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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】5年目・陽川大当たり 虎の「ドラフト失敗論」払いのけるか

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【プロ野球ヤクルト対阪神】3回、3点本塁打を放った阪神・陽川尚将=6月29日、神宮球場(森本幸一撮影)
【プロ野球ヤクルト対阪神】3回、3点本塁打を放った阪神・陽川尚将=6月29日、神宮球場(森本幸一撮影)

 コング陽川の突然の覚醒は男・村田修一獲りの声を完全封殺しました。阪神のプロ5年目・陽川尚将内野手(26)は6月21日のオリックス戦(甲子園)から8試合連続先発出場(29日のヤクルト戦=神宮)時点で34打数14安打、12打点と大活躍。過去4年間で通算打率・167の打者が今季は打率・359、本塁打3本、打点19と大変身です。チーム打率・240と貧打に喘ぐ打線の強化策として球団内部では前巨人・村田修一内野手=37歳・現BCリーグ栃木=の獲得を勧める声もありましたが、陽川の出現が“緊急補強策”を完封。活躍が続けばドラフト戦略の“失敗論”も消滅します。

 まさに突然の覚醒でしょう。今季の開幕時点ではスタメン構想から外れていた“和製大砲”が過去4年間とは見違える姿を見せ続けています。その名は陽川尚将ー。プロ5年目、26歳の苦労人のバットが快音を奏で続けているのです。

 6月26日~28日までのDeNA戦(横浜)ではまるで打ち出の小づちのように本塁打やヒットを打ち続け、さらに29日のヤクルト戦(神宮)でも2ー1の三回二死一、二塁から山田大の低めをすくい上げて左翼席上段に到達する3号3ラン。なんとなんと6月21日のオリックス戦(甲子園)から8試合連続スタメンでその間の成績は34打数14安打、12打点。驚異の打率・412です。

 「追い込まれてからコンパクトにスイングすることを意識して、低めのボールにうまく反応できました。後ろにつなぐ意識でしたが、感触は良かったですね」

 陽川は極めて謙虚に語っていましたが、金本監督ら首脳陣にとってはこれが正真正銘の「家貧しくして孝子顕る」でしょうね。意味は「家が貧しいと子供が親を助けようと働くようになり、子の善行が世間に知られるようになる」…ということですが、今季の阪神の貧打線を救う救世主とも言えますね。阪神は69試合消化時点でチーム打率・240、本塁打40本、得点248は全てリーグ最下位。チーム防御率3・64はリーグトップですから、もう誰がどう見ても32勝36敗1分の借金4で済んでいる理由は投手陣の踏ん張りでした。

 しかし、これから酷暑の夏を迎え、投手陣にはへばりが出てきます。打線の援護がなければチーム成績は衰退の一途でしょう。ただ、チーム状況を見ると4番を期待したロサリオが打撃不振で二軍落ちしたまま。新外国人ナバーロは29日のヤクルト戦でデビュー、タイムリーを放ちましたが継続した活躍ができるのかどうかは未知数です。糸井や福留頼りの打線をどうやって活性化させるのか…。首脳陣の打つ手に注目が集まっていましたね。

 こうした状況下で球団内部からは補強期限の7月31日をにらんだ、ナバーロに続く補強策が囁かれていました。それが金本監督が春季キャンプ中から「100%あり得ない」と言い続けていた前巨人・村田修一内野手の獲得だったのです。

 現在、BCリーグ栃木に所属する村田は6月29日時点で29試合に出場し打率・358、本塁打6本、打点30です。NPB15年(横浜、巨人)の通算成績は1953試合に出場し、1865安打、本塁打360本で打点1123。巨人に在籍していた17年の成績は118試合出場、打率・262、本塁打14本、打点58ですね。

 昨季終了後、巨人の若返り策(岡本の起用)から突然の戦力外通告を受け、どこも獲得する意思を見せないままBCリーグ栃木に移籍しました。獲得すればある程度の数字を計算できる打者ですが、金本監督や球団首脳は「若手野手の育成」という大テーマから逸脱する村田獲りに無関心?を決め込んでいたのです。

 しかし、貧打線の解消は急務で、さらに高山や大山、中谷ら期待した若手野手が全く育っていない台所事情もあって、球団内部では「村田を獲得して今季だけでも使ったら…。その間に若手を育てる手もある」という意見が出始めていたわけです。そんな状況下で陽川の突然の開眼!?

 「もう村田はいらないでしょう。陽川が出てきたから。今の陽川なら村田と力関係でも同じと思うね。このまま活躍が続けばオフの補強策も変わってくる。中田翔(日本ハム)のFA補強を継続審議する気配もあったけど、それも消滅する方向になるよね」。チーム関係者はズバリと言い切ったのです。

 それほどチームにインパクトを与えた陽川の出現ですが、このまま活躍が続けば、舞台裏でチーム内で囁かれ続けたドラフト戦略の“失敗論”も打ち消すことができるかもしれません。

 陽川は2013年のドラフト3位で入団しましたが、その時、陽川を指名しないで他の内野手を指名できるチャンスが阪神にはありました。現在の広島の核弾頭・田中広輔内野手(29)です。JR東日本の遊撃手だった田中はまだ阪神に指名権が巡って来た時にはどこにも指名されていなかったのです。ウエーバーの順番で阪神は広島よりも先に指名できるチャンスがあったわけです。ところが、阪神は田中を指名せず陽川を指名しましたね。

 「当時のスカウトの報告では、すぐに使えるのは田中だけど、将来性があるのは陽川だ…ということだった。だからリストに載っていた田中を回避して陽川を3位で指名したんだ」とはチーム関係者の話でした。

 田中は阪神が陽川を3位指名した直後、広島の3位に指名されました。そしてプロ4年間の2人の成績は…。「すぐに使える」どころか、田中はタナキクマルの一角として広島の2連覇に大きく貢献。逆に陽川の4年間は通算打率・167、本塁打3本、打点5です。 「どうして田中を指名しなかったんだ。なにが将来性や!? 田中はすぐに使えて、将来性も陽川よりはるかに上や」

 阪神電鉄本社首脳や球団関係者、阪神OBからはドラフト戦略の大きなミスとして語り継がれていました。こうした“失敗論”を陽川のバットが払いのけてくれるのか。それは、これからの陽川の活躍の持続性にかかっているでしょう。

 阪神の若手はまるでモグラ叩きのモグラ…と言われています。少し活躍して頭をもたげると、すぐに研究され頭を叩かれて沈んでいく…。高山、大山、江越、中谷…。陽川もモグラ叩きで沈んでいくなら、打線の活性剤としての期待も消え失せて、ドラフト戦略の“失敗論”もさらにくすぶるでしょう。

 逆に陽川がさらに牙をむいて他球団投手を襲い続けるなら、緊急補強策も霧散解消し、まだまだ逆転Vの可能性も出てきます。今は陽川がまるで太陽のように輝き続けることを祈るばかりです。

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