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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】「阪“急”タイガース」鮮明 “約束の10年”後で初HD株主総会、中田翔らFA砲の獲得も…

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大阪市内で行われた阪急阪神HDの株主総会
大阪市内で行われた阪急阪神HDの株主総会

 中田翔や中村剛也らFA砲の獲得方針があるとすれば、巨額資金の最終決済は誰がするのでしょうか。阪急阪神HDの株主総会が13日に行われ、「阪急」の統治がいよいよ鮮明になりました。「阪神タイガース」も阪急阪神HDのエンタテイメント・コミュニケーション事業部門の子会社です。今後の球団人事や編成計画などにも「阪急首脳」の意向が色濃く出てきますね。監督人事や巨額資金の必要な補強などは「阪神」だけの決済では前に進まなくなる可能性が極めて高いですね。

■ブレーブス手放した阪急。阪神統合で新規オーナー扱い「30億円」、だったが…

 30年以上も「阪神タイガース」を取材した者にとっては、なんとも複雑で寂しさが込み上げてきます。タイガースが「阪神」ではなく、「阪急阪神HDタイガース」になっていく。もっと言えば実質は「阪急タイガース」…。そんな思いで13日に行われた阪急阪神HDの株主総会の様子を聞いていました。

 「久万さん(元オーナー=故人)が生きていたら泣いているんじゃないか。阪神が実際、阪急にすべて呑(の)み込まれた。こうなることは10年前に決まっていたことだけど、実際に目の辺りにすると悲しいですね」と話すとある球団関係者はこう返してきました。

 「資本主義だから…。阪神は阪急阪神HDの100%子会社。もっと言うなら阪急の100%子会社。これからは人事交流も進み、来年の4月の新入社員からはHDでの一括採用となる。もう阪急でも阪神でもなくなる。今の幹部社員も全員が阪急阪神HDに転籍して、そのまま当面は働くわけだからね。言ってみれば阪神の次長以上は全員が実際は阪急に持っていかれたのも同然だ」

 村上ファンドによる阪神電鉄株の買い占めに端を発した大騒動は2005(平成17)年8月でした。その後、2006年5月には村上ファンドの保有株式は46・82%まで増え、阪神電鉄に対して発言権を有するに至りました。役員を派遣して経営に参入する意図があることまで明らかになったのです。

 その後、村上ファンドの証券取引法違反の疑いにより、村上世彰代表が逮捕、代表辞任の経緯があって、保有していた阪神株はTOBにより売却されたのです。阪急HDは阪神電鉄株式の64・76%を保有することになり、連結子会社化しました。2006年10月1日付で阪急HDと阪神電鉄は株式交換を行うことが承認され、経営統合を果たしたわけです。

 昨年10月1日で統合10年の区切りを迎えました。タイガースにとっても大きな区切りを迎えたのです。なぜかといえば阪急阪神HDの誕生と同時に、プロ野球のオーナー会議では「新規参入にあたる」という議論が噴出し、複数のオーナーからは新規参入の規定通りに30億円の支払いを求める意見が出されました。

 その際に巨人や広島から「阪神が親会社であることは変わりない」と擁護され、阪急首脳からも「タイガースの経営には向こう10年は一切、口を出さない」という覚書が出されたと言われています。結果として、新規参入の30億円は免除されたのです。

 実際、10年が過ぎるまで阪急側から阪神側に対して「タイガース」に対する一切の要望や注文はなく、阪神電鉄首脳もハッキリとこう語っていました。

 「阪急は宝塚歌劇だけで忙しいでしょう。こっちもタイガースだけで忙しい。それに阪急はかつてブレーブスを売却した過去がある。球団を手放した会社がまた球団の経営に口を出すのも気が引けるはずです。当面は阪急側からタイガースにアレコレと言うてくることはないでしょう」

