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【実録 韓国のかたち】第4部(8完)「次期大統領は金正恩」と嘆く野党…文在寅、左派にとって北は「友軍」か

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一度笑っただけで「信頼度77・5%」

板門店で韓国の儀仗隊を査閲する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央)と韓国の文在寅大統領(左)=4月27日、板門店(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
板門店で韓国の儀仗隊を査閲する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央)と韓国の文在寅大統領(左)=4月27日、板門店(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 4月27日の南北首脳会談後、世論調査機関、コリアリサーチセンターが行った電話調査によれば、韓国国民の77・5%が朝鮮労働党委員長、金正恩(キム・ジョンウン)を「信頼のおける人」と答えた。

 野党自由韓国党代表の洪準杓(ホン・ジュンビョ)は、5月2日の地方遊説で「世の中が狂ってしまった。暴悪な独裁者が一度笑っただけで信頼度が77%まであがる。次期大統領は金正恩がなるかもしれない」と世論の急旋回を嘆いた。

 「板門店宣言」については「できもしない北の核廃棄を、あたかもすでにできたかのように扇動している」と批判、左派政権下で行われた3度目の首脳会談を「1回だまされたらだました方が悪く、2回だまされたらだまされた方が悪いが、3回だまされたら共犯だ」と非難した。

2006年の「一心会スパイ団事件」 秘書官だった文は「偽ニュースだ」

 洪は、韓国大統領、文在寅(ムン・ジェイン)が候補者のころから北朝鮮に対する姿勢を問題にしてきた。昨年4月23日、第1回目のテレビ討論に対立候補として出た洪は文の北朝鮮観をこう追及した。

 「2006年10月、一心会スパイ団事件がありました。記憶されていますね」

 「一心会」と称する団体が中国で北朝鮮工作員と接触し国家機密を渡したとされるこの事件は多くの逮捕者を出し、首謀者とされたチャン・ミンホは国家保安法違反で懲役7年の判決をうけた。

板門店で韓国の文在寅大統領(右)と記念植樹を行う北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=4月27日、板門店(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
板門店で韓国の文在寅大統領(右)と記念植樹を行う北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=4月27日、板門店(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 洪 「これらの団体から数十万枚に及ぶ情報が北に渡りました。ところが廬武鉉大統領が捜査をやめさせ、(韓国の情報機関)国家情報院長の金昇圭(キム・スンギョ)を解雇しました。文候補は当時大統領秘書室長だった。説明してくれますか」

 洪によれば、当時国家情報院は「一心会」の他に6つのグループを調査しようとしたが、文と近い左派系の集団、「386運動圏(1960年代生まれで80年代に大学に通った人々)」出身の人が多く関係していた。

 険しい表情で洪の話を聞いていた文はきっぱりと「事実ではないし、盧政権は検察の捜査に関与したり統制したりしたことはありません」と答えた。

 洪 「検察ではなく国情院が捜査し、検察に送致した事件です」

 文 「偽ニュースです」

 洪 「いいえ。(当時の)バーシュボウ駐韓米大使の報告書にはっきりと書かれています」

 内部告発サイト、ウィキリークスが暴露した米外交公電によると、バーシュボウは、捜査の途中で国情院長が突然辞任した背景を「青瓦台(韓国大統領府)の内部会議で廬大統領が辞任を要求した、と(情報源から)聞いている」と報告していた。

北は主敵か-テレビ討論で答えられなかった文在寅

 2回目のテレビ討論でも文の「対北観」がやり玉にあげられた。野党「正しい政党」のユ・スンミン候補から「北韓(北朝鮮)はわれわれの主敵か」と聞かれ、文は最後まで言葉をにごした。

板門店南側の「平和の家」で韓国の文在寅大統領の金正淑夫人(右)から歓迎を受ける北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の李雪主夫人=4月27日、板門店(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
板門店南側の「平和の家」で韓国の文在寅大統領の金正淑夫人(右)から歓迎を受ける北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の李雪主夫人=4月27日、板門店(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 文 「あー、そのような規定は大統領がやるべきことではないと思います」

 ユ 「まだ、大統領になってませんから(答えてください)」

 文 「そのように強要しないでください」

 ユ 「国防白書など公式文書に北韓軍を“主敵”と規定しているのに国軍統帥権者になろうとする者が言えなかったらどうするんですか。言えないんですね」

劣勢だった左派には「友軍」が必要だった

 文のこうした「対北観」の根源に何があるのか、明確に説明できる人は、ほとんどいないのではないか。

 「(両親が)北朝鮮出身だから」「南北の対決状態を終わらせたいから」と説明される場合もある。

 「韓国国内での政治闘争に利用するため」と批判する勢力もいる。これまで劣勢にあった左派勢力には保守勢力を倒すための「友軍」が必要だった。それが北朝鮮だったのではないだろうか。

=敬称略、第4部おわり

(龍谷大学教授 李相哲)

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