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【WOMEN】ママは「女流棋士」「バイオリニスト」 子育てが私を強くした

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ママは「女流棋士」「バイオリニスト」 子育てが私を強くした

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 女流棋士に、女性バイオリニスト。どちらも特別な才能と人並み外れた努力を求められる職業だが、その仕事と家事・育児を両立させている女性たちがいる。育休も短時間勤務の制度も十分になく、対局に、演奏に、と各地を飛び回る生活との両立は肉体的にも精神的にも厳しそうだが、「子育てが私を強くした」と前向きだ。そんな妻たちの活躍の陰には、夫や家族の支えがある。

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 「甘くはない世界ですが、子供を産んでも、碁打ちとして生きていくことを諦められなかった」

 女流棋士、吉田美香さん(45)。22歳で「女流本因坊」のタイトルを獲得、その後4連覇を果たし、平成15年には八段に。日本の女流碁界を牽引(けんいん)してきた実力者だ。

 神戸市内の自宅に戻れば、小学5年生の長女(11)と2年生の次女(8)のお母さん。長女を出産して2カ月半後に対局に復帰したが「子育ての時間は二度と戻らない。なるべく手元で育てたい」と、保育所には預けず、対局のある日は実家の母親の助けを借りるなどしてしのいだ。

 子育ては、確実に碁を学ぶ時間を奪う。子供が幼いころは碁石が口に入っては危険だからと、部屋に碁盤も置けなかった。じっくり本を読む時間もなかった。1週間に数時間、勉強できればいいほうだった。ただ、辞めるという選択肢はなかった。「9歳から碁の修練を積んできました。勝負のためだけではなく、碁に学び、人間性を高めていくためにも碁打ちであることを辞められない」

 そんな中、会社員だった夫(44)が脱サラをして鍼灸(しんきゅう)院開業を決意、専門学校に入学した。自営業なら吉田さんを支えやすいという配慮もあってのことだったが、学生時代の夫の収入はゼロに。家計は吉田さんの肩にのしかかり、「この一局に生活がかかっているかと思うと負けてしまう」と苦しんだこともあった。

 昨年、夫が念願の鍼灸院を開業。子供も2人とも小学生になり、碁に向き合う時間も増えた。

 「子育てを通じて、体力的にも精神的にも強くなりました。今また自分を信じて碁に向き合いたい」

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 バイオリニストの林七奈さん(41)は、4歳の長男と1歳8カ月の長女を育てながら、大阪交響楽団(堺市)のコンサートミストレスという重責を担う。

 オーケストラは夜の公演や、長期の演奏旅行などを伴う。10年ほど前までは出産を機に退団する女性も多かったが、林さんは出産前から、夫でバイオリニストの豊嶋泰嗣さんから「必ず音楽を続けよう」と励まされた。

 出産後、夫の豊嶋さんは自分の本番前に幼稚園に子供を迎えに行くなど積極的に育児を引き受ける。林さんの母親やベビーシッターの力も借りている。練習できるのは子供が寝た後の午後8時以降だが、「子育てを経験してスイッチの切り替えがうまくなりました」。

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