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【衝撃事件の核心】「必ずお前を殺す」夫の壮絶DV、母娘孫無戸籍30年の悲惨 「民法の壁」へ苦悩の提訴

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「必ずお前を殺す」夫の壮絶DV、母娘孫無戸籍30年の悲惨 「民法の壁」へ苦悩の提訴

衝撃事件の核心更新

 日常的に「殺す」と脅し、暴力を振るうDV(ドメスティック・バイオレンス)夫から、女性は命がけで逃げ出した。逃避行の最中、別の男性との間に授かった娘は無戸籍にならざるを得なかった。夫との婚姻が継続中にできた子供は、民法の規定「嫡出推定」により夫の子となるため、出生届が出せなかったのだ。その後、出生届の受理や無戸籍の解消を裁判所などに訴え続けたが、「夫の証言が必要」と言われ、断念に追い込まれた。結局、無戸籍状態が解消できたのは夫の死後。娘が生まれて実に30年以上が経過していた。「もし、あのとき、親子関係を法的に否定する『嫡出否認の訴え』を妻の側でも起こすことができたなら」。女性は8月、訴えを起こすことを夫にしか認めていない民法の規定は憲法違反だとして、国に損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。

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「別れるなら、必ず殺す」

 訴えを起こしたのは神戸市内の60代女性。訴状や女性によると、昭和50年ごろ、夫と結婚した。まもなく子供が生まれたが、そのころから夫は暴力を振るうようになった。

 「別れるというなら、俺はきっといつかお前を殺す。今でなくても、必ずお前を殺してみせる。お前一人死なさない。俺も死ぬ気でいるからお前を殺す。俺にとっていいと思っている」。夫はこう脅し、日常的に殴る蹴るの暴行を加えた。包丁を持ち出して脅すこともしばしばだった。

 女性は数回別居を試みたが、夫が女性の両親に脅迫まがいの電話をするなどしたため断念。だが、家に戻ると、暴力はエスカレートした。

 喫茶店で話し合いをしたときには、暴力を振るわれ、夫の車に引きずり込まれそうになったことも。そのとき、車内に積まれたガソリンタンクを見て「焼き殺される」と思い、通行人に助けを求めた。取り合ってはもらえなかった。

 「お前が逃げれば、子供を殺す。お前と子供が逃げればお前の親や親族を殺す」。危害が加えられる恐れは自分以外にも及んでいた。福祉施設や家庭裁判所に足を運び、なんとか子供だけでも保護してくれるよう頼んだが、当時はDVに対する認知度も低く、対応してくれなかった。

 「このままではいつか殺されると本気で思っていた」。いつでも逃げられるよう、少しの現金を玄関の郵便受けにしのばせていたという女性は昭和57年のある早朝、子供を連れ、ついに家を飛び出した。

「夫の証言」という壁

 子供を親族に預け、半年間で15回の引っ越しを繰り返した。居場所を知られないために、ダミーの家も用意した。

 「外を歩いていても、夫がいたらと思うと顔を上げられず、家に入るときは周囲を警戒するなど、毎日生きた心地がしなかった」

 その後、別の男性と暮らすようになり、58年、男性との子となる娘を出産した。男性を「父」とする出生届を提出したのだが、娘を妊娠したのは、夫の元から逃れて別居してから3カ月後のことだった。

 民法772条には「妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する」という「嫡出推定」が規定されている。娘は夫の嫡出推定が及ぶとして、男性を父とする出生届は不受理となり、娘は無戸籍となった。

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