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【関西の議論】ベンチの向きを90度変えるだけ! 鉄道会社〝悩みのタネ〟…酔客のホーム転落事故は防げるのか

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ベンチの向きを90度変えるだけ! 鉄道会社〝悩みのタネ〟…酔客のホーム転落事故は防げるのか

関西の議論更新
線路に向かって設置されたかつてのベンチ(左)では、酔客が立ち上がり、そのまままっすぐ歩いて線路に転落してしまう。しかし、90度回転させたベンチ(右)だとこの種の転落事故が防げる―という発想で、JR西日本などが工事を進めている 1/2枚

 酒に酔った乗客の線路転落を防ぐため、かつてはホームで線路に向かって平行に設置されていたベンチを90度回転させる工夫が、関西を中心に広がっている。酔客がベンチから立ち上がり、そのまままっすぐ歩いて転落する-という事態を回避しようと導入された。関西圏は首都圏よりもホームドアの設置が進んでいないこともあり、JR西日本が応急処置として始めた。1駅あたり数億円のコストがかかるとされるホームドアの設置に比べて格安だけに〝苦肉の策〟との見方もあるが、本当にベンチの向きを変えるだけで転落事故が防げるのだろうか。(桑波田仰太)

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わずか400万円で…

 大阪市営地下鉄の御堂筋線動物園前駅。ホームの壁に沿って一列に並んだベンチに座る利用者は、線路と向かい合わず、90度横を向いている。

 愛知県から訪れた男子大学生(20)は「地元で見たことがない向きのベンチ。とても違和感があった」と驚いたが、近年、関西圏の鉄道では珍しくない光景になりつつある。

 平成27年に最初に導入したJR西日本の管内では、すでに300以上の駅ホームでベンチの向きが線路に対して90度回転。大阪市営地下鉄でも7月現在、123駅中18駅で工事が完了した。

 市によると、御堂筋線心斎橋駅のホームドア設置にかかった費用は約3億円だったが、動物園前駅のベンチの向きを変える工事はわずか400万円だった。

 国土交通省鉄道局は「関西以外ではほとんど知られていない取り組みではないか」と話す。

 国交省によると、駅ホームでの線路転落や車両との接触事故は、28年度で3077件。ここ数年はホームドア設置などで減少傾向にあるが、毎年3千件以上で推移している。

 国は32年度までに、全国約9500駅のうち約800駅でホームドア導入という目標を設定。1日あたりの乗降客数が10万人以上の駅を優先するよう鉄道各社に求めており、今年3月末時点で設置済みなのは686駅となっている。

 首都圏ではホームドア設置が進む。JR東日本の山手線では3月末現在、全29駅のうち24駅で設置が完了。東京メトロでも丸ノ内線や有楽町線、副都心線などで高い設置率となっている。

 一方、関西圏はホームドアの設置がずいぶん遅れているようだ。

 大阪と東京を単純比較すると、大阪は55駅で、東京の251駅と大きく差があり、神奈川の66駅よりも少ない。現在、JR大阪環状線でホームドアが設置されているのは全19駅のうち1駅のみ。東海道線でも3駅しかない。大阪の主要地下鉄の御堂筋線でもわずか2駅。滋賀、奈良、和歌山の3県にいたっては、設置されている駅が一つもないという状況だ。

ホームドア設置が進まない理由

 関西圏内でホームドア設置が進まないのには理由があるという。

 JR西日本は「同じ路線に扉の位置が異なる車両が乗り入れることがあり、設置工事が一筋縄ではいかない」とする。扉の位置に加え、車両の数や長さが異なるなどクリアすべき技術的な課題があるのだ。

写真ギャラリー

  • 大阪市営地下鉄御堂筋線の動物園前駅のベンチ。ホームの壁に沿って一列に並んでいる