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【橋本奈実の芸能なで読み】「新幹線」と「たこ焼き」…誰からも愛される早霧せいなの「想像力」

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インタビューに答える早霧せいな=大阪市北区(宮沢宗士郎撮影)
インタビューに答える早霧せいな=大阪市北区(宮沢宗士郎撮影)

 想像とは、「こうなったらいいな」という空想を描くことであり、「どうなっているのか」を推し量ることでもあります。その想像する力、「想像力の欠如」が近年、叫ばれていますが…。「舞台には人格が出る」と言われるように、人を感動させる芝居をする俳優は、「想像力」が高いと私は思っています。そんな方々にお会いし、金言をいただく機会がありました。

 まず、元宝塚歌劇団雪組トップスター、早霧(さぎり)せいなさん。主演大劇場公演5作はすべて観客動員100%超という、宝塚史上初の偉業を成し遂げた伝説のトップです。高い人間力でも知られ、劇団員はもちろん、関係者、取材者にも愛されています。

 もともと美しい方ですので、ごく自然に女性らしい容姿になっていましたが、いい意味で内面はまったく変わっていませんでした。

 自然な気遣いができる方です。取材日は、たまたま1人で来阪されました。宝塚のスターは、移動時に多くのファンに付き添われていますが…。「(付き添いが多いのは)宝塚では偉大な大スターさんたちが作り上げた大切な歴史を、後輩たちが引き継ぐ風習が定着しているから。でもタカラジェンヌ1人1人はみんな、自立していると思いますよ」と即答した。

 宝塚の伝統や先輩、現役すべてに気配ったコメント。さらに、「大阪駅まで迎えに来ていただきましたし、私は1人で全然平気。むしろ気楽なタイプなので」と、笑顔で関係者を気遣うことも忘れない。相手の気持ちをおもんばかり、瞬時に的確な言葉を選ぶことができる方だと思いました。

 そんな「想像力」にたけた早霧さん、その最たる出来事がありました。取材日、早霧さんは日帰りでした。「帰りに大阪のたこ焼きが食べたい」と思った早霧さん。関係者たちに「新幹線の車内で、たこ焼きを食べるのはありですか、なしですか」と聞いていました。

 新幹線の座席でソースの香りを漂わせるのは、周囲に迷惑ではないか、と“想像”したわけです。結果、車内に持ち込まなかったようです。宝塚ではもちろんですが、宝塚音楽学校を受験する条件として、学校での文武両道を課したご両親に、しっかりと育てられた、“育ちの良さ”を感じました。

 そして7月の退団を発表したOSK日本歌劇団のトップスター、高世麻央(たかせ・まお)さん。退団公演に向け、「後輩に残したいもの」を問われると、前置きをされました。「私のやり方がみんなに合うかどうかは分からないので。伝えた上で、それぞれが自分に落とし込み、どういったカラーを出してくれるかを今回はより大切にしたい」

 メンバー1人1人を尊重し、どう考えるかを「想像」していなければ、言えない言葉です。これが劇団を牽引(けんいん)するトップの言葉であることも、大きいと思います。

 最後に先日、初舞台となる公演を終えたばかりの女優の板谷由夏さん。「人見知りしないし、まず自分から壁を取り払うので。私は連続ドラマのゲストでも、すぐ現場にヒューッと入り込み、なじむタイプです」。ニュースキャスターの顔も持ち、東日本大震災発生の翌月から毎年、被災地の取材を続けている。ずっと宮城・気仙沼を訪問、昨年は初めて福島を訪れた。

 「同じ場所を訪ね続けることはとても大切です。でも、福島を訪れたとき、それぞれの地の悲しみや苦しみがあることに、ようやく気付いて。私は今まで何を伝えてきたのだろうと、大変ショックでした」。さまざまな立場に立って物事を考えてきた、板谷さんらしい思いです。

 板谷さんは最初に被災地を訪れたとき、2人目の子供を妊娠中でした。「とても迷いました。でも行かなきゃと思って。最終的にはスタッフや医師、家族と相談して決めました」。決して自分の思いだけで突き進まない。きちんと「想像」して、行動する方だと思いました。

 世の中、相手の気持ちに立って考えることで、逆に痛い目を見ることは、残念ながらあります。でも、このような方々を取材すると「自分もこうありたい」という気持ちになる。取材で心が癒やされる日々です。

橋本奈実(はしもと・なみ) 橋本奈実(はしもと・なみ) 産経新聞大阪文化部記者。サンケイスポーツ大阪編集局運動部でゴルフやサッカー、同文化報道部で音楽、宝塚歌劇団担当などを経て現在、映画、歌劇などの取材を行っている。

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