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【関西の議論】「その質問、誘導です!」 広がる「司法面接」 虐待、いじめでの子供への正しい聞き方とは

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「その質問、誘導です!」 広がる「司法面接」 虐待、いじめでの子供への正しい聞き方とは

関西の議論更新
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 「◯◯にたたかれたの?」「グーで? パーで? どっち?」。子供が暴力などの被害にあったとき、大人はこんな質問をしがちだ。心配のあまり、また結論を急ぐあまりの聞き方だが、実はこれらが誘導となり、子供の記憶を塗り替えてしまうことがある。こうした懸念から生まれたのが、「司法面接」と呼ばれる事情聴取の方法だ。虐待事件などで子供が被害者となったとき、警察と検察、児童相談所が連携し、専門的な研修を受けた代表者1人が面接することで、子供から正確な情報を聞き出し、また聴取の回数を減らして子供の負担を軽くするのが狙い。欧米を中心に普及しているが、近年は日本でも面接手法を導入する動きが本格化し、大阪地検には研究チームが設置されている。専門家は「虐待だけでなく、いじめなどの聞き取りにも使える手法」として、教員らにもノウハウが広まればと期待する。

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記憶に沿って、子供の言葉そのまま

 「ママにここドーンされた」「ドーンされたってどういうこと?」。大阪地検の一室。小さなソファに座って向き合い検事が子供に話を促す。警察や児相のメンバーは別室のモニターで確認し、聞きたいことがあれば内線電話で検事に連絡。聴取はすべて録画される。

 大阪府は児童虐待の通告件数が全国ワーストで、同地検は平成27年4月に全国に先駆けて司法面接の研究チームを設置し、民間の行う研修でノウハウを学んだ。会話の中に多彩な擬音が登場するのは関西人の特徴だが、特に子供は「ドーン」「バーン」「ボーン」といった言葉で受けた暴力を表現することが多い。チームメンバーの大口奈良恵検事は「子供自身の言葉で、記憶に沿って話してもらうことが大事」と話す。

 昨年には同じくメンバーの下野真弓検事が司法面接の先進国の一つ、米国のアラバマ州へ留学し、面接の研修を受けるとともに、警察など関係機関との連携実態を視察。今では日常的に司法面接を実施し、録画を見直して改善点を話し合っている。

発達途上、自分と他者の記憶が混同

 虐待などの立証では被害を受けた子供の供述が重要になる。だが「子供から正確な記憶を聞くには知識と訓練が必要。大人と同じような聴取はできない」と、立命館大総合心理学部の仲真紀子教授(発達心理学)は話す。

 仲教授によると、子供は認知機能の発達が未熟で「他者からの情報と自分の記憶を混同するなど、周囲の発言の影響を受けやすい」という。『お父さんがたたいたの?』『グーとパーどっちで?』といった具体的な内容を含む問い方(クローズド質問)や、「~されたのね?」という聞き方(タグ質問)は意図せず誘導となったり、記憶を塗り替えたりしてしまう。しかし、聞き手は思い込みや、子供が答えやすいよう先を促そうと思ってこうした質問をしがちだ。

「信用できない」度重なる“無罪”の歴史

 司法面接が開発された背景には、子供への不適切な事情聴取から虐待事件などの数多くの裁判で被告人が無罪となった歴史がある。

 仲教授によると、米国では1983年に起きた「マクマーチン事件」が有名。幼児が幼稚園の職員から虐待を受けたとされたことをきっかけに300人以上の子供が性的虐待や動物の殺害、果ては赤ん坊を殺害して食べたなどの被害を訴えた。数多くの逮捕者が出たが証拠は発見されず、告発の多くが取り下げられて無罪が確定。ほかにも類似の事件が米国のほか、英国やフランスなどでも多数あったという。

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  • 「司法面接室」で話す下野真弓検事(右)と大口奈良恵検事。子供の気が散らないよう、余計なものは置かれていない=大阪市福島区の大阪地検