PR

【鬼筆のスポ魂】エース・千賀が見つめていた「3ケタ」の背番号…ソフトバンクの強さ支える「3軍」

PR

豪州代表戦で6者連続三振の快投をみせた先発の千賀。ジャパンのエースもチームに戻れば危機感いっぱいだ
豪州代表戦で6者連続三振の快投をみせた先発の千賀。ジャパンのエースもチームに戻れば危機感いっぱいだ

 薄暗い室内ブルペンのマウンドを真剣な表情で見つめる男。複数球団を取材した今春のキャンプで最も印象に残ったシーンはこれだ。場所は宮崎・生目(いきめ)の杜(もり)運動公園野球場。厳しい視線を送っていたのはソフトバンクの千賀。昨季は22試合に登板して13勝4敗、防御率2・64。今季の開幕投手の最有力候補だ。

 見つめる先で投げていたのは背番号が3ケタの育成選手。つまり「3軍」の投手陣がそろって投げていた。真剣に見ていた理由はなにか。自身の投球の参考にするため?

 「いや~違うでしょうね。千賀は自分を脅かす投手が出てこないか気になって見ているんでしょう。チーム内の競争がそれだけ厳しいということですよ」

 そう語ったのは永山勝スカウト室プロスカウトチーフ。昨年までアマスカウトチーフとしてドラフト戦略の中枢にいた人物だ。

 千賀は愛知・蒲郡(がまごおり)高から育成ドラフト4巡目で2011年に入団。中央球界では全く無名の存在だったが、育成からはい上がり今やチームのエースどころか侍ジャパンのエースに成長した。年俸も推定1億2500万円。プロ8年目の25歳でまだ前途洋々と思えるのだが、内心は自軍の投手に自身の立場を脅かされるのではないか…という危機感を常に抱いているという。自らが育成からはい上がり、チーム内のライバルに競り勝ってきたからこその心理状態だ。

 こうした危機感を抱かせる環境がソフトバンクにはある。支配下選手は67人。育成選手はなんと25人。しめて92人の選手が在籍している。育成選手の数は巨人と同じで、チームは1軍、2軍、3軍と分かれ、首脳陣も1軍は工藤公康監督、2軍は小川一夫監督、3軍は関川浩一監督。コーチ陣はしめて24人だ。2軍と3軍が一緒に練習を始めるとグラウンドに人があふれ、人数に圧倒される。

 「ウチは2軍で結果を出せないと3軍と入れ替えるんです。すぐには戦力外通告はしない。でも2軍と3軍では最低年俸とか、待遇も大きく違うんです。だから2軍と3軍の間で激しい競争意識がある。下がそういう空気だから1軍選手もウカウカしていられないんです。いろいろな考え方があるけれど、チーム内に厳しい競争意識がないと選手は育ちませんよ」と永山チーフ。

 10年から昨季までの8シーズンでソフトバンクは5度のリーグ優勝。日本一には4度輝いている。まさに黄金期を迎え、今季のパ・リーグの戦前予想でも優勝候補の大本命だ。その原動力のひとつが三軍制にあるといっても言い過ぎではないだろう。

 育成選手については球団によって考え方が異なる。日本ハムなどはこれまで一度も育成選手を取っていない。支配下枠の70人の中で選手を育てている。阪神も現在は3人で支配下枠から漏れた選手の受け皿的な発想だ。「そもそもプロのレベルから明らかに落ちる選手をたくさんとっても意味がないだろう」とかつて阪神球団首脳は語っていた。

 しかし、選手をたくさんとってしっかりとした指導体制で育てる。そしてチーム内競争を激化させるソフトバンク方式は今後、日本プロ野球界のスタンダードになるかもしれない。千賀の厳しい横顔は頭の片隅から離れないのだ。(特別記者 植村徹也)

     ◇

【プロフィル】植村徹也 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月~金曜日午後9時からの「NEWS TONIGHT いいおとな( http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/ )」、土曜日午後6時半からの「ニュース・ハイブリッド( http://www.obc1314.co.jp/bangumi/hybrid/ )」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

この記事を共有する

関連ニュース

おすすめ情報