PR

【橋本奈実の芸能なで読み】宝塚歌劇団星組トップ、紅ゆずると座付き演出家、小柳奈穂子氏に学ぶ“1行の要約”

PR

台湾公演への意気込みを語る星組トップスター、紅ゆずると演出家の小柳奈穂子氏
台湾公演への意気込みを語る星組トップスター、紅ゆずると演出家の小柳奈穂子氏

 取材をしていると、「話し上手だな」と思う方がいらっしゃいます。なかでも、先に「結論」や「要約」を語る方の話は、とても印象に残ります。「まず結論、それからその理由」というのは、ビジネスシーンでの会話でもよく言われることですよね。

 台湾公演「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀(とうりけんゆうき)」「Killer Rouge/星秀☆煌紅」の開幕前、大阪市内で主演の星組トップ、紅(くれない)ゆずるさんと、「-東離劍遊紀」の演出を務める座付き演出家の小柳奈穂子さんの取材会がありました。

 大阪出身の紅さんは、おそらく無意識に、テンポよく「結論から語る」話し上手です。取材で台湾公演の演目を国内で上演したときを振り返り、「私、大阪公演で右手つったんですよ」と言った後、「ずっと(キセルを持っていて)重くて」と続けた。先に「手がつった」と言われると、「え、なんだろう?」と思わず、話に引き込まれますよね。

 また、ショーでおなじみの“濃いキャラクター”にふんしてトークをする際、現地の言葉を話すかを問われると、まず「紅子(べにこ)は屈しない」と言って笑わせてから、「大阪弁でいきます」と語りました。言葉選びも秀逸です。

 “短い要約”。それは漫画やゲームなどを原作とした“2・5次元ミュージカル”を得意とする座付き演出家の小柳さんの、作品作りの要でもあります。

 小柳さんが手掛ける原作ものには登場人物が多い。そこで物語が散漫にならないため、必ず最初に「1ライン・プロット(1行の要約)」を立てる。それを軸にエピソードを挟み込んでいくそうです。

 今回の「-東離劍遊紀」は、虚淵玄氏によるオリジナルストーリーの、台湾の伝統的な人形演劇「布袋劇」が原作。立てた1ライン・プロットは、『主人公にお友達ができる話』だ。

 ヒロインを守るクセのある仲間たちの1人で、主人公の凜雪鴉(りんせつあ)は謎の人物。「彼は何でもできる人であるがゆえに、人生に退屈していた。でも、ある人に興味を持つことで、生きる意味を見つけていく」と小柳さん。

 人気長編漫画が原作の宙組公演「天は赤い河のほとり」の場合は、『なぜ小国がエジプトを追い返せたか、という話』。「それは、現代から来た女の子の力-鉄の発見です。そこで内政を押さえ込めば勝てるという軸です」

 国民的人気漫画を原作にした花組公演「はいからさんが通る」は、『女性が自立する話』を軸に。ヒロインの紅緒は、別れなどの経験を経て、最後に自分の人生を自分で選ぶ。「最初は主人公に好きだと言われたヒロインが、自分から彼に好きですと言った時点で終了できる、ということです」と話していました。

 さて、そもそも、なぜ小柳さんが手掛ける原作ものの作品には登場人物が多いのか-。そこには、深い理由がありました。ちょっと前振りが長くなりますが、お付き合いください。

 2次元作品が好きな小柳さんは、7、8年前から、「2次元作品の女性向けのコンテンツを、女性ファンの多い宝塚にどのようにつなげられるか」を考えていたそうです。

 というのも、男性主体の恋愛物語の場合、主人公をとりまく登場人物は女性が多くなり、男性は友人かライバルになりがち。ですが、女性向けの“乙女ゲーム”のように、1人の女性を守る話は、周囲にさまざまなタイプの男性が7、8人は存在します。

 「その中の1人をメーンに視点をひっくり返し、書き換えたらどうか。そうすれば、男役にもたくさんの個性的な役が用意でき、女性のお客さまも感情移入しやすいのではと」

 漫画などの原作ものは、長編も多いです。ですが、小柳さんは「できる限り、最初から結末まで物語を描き切ること」にこだわっているそうです。「その方が多くの役柄を作ることができるから」だそうです。

 つまり、登場人物が多く、ヒロインをベースにしつつ、主人公は男性という物語を成立させる上で、軸がぶれぬよう、「1ライン・プロット」を立てているわけです。

 ちなみに小柳さんは、たとえば、Aさんのファンから「Aさんの出番は少なかったけれど、お話に感動した」と言われるより、「原作のあの場面はなかったけれど、Aさん、格好良かった」と言われるような作品を作ることが身上。

 「宝塚の最大のコンテンツは役者なので。役者の魅力を最大限に生かすのが、座付き演出家の仕事」

 明確な信念。小柳さんは「世界に向け、次代の宝塚の大きなコンテンツとなる2・5次元の担い手」とも言われます。が、ご本人は「まず、宝塚が継続していくことが一番。そのために役立つことをしたいので。もし“2・5次元”が邪魔になるなら、やらなくていいというスタンス。何より、この場所を次代に渡せるようにすることが大切」と言い切っていました。

 台湾公演は台北市での公演を終え、11月2~5日、劇団初となる高雄市で行われます。小柳さんは、台湾公演の目的も1つに絞っていました。「宝塚のファンを1人でも増やそうと。まず宝塚の美しさを出したいなと。ただ、見にきていただかないといけないので。現地でよく知られる原作をと思いました」

 会話も作品も信念も-、何事もゆるがぬ軸が大切、と思った次第。-文章もそうですよね。“ブレブレ”の長文ですみません。次回は、少しでもこの“学び”を生かせたらと思います。

この記事を共有する

おすすめ情報