 しかし、そんな願望の込められた見通しは徐々に崩れていきます。今回の株主総会で明らかになった阪急阪神HDにおける役員比率を見ても“実態”がよく分かります。代表取締役会長グループCEOには阪急の角和夫会長が、代表取締役社長には同じく阪急の杉山健博社長が就任しました。役員に名を連ねている阪神側は秦雅夫電鉄社長が代表取締役副社長に。藤原崇起電鉄会社が代表取締役に就任していますが、阪神側から入った役員は2人です。10年前の統合時は5人いましたから、大きく減らしていますね。

■猛虎ファン衝撃…坂井オーナー、実は“控え役員”

 そして、最大のポイントはタイガースの坂井信也オーナーが阪神電鉄の取締役相談役ではありますが、阪急阪神HDでは役員から外れているのです。この“ネジレ”現象が今後の球団運営にも大きな影響を及ぼすかもしれません。どうしてか?

 「タイガースで巨額の資金が必要となる戦力補強や監督人事などを決める際、いままでなら坂井オーナーの決済で前に進んだ。これからは坂井オーナーだけで大丈夫なのか…。阪神タイガースは阪急阪神HDのエンタメ部門の子会社。大きな経営判断となる巨額資金の投資となれば、HDのトップや役員の決裁も必要ではないのか。それこそ資本主義なんだから、親会社のトップの判断が必要になるはずだ」とは球団関係者の言葉です。

 例えば今オフ、日本ハムの中田翔や西武の「おかわり君」こと中村剛也などの獲得を進めようと思えば、複数年契約と巨額なFA資金が必要ですね。坂井オーナーが獲得にGOサインを出したとしても、阪急阪神HDの役員会が首を縦に振らなければ、球団首脳も動けない…という事態が出てきそうですね。

 「そんなことはない。坂井オーナーは球団の会長なんだから。会長が決めたことが前に進むのは当然だ。HDの角会長も『タイガースのことは坂井オーナーにお任せしています』と言っている。大丈夫ですよ」と話す関係者もいますが、さてどうでしょう。

 阪急阪神HDの株主総会では、ある株主から角会長に対して「かつて阪急にも阪急ブレーブスという常勝球団があった。なぜ球団経営において阪急と阪神の交流がないのか? 阪急側の人材を取り入れてオール阪急阪神体制でもっと強いタイガースにしてほしい」という質問が飛びました。

 角会長の答えは「阪急鉄道の課長がタイガースのマネジメントをするのは難しい。若いうちから人事交流をしないといけない。来年度からホールディングスが総合職を一括採用する。これをきっかけに阪急と阪神の人事交流を進める。タイガースは坂井オーナーとも相談しながら慎重に考えたい」というものでした。

 微妙なニュアンスですが、阪急からの“関与”を否定しない発言だったでしょう。将来的…という観点は付きますが、もはやタイガースは「阪神」だけのものではなくなったことは明々白々なのです。ならば、球団としての大きな経営判断を迫られるFA補強や監督問題、もっと踏み込むなら将来の球団オーナーや球団社長人事も「阪急主導」で進められる日は近いでしょう。いや、もうすでにそうなっているのかもしれません。舞台はタイガース新時代に向けて動き出しています。

 久万さんは生前、阪神電鉄会長を退いた後、最後の仕事として「阪神電鉄100年史」の監修に務めていました。その仕事をやり遂げた日、皮肉にも阪神の株は阪急に買い上げられたのです。久万さんは悔しさのあまり胃潰瘍になりました。気持ちは痛いほど分かります。関西の私鉄として切磋琢磨(せっさたくま)したライバル会社に自らが育てあげた会社が呑み込まれたのです。それこそ胃袋がねじれたでしょう。

 しかし、時代の流れは容赦ありません。阪急阪神HDの下でタイガースがどう進化していくのか、どんな将来が待っているのか。今後をじっくりと見ていこうと思っています。  =続く(毎週日曜に掲載)

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植村徹也(うえむら・てつや) 植村徹也(うえむら・てつや)  1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月~金曜日午後9時からの「NEWS TONIGHT いいおとな」、土曜日午後6時半からの「ニュース・ハイブリッド」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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