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【鬼筆のスポ魂】お金のかからない戦力補強、それは「声出し」 おとなしかったヤクルトを変えた

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生還した山田(1)を迎える小川監督(中央)ら。ヤクルトが「声出し効果」で上り調子だ(荒木孝雄撮影)
生還した山田(1)を迎える小川監督(中央)ら。ヤクルトが「声出し効果」で上り調子だ(荒木孝雄撮影)

 「声出し」が全くお金がかからない効果的な“戦力補強”であることが改めて認識できた。戦前の予想を覆し、開幕ダッシュに成功したヤクルトの変貌ぶりのことだ。

 6~8日の巨人戦(神宮)で3連勝を飾るなど開幕からの9試合で6勝3敗。勝率・667で、リーグ3連覇を目指す広島と同率首位に立った(9日現在)。チーム打率・284、得点56はどちらもリーグトップ、心配された投手陣も、リーグ3位の防御率3・71。強力な打線が投手陣を援護する形が生まれている。

 ヤクルトは昨季、45勝96敗2分け、勝率・319の最下位という大惨敗。真中満(みつる)前監督は辞任の弁で「来季、私が指揮を執っても勝てる自信がない」とあまり聞いたこともない衝撃的なコメントを残した。ここ5年の成績を見ても6位、6位、1位、5位、6位と最下位が3度もある。今季の開幕前の順位予想ではほとんどの評論家がBクラスと評価していた。

 「RISING 再起」をスローガンに掲げて小川淳司監督(60)-宮本慎也ヘッドコーチ(47)の新体制で再建に乗り出したチームは何が変わったのか。投手陣では先発のハフ、抑えのカラシティーが加入。攻撃陣では青木宣親(のりちか)が米大リーグから7年ぶりに復帰したが、大補強といえるほどではない。チームの内面を大きく変えたのは、昨秋のキャンプから始めたある改革。それが「声出しの勧め」なのだ。

 「われわれはまずチームをいい方向に押し上げること。チームの雰囲気を根底から変えたい。例えば昨秋のキャンプから取り組んでいるのが声出し。それまでは全く声が出ていなかった。声が出ないと盛り上がらない。この一球、このプレーに対する集中力を身につけたいんだ。そういう辺りからチームを変えたい」

 春季キャンプ中に聞いた宮本ヘッドの言葉だ。声を出す…。いとも簡単なことのようだが、奥は深い。声を出すといっても単にヤジを飛ばしたり、状況に即さない言葉をやたらに出したりすればいいというわけではない。それでは、単なる雑音だ。

 ここで言う声出しは一球のボールに集中し、次に起きると予想される事態をお互いチームメートに伝えあったり、指示を出したりすること。例えばナイスプレーを見せた同僚をたたえ、エラーをしたら気持ちをほぐす。声を出しあうことで次への準備が整い、共通認識を高めることでベンチが盛り上がるというわけだ。

 これは一般の社会にも通じる。個々で仕事に取り組むのではなく、声を掛けあい、利害を一致させる習慣を身につけておけば、危機管理に役立つ。言わなくても分かっているだろう…という個々の思い込みが組織に影を落とす。得られた利益が逃げたり、大きな失点をこうむったりする。声出しは会社の円滑な経営にも不可欠。アナログからデジタル社会に移り変わっても、声を掛けあう重要性は不変だ。

 巨人戦3連勝を飾ったヤクルトベンチは大いに盛り上がっていた。勝ったからでもあるが、ベンチの意識が変わったことが盛り上がりの背景にある。投手陣の弱さが指摘されていたチームがどこまで今の状態を維持できるのか。声出し=一球に対するベンチ全体の集中力。この因果関係が続くなら、戦前の予想を大きく覆すかもしれない。(特別記者 植村徹也)

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【プロフィル】植村徹也 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しようへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/)の『今日のトラコーナー』や、土曜日午後6時45分からの「まさとと越後屋のスポーツ捕物帖」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/ )に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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