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【橋本奈実の芸能なで読み】立場が人をつくる-泣くのではと思った退団会見、涙を見せなかった宝塚月組娘役トップ・愛希れいか

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宝塚

立場が人をつくる-泣くのではと思った退団会見、涙を見せなかった宝塚月組娘役トップ・愛希れいか

橋本奈実の芸能なで読み更新
退団会見に臨む宝塚月組娘役トップの愛希れいか =16日、兵庫県宝塚市の宝塚歌劇団(永田直也撮影) 1/5枚

 「立場が人をつくる」-。この言葉を実感する出来事がありました。宝塚歌劇団の月組娘役トップ、愛希(まなき)れいかさんが退団発表をしました。退団会見で愛希さんは、真白い色の個性的なデザインのドレスに身を包み、自分の思いを自分の言葉で堂々と述べていました。涙は一切なく、終始笑顔でした。その姿を見て、前述の言葉が浮かんだ次第です。

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 実は、泣くのではないかと思っていました。というのも、感受性豊かな愛希さんは、これまで取材したとき、かなりの確率で涙を見せていました。

 最初は「1789-バスティーユの恋人たち-」の稽古中の取材。愛希さんが退団会見で、「私のターニングポイントとなり、いつ退団しても悔いはないと思った」と話した公演です。

 フランス革命を、民衆を軸に描いた作品。愛希さんは、当時トップの龍真咲(りゅう・まさき)さん演じる主人公と対立する仏王妃アントワネット役。主人公とほぼ絡まない役というのも、コンビ4年目にして初めてのことだった。

 「離れてみて、自分がどれだけ真咲さんに甘えていたかを痛感しました。でも対等、もしくはそれ以上の意識で演じなければ、この舞台が崩れてしまうから。独り立ちしなければ…」。か細い声で涙ぐみながら、「怖さや不安はありますが、アントワネットの強さを借りて、一人の役者として一歩踏み出したいです」と言い切った姿が印象に残っています。

 思えば、「龍さん」という言葉が出るたびに、感極まっていたように思います。それほど、愛希さんにとって、龍さんは特別な存在でした。

■   ■

 愛希さんは娘役志望で宝塚音楽学校に入学しましたが、2年目の本科生のときに男役に転向、男役として入団しました。が、22年に初めて女役を演じ、方向性に迷う。そんな折、愛希さんに「娘役転向を、言葉にして、明確に勧めてくださった」のが龍さんだったそうです。

 「神の声のようでした。転向を決意したとき、真っ先に報告し、喜んでくださった」。入団3年目での転向。その翌年の平成24年、龍さんのトップ就任とともに相手役に就きました。

 「龍さんがいなければ、私は舞台に立てていない」。普段の洋服も、ファンションセンスに富んだ龍さんに紹介された洋服店で購入しているほど。退団会見でも龍さんを「娘役転向から1年も満たない私を導いていただき、卒業されてからも常に私の行く道を示してくださる、恩師のような方。感謝しかないです」と表現しています。

 それゆえ、龍さんの退団公演での取材も涙、涙。愛希さんは龍さんへの思いを語るたびに天を仰ぎ、涙をこらえていました。ただ、印象的だったのは、「でも自分は続けると、覚悟を決めたから…」と小さい声ながら、しっかりと言い切ったことでした。

 退団会見で小川友次理事長が「若きトップの珠城(たまき)りょうを支えてほしい。そして彼女の才能をもっともっと開花させてほしいと思った」と明かしたように、劇団と相談の上、新生・月組の支えとなることを決めた。

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 必死で龍さんの背中を追っていた愛希さんが、1学年上のトップ、珠城さんのそばに寄り添い、ともに歩み始めた。娘役トップ歴は退団時で6年7カ月となり、平成の娘役トップでは元宙(そら)組娘役トップの花總(はなふさ)まりさんに次ぐ長さに。その経験、キャリア、立場が愛希さんをより成長させたのだと思います。

写真ギャラリー

  • 退団会見に臨む宝塚月組娘役トップの愛希れいか =16日、兵庫県宝塚市の宝塚歌劇団(永田直也撮影)
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  • OSKレビュー春のおどり製作発表。OSK日本歌劇団トップスターの高世麻央さん=22日、大阪市北区のヒルトン大阪(志儀駒貴撮影)
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