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【衝撃事件の核心】「必ずお前を殺す」夫の壮絶DV、母娘孫無戸籍30年の悲惨 「民法の壁」へ苦悩の提訴

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「必ずお前を殺す」夫の壮絶DV、母娘孫無戸籍30年の悲惨 「民法の壁」へ苦悩の提訴

衝撃事件の核心更新

 娘の無戸籍を解消しようと、家庭裁判所や市役所などに足を運び続けた。だが、毎回担当者から言われるのは「夫への事実確認が必要」との一言だった。

 「夫が娘の存在を知ったら何をされるか分からない」との恐怖から、それを受け入れることはできなかった。男性が「父」だというDNA鑑定の結果を持参しても、夫の証言が優先するとされ、落胆した。

 娘が3歳になったころ、夫から「離婚したい」と書かれた手紙が突然届き、離婚が成立したが、状況は変わらなかった。

解決策求め、神戸から岡山へ日参

 やがて娘も結婚し、平成22年、子供が誕生した。娘が無戸籍だったため孫も無戸籍となった。

 「このままでは娘や孫、その孫まで無戸籍が続いてしまうのではないか」。不安に思った女性はやがて、一つの裁判に行き着いた。

 岡山県内の女性が21年1月、前夫から暴力を受けて別居中に、別の男性との間に生まれた子供の出生届が受理されず、子供が無戸籍となったのは、「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」とする民法の規定が原因で、同規定は憲法の「法の下の平等」に反するとして、国などに損害賠償を求める訴訟を岡山地裁に起こした。

 この訴訟は23年、最高裁が原告の訴えを棄却し、敗訴が確定したものの、同様の悩みを抱える人が各地で声を上げていることが励みになった。

 女性は、何度も岡山県に足を運び、この訴訟で原告の代理人を務めた作花知志(さっか・ともし)弁護士(岡山弁護士会)に現状を訴えた。そして、ともに方法はないかと考えていた25年、女性が元夫の戸籍を取り寄せてみたところ、前年に亡くなっていたことを知った。

 「もう娘の出生届を出しても元夫が出てくることはない」。家庭裁判所に、男性を父とする「強制認知」調停を申し立て、改めて出生届を提出。今年になってようやく娘と孫の戸籍が作られた。

明治時代から続く規定

 現行の民法では、嫡出推定が及ぶ子供について、親子関係を否定するためには「嫡出否認」の訴えを家庭裁判所に起こす必要があるが、夫のみに認められている。その上、この訴えは、夫が子供の出生を知ってから1年以内に限定されており、それ以降に、嫡出推定を覆すことはできない。この規定は明治時代から続いているものだ。

 一方、妻や子は「親子関係不存在確認」や「強制認知」の調停を家裁に申し立てることができる。だが、夫婦関係の実体がないことを証明する必要があり、調停などの場に夫が出席して事実確認するケースもあるなど、そこには「夫の壁」が存在する。

 女性も「元夫の暴力が怖かったのはもちろんだけど、もしも、娘の存在を知った元夫が、娘を自分の子供だと言ってしまったら、法律上の父子になってしまう。それ以上こちらは何もできない」と話す。

 女性を苦しめたのは、元夫の暴力だけでなく、もしも娘が元夫の子になってしまったら-という恐怖だった。女性の代理人を務める作花弁護士はこの点を重視する。

 「暴力だけが問題なら、調停や訴訟になった場合、弁護士が女性を体を張ってでも守ることができる。だが、元夫が子供を自分の子としてしまったら、それを否定する手立てが妻にはない。暴力が怖いのはもちろんだが、多くの女性が訴えをためらう大きな理由はここにある」

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