産経WEST for mobile

【鉄道ファン必見】1日の乗降10人、山陰線の究極の秘境駅…周囲は山だけ、堪らない「現実逃避」の体感

記事詳細

1日の乗降10人、山陰線の究極の秘境駅…周囲は山だけ、堪らない「現実逃避」の体感

鉄道ファン必見更新
居組駅を通過する「瑞風」。展望デッキからは手を振る乗客も 1/7枚

 兵庫県北部を走るJR山陰本線には、駅員が誰もいない無人駅が少なくない。その中でも、“秘境駅”感を漂わせているのが、近畿最北西端の「居組(いぐみ)駅」(新温泉町)だ。うっそうとした森の中にぽつねんと姿を現す駅舎を利用するのは1日平均10人前後。それでも、落書き帳には「秘境駅愛」がつづられ、一度は訪れたい鉄道マニアの聖地になっている。

<< 下に続く >>

人のいない駅に人影が

 麓の日本海の漁港から山の中の一本道を上がること約1キロ。「大阪川」という小川の橋にさしかかると、駅舎の古びた赤い瓦屋根がようやく見えてくる。

 平屋の駅舎の待合室には当然、自動券売機などはなく、がらんどう。壁に張られた時刻表も列車本数が少ないから、隙間だらけだ。駅前には、かつてはそれなりの見栄えだったとみられる日本庭園らしき痕跡もある。周囲は山しかない。今では町中でほとんど見られなくなった公衆電話ボックスがどこか郷愁を誘っている。

 ところが8月の取材当日、そんな秘境駅に人影があった。知らずに行ったところ、偶然、JR西日本の豪華寝台列車「トワイライトエキスプレス瑞風(みずかぜ)」の通過に出くわした。待ち構えていたのは地元の実家に帰省中の神奈川県鎌倉市在住の母子。緑の車両がすぐ目の前を走り去る近接感に、「ここでしか体験できない迫力」と興奮を隠しきれない様子だった。

 周りの緑に溶け込んでいく車体、こちらも最後尾の展望デッキに立つ乗客に思わず手を振り返した。

 しかし、その直後にやってきた鳥取行き1両編成のディーゼル列車を乗り降りする人はゼロ。いつしか母子の姿も消え、やかましいほどのセミの声だけが、唯一聞こえてくる音だった。

かつては2つのホームに跨線橋も

 すぐ西側のトンネルを抜けると鳥取県の風景に変わる県境に居組駅が開業したのは、明治44(1911)年11月。無人駅となったのは昭和58(1983)年だった。かつては2つのプラットホームで3番線まであったが、今は1つだけ。跨線橋(こせんきょう)も消えてしまった。今では、廃止され、雑草に囲まれたホーム跡や錆(さ)びついた線路跡が残る。

▼【写真ずらり】これぞ秘境駅!(こちらをクリック)

 近くの浜坂駅(新温泉町)に勤務していた元国鉄職員によると、駅舎は修理の手をたびたび入れながら、ほぼ開設当時の姿を保ったままだというから年季が入っている。

 管轄するJR西日本福知山支社(京都府福知山市)にも詳しい資料はないくらいで、わずかなデータによると、1日の乗客は平成27年度でわずか8人、28年度で11人。駅の軒下には数台の自転車が置かれていたので、利用客がいないわけではなさそうだ。だが、地元集落の人たちに聞いても、「駅を使ったことはない」とつれない答えしか返ってこなかった。

 それでも、ひと昔前は違っていた。

 元年度は1日104人を数えていたといい、先の鎌倉在住の女性も中学生、高校生時代、隣町の学校へ通うために毎日、駅まで山道を歩いた。ホームが豊岡(兵庫県)、鳥取方面へ向かう通勤・通学客でにぎわっていたのを覚えているという。

写真ギャラリー

  • がらんとした居組駅を通過する「瑞風」。ばっちり写真が撮れる
  • 到着するローカル列車。降りてくる人はいなかった
  • がらんどうの駅舎構内。寂寥感満載だ
  • 赤い煉瓦屋根が特徴の居組駅。ほぼ開業当時の姿だという。周りは緑深い山だ
  • 居組駅舎に置かれている落書き帳。秘境駅を訪ねた思いが書かれている
  • 日本海に臨む居組の漁港。駅は集落からかなり離れている