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【関西の議論】ベンチの向きを90度変えるだけ! 鉄道会社〝悩みのタネ〟…酔客のホーム転落事故は防げるのか

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ベンチの向きを90度変えるだけ! 鉄道会社〝悩みのタネ〟…酔客のホーム転落事故は防げるのか

関西の議論更新

 地下鉄の場合でも、御堂筋線や堺筋線、中央線など比較的利用者の多い路線に私鉄が乗り入れている。普通や快速、特急など種類に応じて異なる車両を導入しているのも関西圏に多い。

 そして何よりも大きいのは設置コスト。関西圏は首都圏と比べ、鉄道各社の収益が低く、高額になるホームドアの費用に二の足を踏むケースも少なくないとみられる。

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 とはいえ、酔客の線路転落を防がなければいけないのは、関西圏も首都圏も同じだ。車両扉の位置に左右されず、コストも安価で済む方法はないか苦慮した末に浮上したのが、ベンチを回転させるという方法だった。

 JR西がベンチの工事を開始する前年の26年度、同社管内のホームでの車両の接触事故のうち7割以上が酔客で、全国平均の62・6%よりも高かった。「酔客の事故が多く、(線路転落の防止は)喫緊の課題だった」と担当者は当時を振り返る。

「転落者は減少傾向」

 JR西は、何の根拠もなくベンチの向きを変えたわけではない。

 酔客の線路転落といえば、ホームの端を歩いて足を踏み外してしまうケースがイメージされがちだが、実はこうした事故は非常に少ないことが同社の分析で判明したのだ。

 乗客106人が犠牲になった平成17(2005)年のJR福知山線脱線事故を教訓に設立されたJR西日本安全研究所が、大阪市交通局の協力も得て京阪神エリアの線路に設置された防犯カメラを分析。その結果、酔客が線路に転落するまでの行動傾向として、ベンチなどから突然立ち上がって線路に向かって歩き始め、そのまま転落するケースが約6割を占めていた。

 JR西は、統計として信用できるだけの数字が集まっていないとして明確な数字の公表は避けたが、「酔客の転落者が減少傾向なのは確か」と断言した。もちろん、ホームドアを設置する方が確実に転落事故は防げるだろう。それでも、次善の策としてベンチの向きを変える試みについて「一定の効果がある」とみている。

 鉄道の安全対策に詳しい関西大社会安全学部の安部誠治教授は「すばらしい取り組み。ホームドアの設置が望ましいが、関西圏の鉄道会社の収益を考えると難しい。長い目で見れば効果が出る可能性は十分あり、今後、効果が明確になれば全国に広がることも考えられる」と話した。

写真ギャラリー

  • 大阪市営地下鉄御堂筋線の動物園前駅のベンチ。ホームの壁に沿って一列に並んでいる