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【関西の議論】「風水的によくない」広島都心の高速トンネル計画、「鬼門」理由に住民が反対!?

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「風水的によくない」広島都心の高速トンネル計画、「鬼門」理由に住民が反対!?

関西の議論更新

 「神々の怒りを招きかねない」「都市の繁栄を脅かす」-。広島市の中心部で予定されている高速道路のトンネル工事について、一部住民からこんな理由で反対の声があがっている。この場所が広島の「鬼門」に当たり、工事は「風水」的によくないというのだ。JR広島駅周辺の混雑緩和が期待される道路計画だが、地盤沈下を懸念する住民の反対運動が起きたことで工期は大きく遅れている。そんな中、持ち上がった風水による反対はどんな影響を及ぼすのか。(山本尚美)

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地盤沈下の懸念

 計画されているのは、広島高速5号線。山陽自動車道と広島市沿岸部を南北に結ぶ広島高速1、2号線の接合地点・温品(ぬくしな)ジャンクションから西に分岐し、JR広島駅北の尾長山と二葉山を通って南下し市街地に達するルートだ。距離にしてわずか約4キロだが、市中心部を通るため利便性は高い。事業主体の広島高速道路公社は、完成すれば車で45分かかる広島駅~広島空港(広島県三原市)間を5~7分短縮できるとする。

 工事では尾長山と二葉山に1・8キロのトンネルを通す計画だが、その上には牛田地区という閑静な住宅地があり、住民らは当初から騒音や振動、地盤沈下を懸念して反対運動を展開してきた。

 根強い反対の背景には、同公社が平成13年に着工した1号線の福木トンネル工事の記憶がある。この時は掘削開始直後から地下水が流出。15センチ以上の地盤沈下が起こり、住宅被害が続出した。5号線の工事についても、反対運動に参加する日本地質学会会員の越智秀二氏は「住宅のある牛田東1、3丁目は2つの山の間の窪地。地盤が周囲よりもろいから低くなっている。トンネルを作れば地下水の流れが変わり、水がなくなったところでは地盤沈下の恐れが十分にある」と話す。

公社は着工を決断

 こうした反対運動を受けトンネル着工はこれまで3回延期。5号線は当初の19年度の完成予定から大きく遅れている。

 そこで今回、公社はより止水性の高いシールド工法を採用。市と県もトンネル上の宅地が2・5センチ沈下した場合、県土地開発公社が買い取る措置を住民に提案するなど対策をとった。住民側にも「1号線まではひどくならないだろう」との見方が出てきたことから、公社は昨年から工事の発注作業を開始した。

「風水」では「鬼門」

 そんな中、全く違う観点から、トンネル工事に反対の声を上げる人が出始めた。主に「風水」を重視する人たちだ。彼らはトンネルが貫通する尾長山と二葉山が広島城(同市中区基町)北東の「鬼門」に当たり、「トンネル建設は広島市とそこに住む人たちから力を奪う」と主張している。

 広島城は1589年、毛利輝元によって築城された。その時の城下町が現在の広島都心の基礎となり、城の周辺には県庁や合同庁舎が建ち並ぶ。かつて広島東洋カープの本拠地だった旧市民球場もこのエリアにあった。基町からやや南東の八丁堀までの一帯が広島最大の都心部で、八丁堀には百貨店などがあり、その南は中四国最大の繁華街の流川だ。

 地元の風水愛好家らは、鬼門にある二葉山などに穴を開けるのは、広島の繁栄を妨げると声をあげている。一見突拍子もない意見だが、実際、二葉山の麓には鬼門を封じるかのように、10を超える寺社が建ち並ぶ。「神様のいる場所を掘ってよいのか」という意見もあり、この風水的見地からの反対は次第に広がりを見せている。

ほへと氏の驚くべき鑑定

 占いの類いとされ、科学的根拠はないと思われている風水だが、京都の街がそれを元に作られたことはよく知られる。8世紀末、桓武天皇は早良親王の祟りを恐れ、長岡京から平安京への遷都を決意。建都にあたり陰陽師を集め風水のあらゆる知識を総動員したとされる。

 そこで、独自の占術「ほへと数秘」が人気で、書籍「京都式風水であなたの家が生まれ変わる」の著書もある京都在住の占い師、ほへと氏に意見を求めたところ、「京都ではトンネルを作った人が事故で死んだから、広島も気をつけたほうがいいですよ」と、驚きの答えが返ってきた。

 ほへと氏が例にあげるのは、現在の京都銀行の母体となった亀岡銀行や京都株式取引所など数多くの事業を興し、貴族院議員でもあった田中源太郎(1853~1922年)のことだ。田中は「京都鉄道株式会社」を設立し、京都~舞鶴間の鉄道敷設に取り組んだ。実際に完成させたのは京都~園部区間のみだが、その区間には亀山トンネルがあった。

 私財も投じ鉄道建設に邁進した田中は、保津川橋梁の上で列車の脱線事故で命を落としたという。ほへと氏によると、この亀山トンネルが「風水を無視」しており、このようなケースでは事業主などに厄災をもたらすことがあるのだという。何とも恐ろしい話である。

「気」の流れも変化?

 5号線の建設が広島市に与える影響について、ほへと氏は「完成すれば広島城と八丁堀への気の流れが減少し、一部は広島駅方面に流れ、現在の中心部の活性化が停滞する」と鑑定した。

 では、広島駅周辺が活性化するのか? 「広島駅に流れた気は、鉄道という通り道を伝って広島から出て行ってしまいやすい」と、ほへと氏。その理屈は「列車などが人だけでなく気も運ぶ」からだといい、「あれだけの偉人を輩出した山口県が、関門トンネルの完成頃から、ぱっとしなくなった」とも指摘した。

 「気」「風水」とは、何なのか。ほへと氏によると、気とは人の気分をも含むエネルギーのこと。風水は、さまざまな流派があっても、その要は「陰陽のバランス」だという。

 「人間は静かな場所があるからこそ、賑やかなところがほしくなり、騒々しいところにいれば静けさを求める」。つまり北東に「陰」を作ると必然的に南西が「陽」となって商業などが栄え、発展を支えるということらしい。

 風水の街、京都では御所の北東に比叡山延暦寺があり、御所の南は四条河原町などがある。大阪でも大阪城の北東に神社などが置かれ、南に難波や心斎橋などの賑やかな街ができている。

 それらを踏まえ、ほへと氏は5号線のトンネル計画について「事業的にもさほど効果はないと思うが、風水的にも良くない」と結論づけた。

崩れる?「陰と陽のバランス」

 風水的に「陰」でなくてはならない二葉山に5号線が完成すれば、より多くの車が行き交い、「陰と陽のバランス」が崩れる。

 トンネル建設について、神仏を祀る麓の寺社はどう考えているのか。取材に幾つかの寺社は「お答えすることはございません」。デリケートな問題であることを伺わせた。

 その中で明確に反対意見を述べたのは、尾長天満宮の渡邊清臣宮司(61)だ。「二葉山地区は広島城の鬼門。鎮守の森を傷め、神様のいる地面を掘るようなことは、できるなら避けたいのが当然でしょう」

 また、鶴羽根神社の石井計次宮司(60)は、「鶴羽根」の名称が背後の山の形が羽根を広げた鶴の姿に似ているところからきたとして、「御由緒に傷がつくのは大変残念」と話した。

 トンネル建設で「陰と陽のバランス」や「気」の変化が起き、広島に何かをもたらすのか。確かなことは分からないが、反対の声が残る中で工事の手続きは進んでいる。