産経WEST for mobile

【芸能考察】人種差別と抜け目ない金儲けの歴史…米黒人音楽の殿堂を語り尽くす超豪華な巨大本「コンプリート・モータウン」のスゴさ

記事詳細

人種差別と抜け目ない金儲けの歴史…米黒人音楽の殿堂を語り尽くす超豪華な巨大本「コンプリート・モータウン」のスゴさ

芸能考察更新

 とにかく大きくてド派手だ。表紙の大きさをメジャーで測ると縦が28・5センチ、横が22・5センチ。そして厚さが3・8センチもある。おまけに重さは約2・3キロ。ずっしり重い。

<< 下に続く >>

 そして中身の方もこの大ボリュームに勝るとも劣らない濃厚かつ超豪華な逸話や、珍しい写真で満載…。

 これ、何の話かと言うと、マーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダー、マイケル・ジャクソン、ダイアナ・ロスといった黒人ルーツ音楽界の大スターを輩出した米のレコード会社「モータウン」の歴史を振り返る超豪華本「コンプリート・モータウン」(アダム・ホワイト、バーニー・エイルズ著、石垣憲一訳、河出書房新社、9000円+税 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309277202/ )のことだ。

▼河出書房新社「コンプリート・モータウン」紹介のページ(外部サイト)

 米モータウンといえば1959年1月、自動車産業の街で知られる米中西部ミシガン州のデトロイトで誕生したレコード会社だ。社名はMoter townの略だが、創業者の元ボクサーでミュージシャンのベリー・ゴーディ・ジュニア(87)の指揮のもと、ソウルやR&B(リズム・アンド・ブルーズ)、ブルーズといったコテコテの米黒人ルーツ音楽を白人にも受ける洗練されたポップ曲に作り替え、1960年~69年に米ビルボート誌認定のトップ10に79曲をランクインさせるなど、小規模ながらCBSやワーナー、ポリグラムといったメジャーなレコード会社に比肩する大成功を収めたことで知られる。

 本書はそんなモータウンの歴史を所属ミュージシャンや関係者の声を交え、詳細に振り返っているのだが、読んでみれば社の歴史の多くは基本、人種差別との戦いだったことがよく分かる。

 「当時、音楽は本当によく分類されていた。アーティストが黒人だったら黒人音楽のレコードとみなされた…同じ歌を白人が歌えばポップスだった」(モータウンを代表する歌手のひとり、スモーキー・ロビンソン)という状況に加え「…(人種差別が激しい)南部に行くことになっていた。トイレに行きたいと思ったら射殺されるような場所だった…」(同)という時代。ゴーティ・ジュニアの理想はこうだった。

 「私は自分の音楽があらゆる種類の人の耳に届いているかということ以外、何も心配していなかった…」

 とはいえ、どんなビジネスも理想やきれい事だけで回るはずはない。ラジオ曲で自分たちの楽曲をたくさんオンエアしてもらうなど、事を有利に運ぶため、レコードの配給業者やプロモーションの担当者はほとんど全員白人を雇うという明快過ぎるやり口に、当の黒人たちから批判が出たことも。

 その後、英国に楽曲を売り込み新市場を開拓。72年にはハリウッドを抱えるロサンゼルスに本社を移転すると同時に、テレビや映画といった映像メディアにも触手を伸ばす。

 しかし金儲け一辺倒になったことに加え、故郷を捨ててロスに本社を移転したことで社内に亀裂が…。それが理由でもないのだが、結局、ゴーディ・ジュニアは会社を処分することにし、94年、ポリグラムに売却された。

 そういった濃厚な物語が全10章にわたり淡々と語られていくわけだが「廊下、階段の吹き抜け、壁のそば、トイレでレコーディングしたことさえあったわ」(ダイアナ・ロス)といった苦労話とゴーディ・ジュニアを持ち上げる記述や証言が目立ち、個人的には少々興ざめ。

 とはいえ、100人以上の証言者の生々しい声を織り込み、モータウン所属のスターたちの私生活や録音スタジオでの様子をとらえた貴重な写真や、珍しいシングル盤、LPジャケットの写真など計約1000点を収めた本書の意義は格別だ。

プッシュ通知

写真ギャラリー

  • 世界の大衆音楽史に燦然と輝くマイケル・ジャクソンの「スリラー」(EPICレコードジャパン)