそごう神戸店が来年10月に「神戸阪急」へ生まれ変わるなど、大型構想が着々と進んでいる。

 これに対し、市は基本構想を具体化させる基本計画を29年度中にまとめる予定だったが、公表されたのは今年9月に入ってからだった。久元喜造市長は「スピード感が欠けるとの指摘がある」とした上で、「必要な修正を行ったため、策定時期を少しずらすことになった」と釈明した。

県庁を神戸外に?

 一方、兵庫県庁のある元町エリアは、県が本庁舎建て替えと周辺再整備計画を進めている。井戸敏三知事は今年7月の定例会見で年内に基本構想を取りまとめたいとの意向を示した。

 このときに披露された井戸知事のアイデアは、老朽化が進む県庁1号館と2号館、そのほかの県有施設を含めた総敷地面積2万平方メートルを超える部分の集約を進め、余った土地には外資系ホテルを想定した民間事業者を誘致。早ければ来年度にも設計を開始し、新庁舎は約7年後、民間施設は約10年後の完成を目指すというものだった。

 しかし、元町の整備計画は早くもスケジュールに遅れが出ている。8月に開かれた学識経験者や財界関係者らによる有識者委員会の初会合は冒頭から紛糾。委員からは「県庁をこの場所以外にする発想はないのか。県南部への一極集中をどうするのか考える必要がある」という「県庁所在地移転案」まで飛び出した。

 こうした意見に配慮し、11月29日の第2回会合では県庁を神戸市外に移転した際の試算や、本庁舎の建て替えをせずに耐震補強した場合の想定も資料に盛り込まれた。

 結局、年内にまとめるとしていた基本構想は「年度内」へと後退。跡地の民間施設の建設場所も複数案提示され、井戸知事は「話が詰まっていない」と認めざるをえなかった。

出遅れる外国人対策

 経済界からスピードアップを求める声が出るように、神戸を取り巻く環境は厳しい。「都市の活力のバロメーター」(久元市長)である人口は神戸市、兵庫県ともに若い世代の進学や就職を中心に首都圏などへの転出超過が続いているからだ。

 総務省がまとめた人口移動報告によると、神戸市は4年連続、兵庫県は6年連続で他地域に人口が転出。その数は昨年だけでも神戸市が1507人(政令市で3位)、兵庫県が6657人(都道府県で2位)だった。

 また、県内の外国人観光客数も低調だ。県は平成32年までに年間300万人にする目標を掲げているが、昨年は158万人。大阪府(1110万人)や京都府(743万人)との差は広がる一方で、奈良県(209万人)の背中も遠い。

 井戸知事はかねて県庁建て替えにともなう外資系ホテル誘致について、「神戸市内に五つ星ホテルをつくらないといけない。外国人観光客を考えると圧倒的に不足している」と危機感を募らせ、2025年国際博覧会(万博)の大阪開催に間に合わせることに意欲を示していた。しかし、県が作成した資料では県庁を建て替えた場合は最短でも2030年の完成になる。

神戸市が進める三宮再開発の中心となる三宮交差点=同市中央区
神戸市が進める三宮再開発の中心となる三宮交差点=同市中央区

 「三宮や元町は再整備で21世紀型にしないといけないが、まだ昭和の香りが残っている」(神戸商議所の家次会頭)という状況のまま、来年以降のラグビーワールドカップ(W杯)や東京五輪、大阪万博などのビッグイベントを迎えることが現実味を帯びてきている。五輪や万博のタイミングは一度逃すと次は50年、100年先だ。今が千載一遇のチャンスなのだが…。

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