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【この本おもろっ】「仏教は悩み多き人を救う」清風校長が密教経典を紹介、ダライ・ラマ14世との交流も

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「仏教は悩み多き人を救う」清風校長が密教経典を紹介、ダライ・ラマ14世との交流も

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「秘密集会タントラ概論」を出版した清風中学・高校の平岡宏一校長=大阪市天王寺区 1/2枚

 仏教の流れの一つで、チベット密教の中でも最上位の一つとされる「秘密集会(しゅうえ)タントラ」の経典を詳しく解説した『秘密集会タントラ概論』(法蔵館)を清風中学・高校の校長、平岡宏一さんが出版した。同経典の内容を詳述した本は国内では珍しいという。平岡さんは「現代人にとって、仏教は混迷する社会を生きる上での処方箋になり得る」と話す。

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  ■即身成仏目指す

 「般若経」や「法華経」などはオープンな場で多くの人々を対象に説かれたとされるが、特定の人々を対象に説かれたのが密教経典だという。

 現世で悟りを開き、仏になる「即身成仏」を目指すチベット密教において、秘密集会タントラはその修行の根幹となる経典。誤読を招かないよう、師のもとで学び、複数の経典を組み合わせて読解する必要があるという。その内容について、日本語で詳述された本は少ないといい、今回、注釈を加え、分かりやすくするよう心掛けた。平岡さんは「どうすれば即身成仏できるのか。この経典では、どう修行を進めればよいのか示されている」という。

 ■インドで師から学ぶ

 平岡さんは、高野山大学大学院生だった1988年から約2年間、南インドのギュメ密教学問寺に留学。秘密集会タントラのスペシャリストとして名高く、後に学問寺の管長を務めたロサン・ガンワン師から学んだ。師の講義は、休憩を挟むことなく長時間行われることもある過密さで、平岡さんは「片耳が突発性難聴になるほど追い込まれた」と振り返る。

 しかし、後にガンワン師は関係者に対し、平岡さんへの熱心な講義について「鐘はひとりでに鳴ることはできず、たたかれて音を鳴らす。強くたたく者にそう応じただけだ」と平岡さんの熱意に押されて行っていたと明かしたという。

 「学問寺で学ぶ日本人はおらず、日本に正しく教えを伝えてほしいという気持ちが伝わり、ありがたかった」と平岡さん。その教えを後世へ伝えたいとの思いから、本書を書き上げた。

 ■ダライ・ラマの教え

 密教を研究する目的の留学はやがて“修行”へと変わり、教えに没頭した平岡さん。チベット語と仏教の両方に精通している人は少なく、ダライ・ラマ14世の来日時には通訳を務めたことも。平岡さんは「通訳をしながら、ここまで厚かましく法王(ダライ・ラマ)に教えを請うた日本人はそういない」と笑う。

 国内の講演会などで、多くの人々の質問に回答するダライ・ラマを、通訳として間近で見てきた平岡さん。印象的だったのが、自校の生徒に対しダライ・ラマが講演した際、生徒に自分の将来と地球の行く末のどちらに関心があるかと尋ねたときだった。生徒の多くは自身の将来に挙手をしたが、そのときのダライ・ラマの発言に平岡さんははっとした。

 「77億の人が猜疑心(さいぎしん)にさいなまれ、その中で1人幸せになることは難しい。逆に77億の人が問題を暴力ではなく話し合いで解決しようとして、互いに親切心を育めば、1人不幸せになるのは難しい」

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