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【橋本奈実の芸能なで読み】「コーラスライン」演出・振りつけ・再構成手がけるバーヨーク・リーさんの金言

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ミュージカル「コーラスライン」のオリジナルキャストで演出や振付なども手がけるバーヨーク・リーさん=大阪市北区(柿平博文撮影)
ミュージカル「コーラスライン」のオリジナルキャストで演出や振付なども手がけるバーヨーク・リーさん=大阪市北区(柿平博文撮影)

 取材をしていると、多くの金言をいただきます。

 先日、元宝塚歌劇団宙(そら)組トップスターの朝夏(あさか)まなとさんにお会いしました。30日まで東京で上演、その後、大阪など全国を巡る、朝夏さんにとって退団後、初主演ミュージカル「マイ・フェア・レディ」の取材です。

 ノースリーブにスカート姿で現れた合同会見はやや緊張の面持ちでした。が、単独取材ではいつもの太陽のような笑顔に。写真撮影を見ながら、思わず「すごくかわいらしい」というと、かなり照れながら「あざすっ(ありがとうございます)」と茶目っ気たっぷりに言った姿が、本当にかわいらしかったです。

 さて金言は、朝夏さんのお母さんの言葉です。「母は何事にも妥協を許さなかった。やるなら、やりきりなさいと。そして常に謙虚でいなさい、と言われ続けていました」(朝夏さん)。厳しくも優しい母の教えが宝塚での生活で生きたという朝夏さん。

 なかでも記者が印象に残ったのが、新人公演初主演の発表があったときのエピソードです。その日は、日本舞踊の試験の日でもありました(宝塚では入団後も1年目、3年目、5年目のに試験があります)。

 「どうしよう、どうしよう、大変だという風になって(笑)。母にメールをしました」。母からの返信は明確だった。「とりあえず今は日舞の試験。目の前のことに全力を尽くしなさい、という内容のメールが来て。そんな先のことを今考えても仕方がない。とにかく日舞だと。それは、すごく覚えています」

 すごく心に響きました。やらねばならないことが重なったとき、心配や焦りで今すべきことが後回しになってしまいがちなので。その後、記者もこの言葉を思い出し、すべき事柄の優先順位を考えるように心掛けています。

 時を同じくして、ブロードウェー・ミュージカルの傑作「コーラスライン」の演出・振りつけ・再構成を手掛ける、バーヨーク・リーさんからも金言をいただきました。初演メンバーでもあるリーさんは、70代の今も出演メンバーとともに体を動かし、エクササイズをこなす。「振り付けの際は、全部自分で踊って見せていますよ」とほほ笑む。

 美しく年を重ねる秘訣は「たくさん笑って、たくさん食べ、たくさんの人と過ごす。そしていつも踊っています。何事に対しても止まっちゃだめ。やり続けることです」と明快だ。

 取材者をも元気にさせるリーさんのパワー。取材を終え、「お話を聞いていると、自分も踊りたくなりました。でも、それにはもっと痩せなきゃ」と冗談まじりに言った。すると、間髪おかずに「ジャスト・ドゥ・イット!」と言われた。

 「すぐやりなさい。待っていたらダメ。何事もやりたいと思ったら、とにかくやれ、ですよ。みんなに言っているんですが、待っていたら、ただ時間が過ぎるだけ。今やらなきゃね」

 これも響きました。今やらない言い訳しているだけなんですよね。「天高く…」の季節到来。このコラムでもずっと言い続けている事柄を先延ばしにせず、「今」取り組まねば、と心より思いました。「今」は(笑)。

 --と、いうところでコラムをしめようと思っていた折、樹木希林さんの訃報を知りました。単独でお会いしたのは一度きりですが、非常に印象的な方でした。すでに終活を始められ、物を処分されているところで、「贈り物も、気持ちだけいただくわ、と言って、送り返すんです」とおっしゃっていました。

 驚いた表情の記者に、「それで、ダメになる人間関係ならそれまでなのよ。物も人も、自分にいらないものは捨てるの」とも。文字にすると強い言葉ですが、希林さんの穏やかな口調で聞くと、納得でした。

 とはいえ、まだまだ、その域には達しておりません。いまだ紙袋をとっておいてしまい、何年もかけていない人のアドレスも消せません。ですが、金言を胸に少しずつ自分に必要なものだけで過ごせるようになりたいと思っています。ご冥福をお祈りいたします。

橋本奈実(はしもと・なみ) 橋本奈実(はしもと・なみ) 産経新聞大阪文化部記者。サンケイスポーツ大阪編集局運動部でゴルフやサッカー、同文化報道部で音楽、宝塚歌劇団担当などを経て現在、映画、歌劇などの取材を行っている。

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